数学オリンピックの高校生向け問題は、JMO予選の短答からIMOの完全証明へ、発想と論証の深さが段階的に増していきます。
ただし、難しさの中心は大学数学の先取りではありません。平方完成、平方数、最大値、不等式といった高校生にも見覚えのある材料を、問題に応じてどう組み合わせるかが問われます。
この記事では、JMO・APMO・IMOの公式資料と過去問を確認し、代表的な5問について「問い」「結論・答え」「核心となる発想」まで揃えて紹介します。
数学オリンピックの高校生向け問題はどのくらい難しい?
JMO予選では短時間で突破口を見つける力、JMO本選以降では、その発想を他人が読んでも納得できる証明に仕上げる力が強く求められます。
現在のJMO予選は3時間で12問を解き、答えのみを記す形式です。第37回JMO予選は2026年11月15日、本選は2027年2月11日に予定され、本選は4時間で5問の記述式となっています。数学オリンピック財団+1
APMOは4時間で5問、各問の最高点は7点です。IMOでは1日3問を4時間30分で解く日程を2日間行い、計6問、各問7点という構成になっています。APMO Official Website+1
学習上の違いを整理すると、次のようになります。
大会 問題形式 難しさの中心 高校生の学び方
JMO予選 3時間・12問・答のみ 短時間で構造を見抜く 発想の入口を増やす
JMO本選 4時間・5問・記述式 発想を完全な証明にする 論理を省略せず書く
APMO 4時間・5問・各7点 国際大会型の証明 一問を深く考える
IMO 2日間・計6問・各7点 高度な発想と厳密な論証 構成と不可能性の両方を見る
ここで一つ注意したいことがあります。
第37回JMO募集要項では、前提知識を世界各国の高校程度とし、整数、幾何、組合せ、式変形などを題材とする一方、「微積分、確率統計、行列は範囲外」と明記されています。数学オリンピック財団
ところが、数学オリンピック財団のJMO概要ページでは、主たる出題分野の「組合せ論」の例として「確率」という語も掲げられています。数学オリンピック財団
表記に少し違いがありますから、受験準備ではその年度の募集要項を基準に確認するのが安全です。
いずれにしても、「大学数学をどこまで先取りしたか」を競う大会ではありません。
むしろ、知っている高校数学を、初めて見る条件の中で使えるかという点に数学オリンピックらしい難しさがあります。
数学オリンピックではどんな問題が出る?高校生向け過去問5選
ここからは、性格の異なる5問を見ていきます。
選んだ基準は、難しい問題をただ並べることではありません。
JMO予選の「見方を変える一手」から始まり、整数の完全証明、APMOの極値的な見方、JMO本選の最良定数、IMOの最小化へと、発想に求められる仕事がどのように増えていくかが分かる5問を選びました。
問題文は長く転載せず、公式問題の条件を損なわない範囲で要点を整理しています。
1.2006年JMO予選第5問|連立方程式を全部足す
出典・問い: 2006年JMO予選第5問。実数x、y、zが次の三式を同時に満たすとき、その組を求める問題です。数学オリンピック財団
x²−3y−z=−8
y²−5z−x=−12
z²−x−y=6
結論: x=1、y=2、z=3です。
発想: 三つの式を一つずつ解こうとせず、すべて足して平方完成します。
三式を加えると、
x²+y²+z²−2x−4y−6z=−14
となります。
平方完成すると、
(x−1)²+(y−2)²+(z−3)²=0
です。
実数の平方は0以上ですから、三つの平方の和が0になるためには、
x−1=0
y−2=0
z−3=0
が同時に必要です。
したがって、
(x,y,z)=(1,2,3)
と一意に決まります。
この問題は、数学オリンピックの入口として非常に分かりやすい例だと私は感じます。
平方完成そのものは高校数学でおなじみです。しかし問題文には「平方完成を使いなさい」とは書かれていません。
三本の道を別々に進んでいたところを、「いったん全部まとめて眺めてみよう」と考えた瞬間に、一本の短い道へ変わります。
数学オリンピックでいう発想力とは、このような技法を知っていることと、使う場面を自分で発見することの差に現れます。
2.2004年JMO本選第1問|平方数が3つ同時には成立しないことを証明
