第36回JMO予選の前半6問は、大小評価・平方数・面積比・最大値・合同式・補助点という6種類の発想を使い分けることが攻略の鍵です。
第36回日本数学オリンピック(JMO)予選は2025年11月16日に実施されました。この記事では第1問から第6問までについて、正答だけでなく、「なぜ最初にそこを見るのか」「どこで発想を切り替えるのか」を初心者にも追いやすい順序で解説します。
第36回JMO予選とは?前半6問の答えを先に確認
第36回日本数学オリンピック予選は、2025年11月16日(日)に実施されました。
予選は全12問・3時間で、第1問から第6問は整数、平方根、円、組合せ、合同式、平面図形と、かなり異なる分野から出題されています。
この記事で扱う前半6問の答えと、最初に気づきたい発想をまとめると次の通りです。
問題 主な分野 正答 最初に気づきたい一手
第1問 整数・べき乗 $(1,36,3)$ $2^{20}>2026$ で候補を絞る
第2問 平方根・整数部分 $91$ $\sqrt{2026}-45$ の範囲を評価する
第3問 円・面積比 $\dfrac{AC}{AD}=\dfrac{11\sqrt6}{24}$ 面積比を線分比へ変える
第4問 組合せ・最大値 $729$ 「合同でない」を辺の重複条件へ翻訳する
第5問 整数・合同式 $(4,12,5),(17,12,5)$ 共通素因数 $p$ を置いて未知数を消す
第6問 平面図形 $\sqrt{41}-3$ 補助点 $G$ を加えて合同・相似を作る
特に第3問では、求める比の向きに注意が必要です。
求められているのは、
$AC/AD$
であり、
$\dfrac{AC}{AD}=\dfrac{11\sqrt6}{24}$
が答えです。
数学では途中の計算が合っていても、最後に逆数を書けば別の答えになります。問題を解き終えたときには、「自分が出した量は、問題で求められた量そのものか」を確認する習慣が大切です。
前半6問に共通しているのは、最初から複雑な計算へ進まないことです。
問題文に含まれる強い条件を見つけ、それを扱いやすい形へ言い換える。
これが、6問を貫く重要な考え方です。
第1問・第2問はどう解く?2026という数の近くを見る
第1問と第2問には、どちらにも「2026」が現れます。
しかし2026そのものについて特別な知識が必要なのではありません。
第1問では大きな指数、第2問では2025が $45^2$ であることに注目すると、候補が一気に整理できます。
第1問の答えは $(1,36,3)$|大きな指数から候補を消す
第1問は、正の整数 $a,b,c$ が
$a^{20}+b^2+c^6=2026$
を満たすとき、すべての組を求める問題です。
答えは、
$(a,b,c)=(1,36,3)$
です。
未知数が三つあるので、最初は総当たりを考えたくなるかもしれません。
しかし、最も強い制約を持っているのは $a^{20}$ です。
$a$ が2以上なら、
$2^{20}=1,048,576$
です。
これは2026を大きく上回ります。
したがって、
$a=1$
以外に可能性はありません。
すると式は、
$b^2+c^6=2025$
となります。
次は $c^6$ を見ます。
$c\geq4$ なら、
$4^6=4096>2025$
なので、
$c=1,2,3$
だけを調べれば十分です。
$c=1$ のとき、
$b^2=2024$
です。
しかし、
$44^2=1936<2024<2025=45^2$
なので、2024は平方数ではありません。
$c=2$ のときは、
$b^2=2025-64=1961$
となります。
これも、
$44^2=1936<1961<2025=45^2$
ですから平方数ではありません。
$c=3$ なら、
$c^6=729$
なので、
$b^2=2025-729=1296=36^2$
です。
したがって、
$(a,b,c)=(1,36,3)$
と決まります。
この問題の大切なところは、最初から三つの変数を同時に扱わなかったことです。
指数が大きい項は値の増え方が速いため、最小の候補を入れるだけで変数が固定できることがあります。
これは整数問題で繰り返し使える見方です。
私自身、難しい式を見ると、つい「どの公式を使うか」を探したくなります。しかし初めに「この中で最も自由が利かない項はどれか」と考える方が、かえって道筋が早く見えることがあります。
第2問の答えは91|90までは同じ整数部分になる
第2問では、$\lfloor n\sqrt{2026}\rfloor$ が $n$ で割り切れないような最小の正整数 $n$ を求めます。
