数学オリンピック2025の第35回JMO予選は、全12問を通して「条件を別の数学の言葉へ翻訳する力」が問われた大会です。
2025年1月13日に3時間で実施され、各問1点、解答欄には最終的な答えだけを記入する形式でした。この記事では、第35回日本数学オリンピック(JMO)予選の全12問の公式解答、前半6問の着眼点、後半6問の特徴、得点分布と難易度まで順に整理します。
なお、ここで扱う「数学オリンピック2025」は国際数学オリンピック(IMO)そのものではなく、2025年第35回日本数学オリンピック(JMO)予選です。年度を取り違えやすいので、この点を最初に確認しておきましょう。
数学オリンピック2025・第35回JMO予選とは?
第35回日本数学オリンピック(JMO)予選は、2025年1月13日(月・成人の日)の13時から16時まで実施されました。
公益財団法人数学オリンピック財団が公開している公式問題によると、問題は12問、試験時間は3時間、配点は各問1点の合計12点です。解答は証明を書くのではなく、答えのみを解答用紙へ記入します。
第35回JMOは、第66回国際数学オリンピックの日本代表選手候補を選ぶ国内選考の一部でもあります。
「答えだけを書けばよい」と聞くと、記述式の本選より気軽に感じるかもしれません。
しかし、予選には学校の試験のように「この公式を使いなさい」「相似を証明しなさい」といった道案内がありません。どの数学的な見方を使えば条件が整理されるのかを、自分で発見しなければならないところが大きな特徴です。
2025年大会の応募者は5358人、実際の参加者は4921人でした。
予選結果では6点以上がAランクで、Aランク者は207人です。本選受験有資格者は209人ですが、この209人には予選免除者2人が含まれています。
したがって、
- 予選参加者:4921人
- Aランク:6点以上、207人
- 本選受験有資格者:209人
- うち予選免除者:2人
という関係です。
Aランク207人は、参加者4921人の約4.2%に当たります。
つまり、第35回JMO予選で6問以上正解することは、単に「12問の半分が解けた」という以上に重みのある結果だったことが分かります。
さらに得点分布を見ると、0点が784人、1点が1105人、2点が1094人でした。
0~2点を合計すると、
784+1105+1094=2983人
です。
参加者4921人に対して約60.6%となり、受験者の約6割が0~2点に集中していました。
公式結果表には2点の行に累計「3032」とありますが、これは2点以上を上位から積み上げた累計です。「2点以下の人数」ではありません。
数字を読む際には、この累計欄と得点帯の人数を混同しないようにしたいところです。
私はこの分布を見て、第35回JMOを「後半だけが極端に難しい試験」と捉えるのは少し違うと感じます。
前半にも、入口となる発想を見抜けなければ時間を使ってしまう問題が並んでいます。計算力より先に、問題を見る角度を問われた予選だったと考える方が実態に近いでしょう。
数学オリンピック2025の全12問と公式解答は?
第35回JMO予選では、整数、組合せ、幾何、数列、合同式、関数、グラフ的な構造など、さまざまな題材が使われました。
公式問題と解答用紙に示された答えを整理すると、次のようになります。
問題 主な内容・着眼点 公式解答
第1問 六角形7マスへの整数配置 72通り
第2問 2025の素因数分解・平方数 44個
第3問 6枚のピースを10×10盤面へ配置 512通り
第4問 2~6で割った余り 49個
第5問 円・相似・辺の比 15/11
第6問 2つの整数列・2進指数 1064
第7問 20×25マス・最少ターン (20!)³通り
第8問 「美しい列」・整数列 2057
第9問 鋭角三角形・外心・垂線 2√61
第10問 mod 9と関数 858個
第11問 星と直行便・反復操作 2⁶⁸(2¹⁰²−1)/3
第12問 円・五角形・対称移動 √37/10
ここで第3問について、一つ注意があります。
これは6枚のピースで10×10の盤面を完全に「敷き詰める」問題ではありません。
P1、P2、P4、P5、P7、P8という6枚のピースを、10×10のマス目に沿って互いに重ならないように置く方法を数える問題です。
問題文を短く紹介するときにも、「敷き詰め」と言い換えてしまうと条件そのものが変わるため注意が必要です。
12問を眺めると、2025年大会では単純に「整数の年」「幾何の年」と一分野にまとめることができません。
ただし、解法を考える過程には共通点があります。
例えば第2問は平方数を「素因数の指数」へ、第4問は余りの条件を「合同式」へ、第6問は整数を「2で何回割れるか」へ読み替えます。
第10問では関数の条件をmod 9の世界へ、第11問では星と直行便の物語をグラフや経路の数え上げへ変換します。