出典・問い: 2004年JMO本選第1問では、正整数nについて、
2n²+1
3n²+1
6n²+1
の三つがすべて平方数になることはない、と証明するよう求められました。数学オリンピック財団
結論: 条件を満たす正整数nは存在しません。
発想: 「平方数を8で割った余りを見る」ことも入口になりますが、それだけでは証明は完結しません。最後まで通すには、三つの平方数を互いに結びつけると鮮やかです。
三つが平方数だと仮定して、正整数p、q、rを使い、
p²=2n²+1
q²=3n²+1
r²=6n²+1
と置きます。
最初の二式を掛け、三式目を利用すると、
p²q²−n²r²
=(2n²+1)(3n²+1)−n²(6n²+1)
=4n²+1
となります。
左辺は平方の差ですから、
(pq−nr)(pq+nr)=4n²+1
です。
右辺は正なのでpq>nr、したがってpq−nrは1以上の正整数です。
一方、
q²=3n²+1>2n²+1=p²
ですからq>pとなり、
pq>p²=2n²+1
です。
また、
r²=6n²+1>4n²
なのでr>2n、したがって、
nr>2n²
となります。
よって、
pq+nr>4n²+1
です。
ところが、
(pq−nr)(pq+nr)=4n²+1
であり、最初の因子pq−nrは1以上です。
そうであれば二番目の因子pq+nrが4n²+1より大きくなることはできません。
これは矛盾です。
したがって、三つが同時に平方数となる正整数nは存在しません。
ここがJMO予選との大きな違いです。
予選なら「mod 8を見る」という有力な観察をしただけでも、答えへ近づける問題があります。しかし本選では、その観察を最後の結論まで論理でつなぐ必要があります。
「よさそうなことに気づいた」と「証明が完成した」の間には、思った以上に距離があります。
この距離を埋める練習こそ、本選過去問に取り組む大きな意味でしょう。
3.2011年APMO第1問|最大の数を一つ選ぶだけで矛盾する
出典・問い: 2011年APMO第1問では、正整数a、b、cに対して、
a²+b+c
b²+c+a
c²+a+b
の三つがすべて平方数になることはない、と証明します。公式解答にも複数の解法が掲載されています。APMO Official Website+1
結論: そのような正整数a、b、cは存在しません。
発想: a、b、cのうち最大のものを一つ選びます。
条件はa、b、cについて対称なので、aを最大としてよく、
a≥b、a≥c
とします。
すると、
b+c≤2a
です。
ところが、a²+b+cが平方数だと仮定すると、b+cは正なので、
a²+b+c>a²
です。
a²より大きい次の平方数は(a+1)²です。
したがって、
a²+b+c≥(a+1)²
でなければなりません。
両辺からa²を引けば、
b+c≥2a+1
となります。
しかし先ほど、
b+c≤2a
でした。
同じb+cについて、
b+c≤2a
かつ
b+c≥2a+1
となるのは不可能です。
これだけで矛盾が生じます。
私は、この問題には「発想力」という言葉を必要以上に神秘化しないための大切なヒントがあると思います。
使ったのは、
「最大のものを一つ選ぶ」
「平方数と次の平方数の間を見る」
という二つの素朴な見方です。
難問の発想は、天から突然降ってくる奇抜な魔法とは限りません。
小さな定石をいくつ持ち、問題のどこへ当てるか。その積み重ねが、結果として美しい解答になります。
2004年JMO本選第1問と並べると、さらに面白くなります。
どちらも「平方数」が主役ですが、2004年JMOでは三つの式を代数的に結びつけ、2011年APMOでは連続する平方数の間隔を使います。
同じ数学的対象でも、見る方向が変わればまったく別の解法が生まれる。
ここに、過去問を年度順だけでなく「発想別」に読む価値があります。
4.2006年JMO本選第5問|Aの最大値と等号成立条件まで求める
出典・問い: 2006年JMO本選第5問では、9個の正の実数x₁、x₂、x₃、y₁、y₂、y₃、z₁、z₂、z₃に対して、次の不等式が常に成立する実数Aの最大値と、等号成立条件を求めます。数学オリンピック財団
(x₁³+x₂³+x₃³+1)
×(y₁³+y₂³+y₃³+1)
×(z₁³+z₂³+z₃³+1)