答えは、
$91$
です。
まず、
$45^2=2025$
ですから、
$45<\sqrt{2026}<46$
となります。
そこで、
$\sqrt{2026}=45+\varepsilon$
と置きます。
$\varepsilon$ は、
$\varepsilon=\sqrt{2026}-45$
です。
有理化すると、
$\varepsilon=\dfrac{1}{\sqrt{2026}+45}$
となります。
先ほど、
$45<\sqrt{2026}<46$
でしたから、
$90<\sqrt{2026}+45<91$
です。
逆数を取ると、
$\dfrac1{91}<\varepsilon<\dfrac1{90}$
となります。
ここが核心です。
$n\leq90$ なら、
$n\varepsilon<1$
です。
したがって、
$n\sqrt{2026}=45n+n\varepsilon$
の整数部分は、
$\lfloor n\sqrt{2026}\rfloor=45n$
となります。
これは必ず $n$ の倍数です。
一方、$n=91$ では、
$91\varepsilon>1$
です。
さらに、
$\varepsilon<\dfrac1{90}$
なので、
$91\varepsilon<\dfrac{91}{90}<2$
です。
したがって、
$1<91\varepsilon<2$
となり、
$\lfloor91\sqrt{2026}\rfloor=45\cdot91+1$
です。
これは91で割り切れません。
よって最小値は、
$91$
です。
ここでは $\sqrt{2026}$ を小数で近似する必要はありません。
むしろ、
「45からどれだけ大きいか」
だけを厳密に評価することが重要です。
近くに完全平方数がある平方根では、その平方数との差を取り、有理化して評価する方法を覚えておくと役立ちます。
第3問・第4問はどう解く?条件を別の数学へ翻訳する
第3問は円の問題、第4問は長方形の分割問題です。
外見はかなり違いますが、両方とも「問題文の条件を、そのままの姿で扱わない」ことが突破口になります。
第3問の答えは $\dfrac{11\sqrt6}{24}$|面積から線分比を取り出す
円周上に $A,B,C,D,E$ がこの順にあり、直線 $BE$ と $AC$ の交点を $P$、直線 $BE$ と $AD$ の交点を $Q$ とします。
さらに、
$BP=PQ=QE$
で、三角形 $BCP$、$APQ$、$DEQ$ の面積がそれぞれ、
$2,\ 9,\ 3$
と与えられています。
求めるのは、
$\dfrac{AC}{AD}$
です。
答えは、
$\dfrac{AC}{AD}=\dfrac{11\sqrt6}{24}$
となります。
まず、
$BP=PQ=QE=s$
と置きます。
三角形 $APQ$ と $BCP$ を比べます。
$A,P,C$ は一直線上にあり、$B,P,Q$ も一直線上です。
したがって、面積公式に現れる角の正弦は共通です。
よって、
$\dfrac{[APQ]}{[BCP]}
=\dfrac{AP\cdot PQ}{PC\cdot PB}$
です。
$PQ=PB$ なので、
$\dfrac{AP}{PC}=\dfrac92$
となります。
したがって、
$AP:PC=9:2$
です。
同様に、三角形 $APQ$ と $DEQ$ を比べます。
$PQ=QE$ ですから、
$\dfrac{AQ}{QD}
=\dfrac{[APQ]}{[DEQ]}
=\dfrac93
=3$
です。
したがって、
$AQ:QD=3:1$
となります。
ここで円の条件を使います。
点 $P$ について交わる弦の定理より、
$PA\cdot PC=PB\cdot PE$
です。
$PB=s$、
$PE=PQ+QE=2s$
ですから、
$PA\cdot PC=2s^2$
となります。
$AP:PC=9:2$ なので、
$AP=9t,\quad PC=2t$
と置くと、
$18t^2=2s^2$
です。
したがって、
$t=\dfrac{s}{3}$
となります。
よって、
$AC=AP+PC=11t=\dfrac{11s}{3}$
です。
次に点 $Q$ でも交わる弦の定理を使います。
$QA\cdot QD=QB\cdot QE$
です。
$QB=BP+PQ=2s$、
$QE=s$
ですから、
$QA\cdot QD=2s^2$
です。
$AQ:QD=3:1$ なので、