問題文をそのまま眺め続けるのではなく、扱いやすい数学的構造へ言い換える。
これが第35回JMO予選を通して何度も現れる重要な考え方です。
数学オリンピック2025前半6問はどう解く?着眼点を解説
前半6問は公式解答だけを見ると、72、44、512、49、15/11、1064と比較的簡潔です。
しかし本当に学びたいのは数字そのものではありません。
「何を見た瞬間に問題が整理されたのか」という最初の一手です。
第1問|72通り―最大の数「7」から考える
第1問は、中央の1マスを6個の正六角形が囲んだ7マスに、1から7までの整数を重複なく入れる問題です。
辺を共有する2マスに書かれた数の和は、すべて10以下でなければなりません。
答えは72通りです。
最初の着眼点は、最も大きい数である7です。
7と隣り合えるのは、和が10以下になる1、2、3だけです。
中央のマスには外側の6マスすべてが隣接します。したがって7を中央へ置くことはできません。
まず7の場所を外側6カ所から選びます。
さらに、4と7、5と7、6と7は隣接できません。また5と6も和が11なので隣接できません。
7の位置を固定すると、制約の強い4、5、6の置き場所が絞られ、残る1、2、3は条件を壊さない範囲で並べることができます。
整理すると、
6×2×3!=72
となります。
この問題から学べるのは、「小さい数から順に置く」ことではありません。
最も制約の厳しいものから調べることです。
私は、この考え方は組合せ問題だけでなく、日常の整理にも少し似ていると感じます。自由度の低い部分を先に決めると、残りの選択肢が自然に整理されるからです。
第2問|44個―2025=3⁴×5²に分解する
第2問では、正の整数a、b、c、dが
abcd=2025
を満たし、さらにab、bc、cd、daがすべて平方数になる組を数えます。
公式解答は44個です。
まず、
2025=45²=3⁴×5²
と素因数分解します。
平方数の重要な性質は、素因数分解したときに各素数の指数が偶数になることです。
そこでa、b、c、dという四つの数を直接追うのではなく、3の指数と5の指数を別々に考えます。
abが平方数なら、aとbに含まれる3の指数の和は偶数です。
bc、cd、daについても同じことが言えます。
すると、a、b、c、dに含まれる3の指数の偶奇はすべて一致します。
3の指数は合計4ですから、可能な分配を整理すると11通りになります。
一方、5の指数は合計2で、同じ条件を満たす分配は4通りです。
したがって、
11×4=44
となります。
重要なのは「2025という数字を知っていたか」ではありません。
平方数という条件を、素因数の指数が偶数という条件へ翻訳できるかです。
この視点を身につけておけば、2025以外の数字を使った問題にも応用できます。
第3問|512通り―盤面を一気に数えない
第3問では、3n+2個のマスからなるピースPnを考えます。
P1、P2、P4、P5、P7、P8の6枚を、10×10の盤面上に重ならないよう配置します。ピースは回転させてもよく、盤面全体の回転や裏返しで一致する場合も別の配置として数えます。
公式解答は512通りです。
この問題で小さなピースから自由に置いていくと、場合分けが非常に増えます。
そこで大きいピースと盤面の端との関係に目を向け、どのような選択が次の配置を強制するのかを整理していきます。
見た目は大きな盤面ですが、配置を段階ごとの同型な選択として捉えることで数え上げが簡潔になり、最終的に512通りへ到達します。
この種の問題では、512という結果だけ覚えてもあまり役に立ちません。
それよりも、「全体を直接数えるのではなく、同じ形の選択が繰り返されていないかを見る」という観察を残しておく方が、次の問題へつながります。
第4問|49個―余りをmod 60までまとめる
第4問は、1以上1000以下の整数のうち、2、3、4、5、6で割った余りが、どの二つを選んでも異なる整数の個数を求めます。
答えは49個です。
五種類の余りを一度に考えると複雑に見えます。
そこで、まず2で割った余り、つまり偶数か奇数かから整理します。
条件を順に反映すると、可能な整数は60を法として、
35、58、59
の三種類に絞られます。
つまり、
- x≡35(mod 60)
- x≡58(mod 60)
- x≡59(mod 60)
です。
1以上1000以下で数えると、それぞれ17個、16個、16個となります。
したがって、
17+16+16=49
です。
2、3、4、5、6の最小公倍数は60です。
余りの条件を最終的にmod 60へ集約できるところが、この問題をすっきり見通す鍵になります。
第5問|15/11―複数の円を「比」にまとめる
第5問は、円に関係する四角形ABCDと二つの交点P、Q、さらに内接円の半径が登場する幾何問題です。
求めるのは、