≥A(x₁+y₁+z₁)(x₂+y₂+z₂)(x₃+y₃+z₃)
結論:
Aの最大値は、
A=3/4
です。
等号は、
x₁=x₂=x₃=y₁=y₂=y₃=z₁=z₂=z₃=1/∛6
のときに成立します。
この問題では、ただ「ある不等式が正しい」と証明するだけでは足りません。
Aをどこまで大きくできるのかという最良定数まで決める必要があります。
核心には、3乗に対するヘルダーの不等式と相加相乗平均があります。
各括弧にある「+1」を、
1=1/6+1/6+1/6+1/6+1/6+1/6
と六つに分けて考えます。
三つの括弧の項を適切に対応させてヘルダーの不等式を使うと、9個の変数の総和をTとして、
左辺≥T³/36
という形まで下から押さえられます。
一方、
u=x₁+y₁+z₁
v=x₂+y₂+z₂
w=x₃+y₃+z₃
と置けばT=u+v+wです。
相加相乗平均より、
(T/3)³≥uvw
ですから、
T³/36
=(3/4)(T/3)³
≥(3/4)uvw
となります。
したがって、
左辺≥(3/4)(x₁+y₁+z₁)(x₂+y₂+z₂)(x₃+y₃+z₃)
が常に成立します。
つまりA=3/4までは確実に取れます。
さらに9個の変数をすべて1/∛6にすると等号になりますから、Aを3/4より大きくすることはできません。
よって最大値は3/4です。
ここで学びたいのは、ヘルダーの不等式という名称だけではありません。
問題文には、Aの候補が書かれていません。
まず「どの値ならぎりぎり成立しそうか」を探し、次に「その値ならどんな正の実数でも成立する」と証明し、最後に等号条件を確認します。
つまり仕事は、
候補を推測する→成立を証明する→それ以上は不可能と示す
という三段階になります。
これはJMO予選の「答えを見つける」とは、かなり異なる思考です。
5.2025年IMO第6問|2025×2025格子の最小タイル数は2112枚
出典・問い: 2025年IMO第6問はシンガポール提案の組合せ問題で、2025×2025の単位正方形からなる格子を扱います。IMO公式サイト+1
格子線に沿った長方形のタイルを、重ならないように配置します。
条件は、2025本あるすべての行と2025本あるすべての列に、タイルで覆われていない単位正方形がちょうど一つずつ残ることです。
その条件を満たすために必要なタイル枚数の最小値を求めます。
結論:最小値は2112枚です。 2025=45²であることを利用すると、最適値は2025+2×45−3=2112となります。arXiv
この問題の重要な点は、2112枚で実際に配置する方法を示すだけでは答えにならないことです。
仮に2112枚で条件を満たす配置を作れれば、
「2112枚あればできる」
とは言えます。
しかし、それだけでは2111枚でできないとは分かりません。
最小値と断定するには、
2112枚で実現できるという上側からの証明
と、
2111枚以下では不可能だという下側からの証明
の両方が必要です。
未被覆のマスは各行に一つ、各列にも一つです。
したがって2025個の未被覆マスは、各行・各列に重複しない形で並び、数学的には一種の「順列」として捉えられます。
そこから未被覆マスの上下左右の関係を整理し、増加する並び方と減少する並び方を調べることで、どうしても必要になるタイル境界の数を数えていきます。
2025が45²であることが、この下限評価に美しく効いてきます。
詳細な完全証明は、先ほどのJMO予選問題とは比べものにならないほど長くなります。
しかし、高校生が最初にこの問題から学ぶべき点は明快です。
最小値問題では「作れた」だけで終わらず、「これより少なくできない」を別方向から証明する。
この考え方はIMOだけの特殊技法ではありません。
JMOでも、最大値・最小値・最良定数を扱う問題では繰り返し現れます。
2006年JMO本選第5問のA=3/4と、2025年IMO第6問の2112枚は、一見するとまったく違う問題です。
しかし根底には共通して、
「この値まで可能」
「これ以上、あるいはこれ以下は不可能」
という二方向から挟む考え方があります。
難しい大会ほど、一つの発想を思いつくだけでなく、限界そのものを証明する力が求められるのです。
5問を比べると数学オリンピックの「発想力」はどう変わる?
