送別会のシーズンにお世話になった方に一味違うメッセージを。

生活

3月に入ると送別会のシーズンになります。この時一番困るのがメッセージを書く時です、月並みに「頑張って」とか「お世話になりました」では芸がないですよね。
また、もう少し親しい方に、贈り物を送る際にも。何の挨拶もなく品物をだけというのも、奥ゆかしさが足りないような気がします。
そんなときのために、古来から、漢詩を送る習慣があります。とても難しいと考える方もありますが、その簡単な手ほどきをお伝えしたいと思います。

 

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漢詩についての短い解説

今では漢詩と書かないと理解されないようですが、戦争前は詩と言えば漢詩しかありませんでした。

明治時代、大正時代のかなりの文化人が漢詩を作って教養としていましたが、戦後の急速な漢字文化の衰えでこの頃は顧みる人も少なくなりました。
精々、学校で習った孟浩然の「春暁」、「春眠暁を覚えず・・・」ぐらいしか知られていないでしょう。
でも、昨年のコロナ騒ぎのときに日本から中国にマスクを送付したときに、箱に書き付けてあった漢詩が話題になることもありました。
詩の形態にはいろいろありますが、その説明はまたの機会として、とりあえず今回は送別会に絞って例題から説明することとします。

 

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送別会シーズンにふさわしい漢詩はこれ

私がおススメする漢詩はこれになります。王維という8世紀前半に唐の玄宗に仕えた詩人の傑作です。
送元二使安西 王維
渭城朝雨潤輕塵 ●〇〇●●○真
客舎青青柳色新 ●●○○●●真
勧君更盡一杯酒 ●○●●●○●
西出陽關無故人 ○●○○○●真

 

この中の○は平字、●は仄字、真と書いてあるのは「真」という分類の韻を踏んでいるというしるしです。

 

読み方は次の通りです。
元二の安西に使するを送る 王維(おうい)
渭城の朝雨 軽塵を潤し
客舎青青柳色新たなり
君に勧む更に盡くせ一杯の酒
西のかた陽關を出ずれば故人無からん

 

意味は次の通りです。
元二(元一族で2番目の年の人)が安西(今話題の新彊ウイグル地区のもっと西です)に使者として出かけるのを送る。ここまでが題です。その後に名前を書きます。
長安の隣の渭城では朝の雨が軽い砂埃を潤しています。
旅館の前では青々とした柳の葉が雨に洗われて新しく見える。
君にすすめる。昨日のことは忘れて、もう一杯飲もうじゃないか。
西域地方との境である陽関を出れば、故人は亡くなった人ではなく友人ですので、友人に会うこともないのだから。

 

これをサラッと漢字を書いてしまえばよいのです。親切にというなら、読み方をその横に書いてあげればよいのです。すなわち、上のマーカーのところを書けばよいのです。

できれば縦書きで書いてあげてください。原文だけで35字、読みを入れても100字弱ですからそれほど手間もかからないでしょう。

旧字体が難しいというなら軽塵は軽塵、盡は尽、陽關は陽関を使えばよいでしょう。

 

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送別会にふさわしい漢詩を使ってオリジナリティを出そう

 

このまま使っても良いと言いましたが、時間があるなら、もう少しオリジナリティを出そうと考えます。

 

題を取り換える

まず題ですが。相手の名前がわかっているなら、送○○先生という手があります。これは単純に○○先生を送る。になります。
また、行き先がわかっているなら、「送○○先生向○○」です。これは「○○先生の○○に向かうを送る。」と読みます。

 

地名を取り換える

 

次に地名を中国から日本に取り換えたほうが親切ですよね。
東京であれば江戸城の由来から江城、大阪なら錦城又は金城、名古屋なら金城、柳城、名城を使います。中国では都市自体が城なのでこれで通用するのです。
この詩の中ではこれらはどれを使っても漢詩のルールの平仄には引っ掛かりませんので大丈夫です。
それ以外のところもお城があるところであれば、お城の略称がありますのでそれを使いましょう。
地名は平仄の問題が生じてしまいます。難しいことを言うとこの詩の中では、地名の下の字が平字であればよいのです。
漢和辞典があれば下の字の平仄を調べればわかるのですが、慣れない方には難しいかもしれません。そんな時は近所のお城にしてしまいましょう。

 

出発の方角を取り換える

 

この詩の中では、東西南北どの方向も使うことができます。平仄のルールにも引っ掛かりません。

行き先の手前にある分岐点を取り換える
この詩の中の西の方陽関を出でてというところです。
分岐点の地名を使う手もありますが、前の地名と同じように平仄を気にすれば使えるものが限られます。
そこで考えたのが旧国名を示す〇州を使うことです。この詩ではこれを使えば平仄的にも問題がないので、このほうが簡単かもしれません。
例えば東京から北へ行くなら上州。西に行くなら駿河、遠州。大阪から西へ行くなら播州が使えます。

 

以上を総合して例えば安藤さんが東京から仙台に行ったとすれば次のようになります。

送安藤先生向仙台 ここに作者の名前が入ります。

江城朝雨潤輕塵 
客舎青青柳色新 
勧君更盡一杯酒 
北出上州無故人 

ここから先、更に直そうと思えばいろいろ手を加えられますが、最初ではハードルが高すぎますのでここらで満足しておきましょう。

 

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送別会のシーズンにお世話になった方に一味違うメッセージをのまとめ

 

いかがでしたでしょうか。意外と簡単にできるでしょう。

「何だ盗作じゃないか。」と言われるかもしれませんが、今のように著作権がうるさくない時代には、この程度のことはざらにあったのです。

しかも盗作というよりは、その方の作品に敬意を払ってという考え方ですから、やましいことはないのです。
もちろんこの作品を堂々とどこかの応募作品に使うのであれば問題が生じるでしょうが、高々私的な贈り物です。気にする必要はありません。

どうしても許さないのであれば、「王維の送元二使安西に依る。」としておけば良いでしょう。
漢詩も一つの高雅な遊びです、これを機会に楽しんでいただくことをお願いいたします。

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