$AQ=3u,\quad QD=u$
と置きます。
すると、
$3u^2=2s^2$
ですから、
$u=s\sqrt{\dfrac23}
=\dfrac{s\sqrt6}{3}$
となります。
したがって、
$AD=AQ+QD=4u=\dfrac{4s\sqrt6}{3}$
です。
最後に、
$\dfrac{AC}{AD}
=\dfrac{11s/3}{4s\sqrt6/3}
=\dfrac{11}{4\sqrt6}
=\dfrac{11\sqrt6}{24}$
となります。
したがって正答は、
$\dfrac{AC}{AD}=\dfrac{11\sqrt6}{24}$
です。
この問題では、面積2・9・3そのものを使って長さを直接求めるのではありません。
まず面積比を、
$AP:PC$ と $AQ:QD$ という線分比へ翻訳する
ことが重要です。
その線分比ができると、交わる弦の定理によって積の条件とつながります。
私はこの問題を、公式を一つ当てる問題というより、「面積→比→積→求める比」と情報の姿を順番に変える問題として覚える方が再現しやすいと考えています。
第4問の答えは729|合同条件を「重複禁止」に読み替える
第4問では、整数の長さを持つ長方形を、辺に平行な直線で小長方形に分割します。
各小長方形の辺の長さは1以上9以下の整数で、相異なる二つの小長方形は合同ではないという条件です。
元の長方形の面積として可能な最大値を求めます。
答えは、
729
です。
横方向の各幅を、
$x_1,x_2,\ldots$
縦方向の各高さを、
$y_1,y_2,\ldots$
とします。
すると小長方形は、
$(x_i,y_j)$
という辺の組で表せます。
まず、横方向で同じ長さを二度使うことはできません。
同じ $x$ が二つあれば、同じ $y_j$ と組み合わせることで、同じ寸法の小長方形が二つできるからです。
縦方向についても同様です。
さらに、横方向の集合と縦方向の集合に共通する数字が2種類以上あってもいけません。
たとえば3と5が両方の集合に含まれていると、
$3\times5$
と、
$5\times3$
の小長方形ができます。
90度回転すれば重なるため、この二つは合同です。
したがって、横と縦で共通してよい数字は、
高々1種類
となります。
使える数字は1から9までです。
元の長方形の横の長さを $X$、縦の長さを $Y$ とすると、$X+Y$ を最大にするには1から9を一度ずつ使い、さらに一つだけ重複させるのが最も有利です。
重複させるなら最も大きい9ですから、
$X+Y\leq1+2+\cdots+9+9$
となります。
$1+2+\cdots+9=45$
なので、
$X+Y\leq54$
です。
面積は $XY$ です。
和が一定なら積は二つの値が等しいとき最大になります。
したがって、
$XY\leq\left(\dfrac{54}{2}\right)^2=27^2=729$
です。
ただし、上界を出しただけでは証明は終わりません。
本当に $X=Y=27$ を実現できるかを確かめます。
たとえば横方向に、
${3,7,8,9}$
を選ぶと、その和は27です。
縦方向に、
${1,2,4,5,6,9}$
を選んでも、その和は27です。
二つの集合に共通する数字は9だけです。
したがって条件を満たす分割が実現でき、
最大面積は729
となります。
この問題では「長方形をどう切るか」を図で延々と試す必要はありません。
「合同な長方形がない」という図形条件を、「辺の長さの組が重複しない」という組合せ条件へ変える。
ここが最も重要です。
数学オリンピックでは、図形として出題された問題が、途中から整数や集合の問題へ姿を変えることがあります。その変化に気づけるかどうかが、計算力以上に重要になる場面があります。
第5問・第6問はどう解く?消す発想と増やす発想
第5問では未知数を消し、第6問では補助点を一つ増やします。
方向は反対に見えますが、どちらも目的は同じです。
与えられた状態のままでは見えない構造を、自分が知っている数学へ変えることです。
第5問の答えは $(4,12,5)$ と $(17,12,5)$|共通素因数から13を導く
第5問では、問題文で指定された範囲の整数 $(x,y,z)$ について、
- $xy+4$
- $yz+5$
- $zx+6$
- $xyz+7$
をすべて割り切る2以上の整数が存在するという条件が与えられています。
答えは、
$(4,12,5)$ と $(17,12,5)$
です。
四つの数に共通する2以上の約数が存在するなら、その共通約数には素因数があります。