この5問を選んだ理由は、難易度の数字だけでは見えない「思考の階段」が分かるからです。
2006年JMO予選第5問では、三つの式を全部足すという一手がほぼ勝負を決めました。
2004年JMO本選第1問では、良い着眼だけでは足りず、仮定から矛盾まで証明を閉じる必要がありました。
2011年APMO第1問では、最大のものを選ぶことで、複数の条件を一気に処理しました。
2006年JMO本選第5問では、不等式を成立させるだけでなく、最良の定数と等号成立条件まで追いました。
そして2025年IMO第6問では、構成による上限と不可能性による下限を一致させて初めて答えになります。
ここから分かるのは、数学オリンピックでいう発想力が単一の能力ではないことです。
発想にはいくつかの段階があります。
- 条件を別の形へ書き換える
- 最大・最小のものを選ぶ
- 小さな場合や等号の場合から候補を探す
- 「できる」と「これ以上は無理」を両方示す
- 思いついたアイデアを穴のない証明へ仕上げる
特に私が大切だと考えているのは、問題名ではなく「最初の一手」で過去問を分類することです。
たとえば「平方数」という分類だけではまだ広すぎます。
2004年JMO本選第1問なら「平方数を他の式と結び、平方の差を作る」。
2011年APMO第1問なら「連続する平方数の間隔を利用する」。
同じ平方数でも、発想の入口は異なります。
この違いをノートへ残しておくと、新しい問題に出会ったとき、
「平方数だから公式は何だっただろう」
ではなく、
「余りを見るか」
「隣の平方数と比べるか」
「平方の差を作れないか」
と複数の方向へ考えられるようになります。
これが、発想の引き出しが増えるということではないでしょうか。
高校生は数学オリンピックの過去問をどう練習すればよい?
初めてならJMO予選で「最初の一手」を探し、その後JMO本選で証明を書く練習へ進む方法が取り組みやすいでしょう。
現在の公式アーカイブでは、JMOの予選・本選について過去の多数の年度を確認できます。数学オリンピック財団も、公式サイトで過去問を学習に利用できるよう掲載しています。数学オリンピック財団
ただし、過去問を解いた数だけを増やせばよいとは私は考えていません。
一問ごとに、次のような順序で振り返るほうが効果的です。
まず、何も見ずに考えます。
10分ほど考えて何も書けない場合は、「自分には才能がない」と結論するのではなく、条件を別の形に書き換えます。
整数なら偶奇や小さな数で割った余りを見ます。
方程式なら式同士を足したり引いたりします。
最大値・最小値があるなら、一番大きいもの、一番小さいものを一つ選びます。
図形なら図を描き直します。
それでも進めなければ解説を確認します。
大切なのは、そのあとです。
解説を読んで「なるほど」で終えず、いったん閉じます。
そして白紙から、最初の一手を自分で再現します。
2006年JMO予選第5問なら、
「三つの式を足す」
と再び自分で判断できるかを確かめます。
さらに一歩進めて、
「なぜ足すのか」
まで言葉にします。
三式を足せば一次の項が−2x、−4y、−6zとなり、それぞれ平方完成の形に近づくからです。
この理由まで説明できれば、解答を暗記しているだけの状態から抜け出しています。
また、本選やAPMO、IMO型の問題では、途中まで進んだ内容も残しておくとよいでしょう。
「最大のものを選ぶところまでは気づいた」
「平方の差を作るところまでは進めた」
「等号成立条件を調べる必要には気づいた」
という記録です。
完全解答だけを成功と考えると、難問の学習はどうしても苦しくなります。
一問の中で、どの発想までは自力で到達できたのか。
そこを細かく見るほうが、次の問題への橋になります。
数学オリンピックは先取り学習より「発想の系譜」を追うと面白い
ここからは、公式過去問を比較してきたうえでの私見です。
数学オリンピックと聞くと、「高校数学を早く終えて、大学数学を先取りした生徒でなければ太刀打ちできないのでは」と思われる方もいらっしゃるでしょう。
しかし、第37回JMO募集要項では、前提知識を世界各国の高校程度としています。少なくとも募集要項上、微積分、確率統計、行列は範囲外と明記されています。数学オリンピック財団
実際、今回見た2006年JMO予選第5問で中心となったのは平方完成でした。
2011年APMO第1問では、最大の数を一つ選び、次の平方数と比べただけです。
使っている部品だけを見れば、決して遠い世界の数学ではありません。
それでも難しい。
私は、この点こそ数学オリンピックのおもしろさだと思っています。