BC/CD=15/11
です。
図には多くの情報があり、一つ一つの長さを求めようとすると迷いやすくなります。
そこで、相似関係によって辺の長さを同じ変数で表し、さらに接する四角形の辺の関係を利用します。
解法の要点は、数値を直接追いかけるのではなく、複数の三角形で生じる比を一つにまとめることです。
この問題は、第1~4問とはずいぶん景色が違います。
それでも「情報量を減らす」という意味では共通しています。
整数問題では合同式へ、幾何問題では相似比へ。複雑な条件を少数の変数へ圧縮することが大切なのです。
第6問|1064―整数を「2で何回割れるか」で分類する
第6問では、正の整数からなる二つの数列を、示された規則に従って変化させます。
最初の組(a1,b1)として可能な、40以下の正の整数の組を数える問題です。
公式解答は1064です。
核心になるのは、整数そのものの大小ではありません。
2で何回割り切れるかを表す情報です。
1から40までの整数を、2で割り切れる回数によって分類すると、
- 0回:20個
- 1回:10個
- 2回:5個
- 3回:3個
- 4回:1個
- 5回:1個
となります。
全体の組は、
40×40=1600組
です。
条件を満たさなくなる組は、二つの数の2進指数が等しい場合として整理できるため、
20²+10²+5²+3²+1²+1²
=536
です。
したがって、
1600-536=1064
となります。
第2問と第6問を続けて復習すると、良い学びになります。
第2問は素因数3と5の「指数の偶奇」、第6問は素因数2の「指数そのもの」を見ています。
つまりJMOでは、整数をただの大きさとして見るのではなく、素因数分解した後の性質へ分解して眺める習慣が大きな武器になります。
第7~12問はなぜ難しい?後半6問の核心
第7問以降になると、一つの着眼を見つけただけで終わる問題は少なくなります。
「条件を別の構造へ読み替える」ことに加えて、その構造から答えまで論理を長くつないでいく力が必要になります。
私は、これを単純に「計算が難しくなる」と表現するより、解答まで歩かなければならない距離が長くなると考えています。
第7問|(20!)³―マス目を順序の問題へ変える
第7問は縦20マス、横25マスの盤面を使ったゲームです。
各ターンで、右または上に連続する空きマスを選び、そのターンの数字を書き込みます。
求めるのは、ゲーム終了までのターン数を最少にしたとき、完成する数字の書き込まれ方が何通りあるかです。
公式解答は、
(20!)³通り
です。
「マスをどう塗るか」という見方だけでは、500個のマスがあるため途方もなく感じられます。
ところが最少ターンという条件によって、書き込み方には強い順序構造が生まれます。
そこで盤面の問題を「どの順番で境界が進むか」という数え上げへ読み替えると、階乗が現れてきます。
第3問と同じく、一マスずつ追わず、盤面全体を支配している構造を見ることが大切です。
第8問|2057―条件を一度ではなく繰り返し使う
第8問では、0から始まり、途中に2025を含む増加整数列「美しい列」が定義されます。
その長さとして可能な最大値をNとし、長さNの美しい列の末項として可能な最小値を求めます。
公式解答は2057です。
条件には、任意のi<j<kについて、
(ai+ak)/2≦aj
という不等式があります。
この条件を一回使って終わるのではありません。
繰り返し適用すると、項と項の間隔に2倍、4倍、8倍という形の制約が生じ、列をどこまで長くできるかが決まっていきます。
最大の長さを調べ、その長さを達成しながら末項を最も小さくする。
最大化と最小化を二段階で考えることが、この問題の難しいところです。
第9問|2√61―直角から見えない関係を作る
第9問は鋭角三角形ABC、その外心O、垂線の足D、E、F、さらにAOとEFの交点Pを扱います。
OD=4√7、AP=11という条件からEFを求め、答えは
2√61
です。
問題文に多数の点が登場しますが、すべての距離を順番に求める必要はありません。
垂線によって作られる直角、外心によって生まれる円の性質、点Pを通じて結び付く長さを整理することで、必要な関係が浮かび上がります。
第5問では比較的見つけやすい相似や比をまとめました。
第9問ではさらに一歩進み、図に明示されていない関係を自分で作り出す力が必要になります。
第10問|858個―関数をmod 9の世界へ移す
第10問では、
S={0,1,2,…,8}
上の関数fを考えます。
条件を満たす関数の個数は858個です。
一見すると関数の問題ですが、通常の関数グラフを考えてもほとんど助けにはなりません。
問題文の「9の倍数」という言葉が重要です。
0から8までの数字を、9で割った余りを代表するものとして扱い、条件全体をmod 9上の関数の性質として捉え直します。