そこで、その素因数を $p$ とします。
すると、
$xy+4\equiv0\pmod p$
$yz+5\equiv0\pmod p$
$zx+6\equiv0\pmod p$
$xyz+7\equiv0\pmod p$
です。
つまり、
$xy\equiv-4\pmod p$
$yz\equiv-5\pmod p$
$zx\equiv-6\pmod p$
$xyz\equiv-7\pmod p$
となります。
ここから未知数を消していきます。
$xy\equiv-4$ の両辺に $z$ を掛ければ、
$xyz\equiv-4z\pmod p$
です。
一方、
$xyz\equiv-7\pmod p$
ですから、
$4z\equiv7\pmod p$
となります。
同じように、
$5x\equiv7\pmod p$
$6y\equiv7\pmod p$
を得ます。
ここで、
$5x\equiv7$
と、
$6y\equiv7$
を掛けると、
$30xy\equiv49\pmod p$
です。
ところが、
$xy\equiv-4\pmod p$
なので、
$30xy\equiv-120\pmod p$
でもあります。
したがって、
$49\equiv-120\pmod p$
です。
つまり、
$169\equiv0\pmod p$
となります。
$169=13^2$ であり、$p$ は素数です。
よって、
$p=13$
と決まります。
最初には $x,y,z,p$ と複数の未知量がありましたが、条件を組み合わせることで $x,y,z$ がすべて消え、13だけが残りました。
あとは、
$5x\equiv7\pmod{13}$
$6y\equiv7\pmod{13}$
$4z\equiv7\pmod{13}$
を解きます。
それぞれ、
$x\equiv4\pmod{13}$
$y\equiv12\pmod{13}$
$z\equiv5\pmod{13}$
です。
問題文で指定された整数の範囲に戻すと、
$x=4,17$
$y=12$
$z=5$
となります。
したがって、
$(4,12,5)$ と $(17,12,5)$
です。
念のため確かめます。
$(4,12,5)$ では、
$xy+4=52$
$yz+5=65$
$zx+6=26$
$xyz+7=247$
で、すべて13の倍数です。
$(17,12,5)$ では、
$xy+4=208$
$yz+5=65$
$zx+6=91$
$xyz+7=1027$
となり、やはりすべて13で割り切れます。
合同式を初めて学ぶと、「余りの計算をする特殊な記号」のように感じる方もいるでしょう。
しかしこの第5問では、合同式はむしろ、
複数の式から未知数を消去する道具
として働いています。
この見方を持つと、合同式が連立方程式に少し似た役割を果たすことが見えてきます。
第6問の答えは $\sqrt{41}-3$|補助点Gから直角三角形を作る
第6問は平行四辺形 $ABCD$ の図形問題です。
辺 $CD$ の内部に点 $E$ があり、$AE$ の中点を $M$ とします。
さらに、直線 $BM$ と辺 $AD$ の交点を $F$ とし、
$CE=DF=3$
$MB=5$
$MC=4$
という条件から、求める長さを計算します。
答えは、
$\sqrt{41}-3$
です。
この問題では、与えられている線だけを見ていても構造をつかみにくいところがあります。
そこで直線 $BM$ を延長し、直線 $CD$ との交点を $G$ とします。
ここから図の性質が一気につながります。
$M$ は $AE$ の中点なので、
$AM=ME$
です。
また平行四辺形より、
$AB\parallel CD$
であり、$E,G$ は直線 $CD$ 上にあります。
したがって、
$AB\parallel EG$
です。
さらに、
$A,M,E$
は一直線上、
$B,M,G$
も一直線上です。
この関係から、
$\triangle MAB\cong\triangle MEG$
となります。
よって、
$AB=EG$
$MB=MG$
です。
$MB=5$ なので、
$MG=5$
となります。
また平行四辺形なので、
$AB=CD$
です。
先ほど、
$AB=EG$
でしたから、
$CD=EG$
です。
直線上で、
$CD=CE+ED$
$EG=ED+DG$
なので、
$CE=DG$
です。
$CE=3$ ですから、
$DG=3$
となります。
問題文より、
$DF=3$
でもあります。
したがって、
$DF=DG$