「知っている」と「使える」の間には、かなり広い川があります。
公式を覚えれば、その川を渡れるわけではありません。
どこで平方完成をするのか。
どこで最大のものを選ぶのか。
どこで背理法へ切り替えるのか。
どこで構成例だけでは不足だと気づくのか。
一つ一つの判断を経験して、ようやく橋が架かっていきます。
長く学びを続けてきた者として感じるのは、基礎とは「一度習ったら卒業する場所」ではないということです。
難しい問題に向かうほど、
平方数とは何か。
二つの平方数の間には何があるか。
等号が成立するとはどういうことか。
最小値を決めるには何を証明すればよいか。
という基本へ戻ります。
弓道でも、調子が崩れたとき、目新しい技を増やすより足踏みや胴造りといった基本へ戻ることがあります。
数学でも似たところがあり、難問ほど基礎の意味が深くなります。
ただ、問題数を増やすことそのものが悪いわけではありません。
大切なのは、一問を解いたら、その問題を孤立させないことです。
2004年JMO本選の平方数問題を解いたら、2011年APMOの平方数問題へつなげる。
2006年JMO本選の最良定数問題を解いたら、最大値・最小値や等号条件を求める別問題へつなげる。
IMO第6問のような最小化問題を読んだら、「構成による上限」と「不可能性による下限」を使う問題を集める。
私はこれを、発想の系譜を追う学習と考えています。
年代順に10年分を消化する方法とは少し違います。
同じ発想が別の姿になって再登場することを見つけるのです。
すると過去問は「2004年の古い問題」「2011年の古い問題」ではなくなります。
今の一問にもつながる、生きた教材になります。
数学オリンピック財団の現在のJMOページには、2000年代から2020年代の予選・本選問題がまとめて掲載されています。古いまとめ資料だけを見て「ここまでしか過去問がない」と判断せず、現在の公式アーカイブも確認するとよいでしょう。数学オリンピック財団
数学オリンピックに挑戦する高校生が、最初からIMO第6問を解き切る必要はありません。
2006年JMO予選第5問を見て、
「全部足すのか」
と気づくだけでも一つの収穫です。
2004年JMO本選第1問を通して、
「途中の観察だけでは証明は終わらない」
と知ることにも意味があります。
2011年APMO第1問から、
「最大のものを選ぶ」
という引き出しを一つ増やすだけでもよいのです。
JMO予選で入口を探し、本選で証明へ仕上げ、さらにAPMOやIMOの問題へ視野を広げる。
その途中で、問題を年度ではなく、平方数、最大値、等号、背理法、構成、上限・下限といった発想で結び直していく。
私は、その積み重ねが数学オリンピックを長く、豊かに学ぶ方法だと考えています。
数学オリンピックの高校生向け問題は、難問をすらすら解ける一部の人だけの教材ではありません。
一問の答えを得ることより、「なぜこの一手だったのか」を持ち帰ること。
その視点で過去問を見ると、解けなかった問題にも確かな学びが残ります。
よくある質問
数学オリンピックの問題は普通の高校数学より難しいですか?
はい。知識範囲だけでなく、使うべき知識を自分で選ぶ必要があるため、学校の典型問題より難しく感じることが多いでしょう。
第37回JMO募集要項では、前提知識は世界各国の高校程度とされています。難しさは、知らない公式の多さというより、基本事項を初見の条件で組み合わせるところにあります。数学オリンピック財団
高校生はJMO予選と本選のどちらから始めるべきですか?
初めて数学オリンピック型の問題へ取り組むなら、JMO予選から始める方法が分かりやすいでしょう。
予選は3時間12問の答のみを記す形式、本選は4時間5問の記述式です。まず予選で突破口を探す経験を増やし、その後、本選で証明を完成させる練習へ進むと段階を踏みやすくなります。数学オリンピック財団
数学オリンピック対策では難しい公式をたくさん覚えるべきですか?
公式を増やすことだけを目標にする必要はありません。
今回見た問題でも、平方完成、平方数、最大値、相加相乗平均など、基本的な数学が重要な役割を果たしています。
「何を知っているか」に加えて、「この条件を見たら何を試すか」を増やしていくことが大切です。
数学オリンピックの過去問は、答えを急いで集める教材というより、一つの条件を何方向から眺められるかを鍛える教材です。解けなかった一問からでも、次の問題で使える一手を持ち帰ることができます。
天水健太郎(あまみずけんたろう)
元行政職員・生涯学習コラムニスト


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