さらに、関数の値が0、3、6の側に入る場合と、それ以外の場合を分類して調べることで数え上げにつながります。
第4問も余りの問題でしたが、難度は一段上がっています。
第4問では一つの整数の余りを分類しましたが、第10問では余りの世界の中で関数そのものを分類する必要があるからです。
第11問|2⁶⁸(2¹⁰²−1)/3―「星の物語」を経路へ翻訳する
第11問には、O、A、B、C、Dという五つの星と、それらを結ぶ一方向の直行便が登場します。
さらに星を破壊し、直行便から新しい星を作り、再び便を結ぶ操作を100回繰り返します。
設定だけ読むと、かなり複雑です。
しかし本質は天文学ではありません。
直行便を有向辺として見れば、有向グラフの変換と経路の数え上げとして考えることができます。
100回分を一回ずつ図に描くのではなく、操作を繰り返したときに、どのような経路が新しい星に対応するのかを整理します。
さらに重要度の総和を、経路の長さや二項係数を用いてまとめることで計算できるようになります。
公式解答は、
2⁶⁸(2¹⁰²−1)/3
です。
私はこの問題を、2025年大会の「翻訳」という特徴が最も鮮明に出た一問だと感じます。
物語を物語のまま処理し続ければ苦しくなります。
「星は頂点」「直行便は有向辺」「繰り返した後の星は経路に対応する」と読み替えた瞬間に、数学的な輪郭が見えてきます。
第12問|√37/10―対称移動と円の情報を統合する
最後の第12問は、円Ωに内接する五角形ABCDEと点P、その対称点P1~P5を扱う幾何問題です。
公式解答は、
√37/10
です。
点の数が多く、比の条件も複数与えられています。
このような問題では、表示されているすべての長さを独立に求めようとすると、すぐに式が増えてしまいます。
対称移動によって等しくなる距離、同じ円周上にある点から得られる角度、平行条件から生じる関係をまとめる必要があります。
第12問が難しいのは、特殊な公式を知っているかどうかではありません。
対称性、円、平行、比という別々に見える情報を、一つの図形として統合して読む必要があるからです。
第35回JMO予選の難易度は?得点分布から読む
第35回JMO予選の参加者は4921人です。
公式の得点分布は、6点以上がAランク、3~5点がBランク、0~2点がCランクとなっています。
特に注目したいのは、0~2点が2983人だったことです。
参加者に占める割合は約60.6%です。
一方、6点以上のAランクは207人で約4.2%にすぎません。
10点は1人、11点と12点は0人でした。
この数字を見ると、第35回JMO予選は、学校の定期試験のように「前半を確実に解けば半分程度は取れる」と考えられる試験ではないことが分かります。
前半にも、入口を見つけなければ進みにくい問題があります。
ただし、ここで「2025年は全員にとって一様に難しかった」と断定するのも慎重であるべきでしょう。
JMOでは、その年の参加者層も変わります。得点境界だけでは個々の問題の難しさを完全には比較できません。
それでも、2024年・2026年と並べると特徴は見えてきます。
大会 予選実施日 参加者 Aランク 0~2点
第34回JMO・2024年 2024年1月8日 4611人 6点以上・137人 2099人
第35回JMO・2025年 2025年1月13日 4921人 6点以上・207人 2983人
第36回JMO・2026年 2025年11月16日 3992人 7点以上・170人 2116人
0~2点の割合を計算すると、第34回は約45.5%、第35回は約60.6%、第36回は約53.0%です。
第35回では低得点帯の割合が前後の大会より高かったことが分かります。
一方、第35回では6点以上に207人が到達しました。
ここから私は、2025年予選を単純な「難問だらけの年」と見るより、着眼点を発見できた人と、入口で苦戦した人の差が表れやすい年だったと考えています。
第1問なら7、第2問なら素因数指数、第4問ならmod 60、第6問なら2進指数です。
入口が分かれば短い計算へ変わる一方、その入口に気付かなければ数字や場合分けを長く追うことになります。
この「見方を切り替えられるかどうか」が、得点分布の広がりにも関係したのではないでしょうか。
もう一つ、年度の呼び方には注意が必要です。
第35回JMO予選は2025年1月13日に行われました。
一方、第36回JMO予選は制度上の実施時期が変わり、2025年11月16日に実施されていますが、大会としては「2026年第36回JMO」です。
そのため、「2025年11月16日の数学オリンピック問題」を探している人が「JMO2025」と検索すると、第35回と第36回が混在しやすくなります。
過去問を調べるときは、年だけではなく、第35回・第36回という回次まで確認するのが確実です。
数学オリンピック2025本選はどれほど難しかった?