となり、
$\triangle DFG$
は二等辺三角形です。
次に、
$AD\parallel BC$
です。
$D,F,A$ は一直線上なので、
$DF\parallel BC$
となります。
さらに、
$C,D,G$
は一直線上、
$B,F,G$
も一直線上です。
したがって、
$\triangle CBG\sim\triangle DFG$
となります。
$\triangle DFG$ では、
$DF=DG$
です。
相似関係から、
$CB=CG$
となり、
$\triangle CBG$
も二等辺三角形です。
さらに、
$MB=MG=5$
なので、$M$ は $BG$ の中点です。
二等辺三角形では、頂点から底辺の中点へ引いた線は底辺に垂直になります。
よって、
$CM\perp BG$
です。
これで $\triangle CMG$ は直角三角形になりました。
$CM=4$
$MG=5$
ですから、三平方の定理より、
$CG=\sqrt{CM^2+MG^2}
=\sqrt{4^2+5^2}
=\sqrt{41}$
です。
そして、
$DG=3$
なので、
$CD=CG-DG$
より、
$CD=\sqrt{41}-3$
となります。
したがって求める長さは、
$\sqrt{41}-3$
です。
この問題で補助点 $G$ を置く意味は、ただ線を増やすことではありません。
$G$ を作ることで、
合同 → $MB=MG$ → 二等辺三角形 → 相似 → $CB=CG$ → 垂線 → 三平方の定理
という一連の道筋が現れます。
補助線や補助点は、「何となく引いてみる」ものではありません。
中点や平行線という既知の条件を、合同や相似に変換できる位置を探す。
この視点を持つと、補助線の目的がかなり明確になります。
第36回JMO予選前半6問から何を学ぶ?「発想の入口」を残す
ここまで6問を解くと、分野はかなりばらばらに見えます。
しかし、解答へ向かう過程をもう一度眺めると、一つの共通点があります。
それは、
問題文を、そのまま計算しない
ということです。
第1問では、
「三つの未知数がある式」
を、
「大きな指数から候補を固定する問題」
へ変えました。
第2問では、
「平方根の整数部分」
を、
「45との差 $\varepsilon$ の大きさ」
へ変えました。
第3問では、
「面積」
を、
「線分比」
へ変え、さらに弦の積へつなぎました。
第4問では、
「合同でない長方形」
を、
「数字の重複が制限された集合」
へ変えました。
第5問では、
「共通約数」
を、
「共通素因数 $p$ を法とする合同式」
へ変えました。
第6問では、
「与えられた平行四辺形」
に補助点を一つ足して、
「合同と相似を使える図」
へ変えました。
ここには、数学オリンピックを学ぶうえで大切な共通原理があります。
難しい問題では、計算力より前に「どの形へ変換すれば知っている定理が使えるか」を考える。
私はこの6問を復習するなら、答えだけをノートに写すより、次のような「最初の一手」を一行ずつ記録する方法をおすすめします。
- 第1問:高いべき乗は、最小候補を代入して上限と比較する
- 第2問:近い平方数との差を置き、有理化して境界を出す
- 第3問:面積比から線分比を作り、交わる弦の定理へ渡す
- 第4問:「合同でない」を数の重複禁止へ翻訳する
- 第5問:共通素因数を置き、合同式で未知数を消す
- 第6問:中点と平行線があれば、合同を作る補助点を探す
これは、「正解を保存するノート」ではなく「発想を保存するノート」です。
解説を読んだ直後は、どの問題も分かったように感じます。
ところが翌日に白紙から解こうとすると、最初の一手が出てこないことがあります。
これは決して珍しいことではありません。
解説を理解することと、自分で発想を取り出すことは別の段階だからです。
そこで私は、解説を読んだ翌日に、計算をすべて再現しようとするのではなく、
「この問題を最初に動かした考えは何だったか」
だけを思い出す練習が有効だと考えています。
第1問なら、
「$2^{20}$ を調べる」
と出れば十分です。
第3問なら、
「面積比から $AP:PC$ と $AQ:QD$ を出す」
と出れば、そこから交わる弦の定理へ戻れます。
第5問なら、
「共通素因数 $p$ を置き、$xyz$ を消す」
という入口さえ出れば、その後の合同式を再構成しやすくなります。
これは中高年になって数学を学び直す方にも向いた復習方法です。
学生時代のように、大量の問題を短時間で処理する必要はありません。
一問をゆっくり読み、
「どの条件が強いのか」
「なぜこの式へ変えたのか」
「この補助点は何を作るためなのか」
を自分の言葉で説明してみるだけでも、十分に深い学びになります。
第36回JMO予選前半6問をどう評価する?私見と今後の学び方
筆者として今回の前半6問で興味深いと感じるのは、必要となる個々の道具が、必ずしも極端に高度ではないことです。
第1問の大小比較、第2問の平方数と有理化、第3問の面積公式、第4問の和と積、第6問の合同・相似・三平方の定理など、学校数学で触れる考え方も多く含まれています。
それでも簡単には解けません。
難しさは、「何を知っているか」だけでなく、「いつその知識を使うと見抜けるか」にあるからです。
私は、数学オリンピックの前半問題は、この「知識を取り出す力」を鍛える教材として非常に面白いと感じます。
難しい公式を次々に覚えるよりも、一つの条件を別の形で眺め直す経験を積むことに価値があります。
たとえば第4問は長方形の問題ですが、核心では数字の集合を考えています。
第5問は約数の問題ですが、核心では未知数消去をしています。
第6問は図形問題ですが、最終局面は4、5、$\sqrt{41}$ という直角三角形です。
つまり、問題に「整数」「図形」と名前を付けてしまうと、かえって視野が狭くなる場合があります。
分野をまたいで考え方をつなぐこと自体が、JMOの重要な練習になると私は考えています。
また、前半問題を「比較的取り組みやすいから」と軽く扱うのも惜しいところです。
後半の難問でも、突然特別な魔法を使うわけではありません。
候補を削る。
境界を評価する。
条件を比へ変える。
重複を整理する。
未知数を消す。
補助点を置く。
こうした基本的な操作が、より複雑な形で組み合わされます。
ですから前半6問で大切なのは、「一度正解したか」よりも、
なぜその一手を選べたのかを説明できるか
です。
もう一つ、学習上ぜひ意識したいのが検算です。
今回の第3問では、$AC/AD$ と $AD/AC$ を取り違えれば、途中の数学が正しくても最終答案は違ってしまいます。
第4問でも、729という上界を示すだけでは足りず、実際に27と27を実現する構成を示す必要があります。
第5問でも、合同式から候補を得たあと、実際に四つの式が13で割り切れるかを確かめると安心です。
このようにJMOでは、
発想 → 計算 → 条件への照合 → 最終確認
までを一つの解答として考える習慣が大切です。
私自身、年齢を重ねてから学び直すと、速さよりも「確かめながら進むこと」の価値を以前より強く感じます。
一問を解くのに時間がかかったとしても、なぜその式が成り立つのかを一つずつ確認すれば、その時間は決して遠回りではありません。
第36回JMO予選前半6問の正答は、第1問が $(1,36,3)$、第2問が $91$、第3問が $\dfrac{AC}{AD}=\dfrac{11\sqrt6}{24}$、第4問が $729$、第5問が $(4,12,5)$ と $(17,12,5)$、第6問が $\sqrt{41}-3$ です。
ただし、本当に残しておきたいのは数字そのものではありません。
大きさを見る、境界を見る、面積を比へ変える、合同条件を重複条件へ変える、未知数を消す、補助点で知っている図形を作る。
この6種類の発想を自分の言葉で説明できれば、今回の過去問演習は次の初見問題にもつながります。
よくある質問
第36回JMO予選はいつ実施されましたか?
第36回日本数学オリンピック予選は、2025年11月16日(日)に実施されました。
「2026年大会」と実施年が異なるため、過去問を整理するときは「第36回JMO予選」と実施日の両方を記録しておくと混同しにくくなります。
第36回JMO予選第3問の答えは $AC/AD$ と $AD/AC$ のどちらですか?
求めるのは、
$AC/AD$
です。
正答は、
$\dfrac{AC}{AD}=\dfrac{11\sqrt6}{24}$
となります。
逆数は別の量ですので、最後に問題文で求められている比の向きを確認することが大切です。
JMOの解説を読んでも初見問題が解けないのはなぜですか?
解説を理解する力と、白紙から最初の発想を取り出す力は同じではないためです。
一問ごとに「この問題を動かした最初の一手」を一行だけ残し、翌日や数日後にその一手を思い出す練習をすると、解答全文を暗記するより応用しやすくなります。
天水健太郎(元行政職員・生涯学習コラムニスト)

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