第35回JMO本選は、2025年2月11日に行われました。
本選は予選とは形式が異なり、5問を4時間で解く記述式です。各問題について答えだけではなく、そこへ至る論証を書く必要があります。
受験者は205人でした。
数学オリンピック財団が公表した問題別平均点は、
- 第1問:3.26点
- 第2問:1.96点
- 第3問:1.98点
- 第4問:0.30点
- 第5問:0.00点
- 全体平均:7.49点
です。
40点満点に対して全体平均7.49点ですから、本選も非常に厳しい結果でした。
特に第5問の平均点が0.00点だったことは目を引きます。
もちろん、平均点だけで問題の価値や受験者個人の実力を測ることはできません。
それでも、予選を通過した上位層が受験した本選でこの平均点だったことを考えれば、第35回大会全体が相当に歯ごたえのある内容だったことは読み取れます。
参考までに、第34回JMO本選の全体平均は10.38点でした。
第35回はそれより低くなっています。
ただし本選の問題は年度ごとにまったく同じ尺度で設計されるわけではないため、「平均点が低いから機械的に○倍難しい」と考えるのは適切ではありません。
数字はあくまで、受験者が実際にどこまで得点できたかを見る材料として使うのがよいでしょう。
数学オリンピック2025問題から何を学ぶ?私が注目した「翻訳力」
ここからは私見です。
第35回JMO予選12問を通して私が特に印象に残ったのは、難しい知識をたくさん覚えていることより、同じ条件を別の数学の言葉へ言い換える力が繰り返し問われていることです。
第2問の「平方数」は、素因数分解した指数の偶奇へ変わります。
第4問の「余りが全部違う」は、合同式とmod 60へ変わります。
第6問の整数は、大きさではなく「2で何回割れるか」という2進指数へ変わります。
第7問の盤面は、マスの集まりから順序の数え上げへ変わります。
第10問の関数は、通常の関数ではなくmod 9上の写像として捉え直します。
そして第11問の星と直行便は、有向グラフと経路へ変わります。
こうして並べてみると、第35回予選は私には「翻訳の試験」のように見えます。
数学が苦手だった頃、私は問題文に書いてある数字をそのまま使って何とか計算しようとすることがよくありました。
しかし、数学の問題には「その形のままでは扱いにくい条件」があります。
平方数を指数へ、割り算を余りへ、操作を不変量へ、盤面を順序へ。
言い換えることで、突然問題が小さくなるのです。
年齢を重ねて学び直している方にも、この感覚はぜひ味わっていただきたいと思います。
一問を最後まで解けなくても構いません。
「この問題は何へ言い換えればよいのだろう」と考えるだけでも、学校数学とは少し違った数学の面白さが見えてきます。
過去問では「正解」より「入口」を記録する
第35回JMOを練習教材として使うなら、私は答えだけを採点して終わらせない方法を勧めます。
ノートには、正解の横に「最初に気付くべきだったこと」を一行だけ残します。
例えば、
第1問なら「最大の7から置く」。
第2問なら「平方数→素因数指数の偶奇」。
第4問なら「2~6の余り→最終的にmod 60」。
第6問なら「整数の大小ではなく2進指数」。
この一行が、次に似た問題へ出会ったときの手掛かりになります。
答えの72や44を覚えていても、別の数字になればそのままでは使えません。
一方、「制約の強い対象から見る」「平方数なら指数を見る」という考え方は、問題が変わっても使えます。
JMOの過去問で蓄積したいのは答えではなく、解法の入口を見つける再現性です。
ここが、普通の問題集と数学オリンピックの過去問を使うときの大きな違いだと私は考えています。
本番では12問を順番に解く必要はない
第35回JMOの得点分布を見ると、3時間の使い方も重要です。
12問あるからといって、第1問から第12問まで番号順に解かなければならない決まりはありません。
数分考えても入口が見えないなら、一度印を付けて次へ進む方法があります。
別の問題を解いた後に戻ると、最初には見えなかった構造が見えることも珍しくありません。
特に第35回のような着眼型の問題が多い大会では、一問に長く固執するより、早い段階で全12問を見渡し、自分が翻訳できそうな問題を探すことに意味があります。
これは単なる受験テクニックではないと思います。
数学では、「今の見方では進まない」と判断して別の角度から眺め直すこと自体が、重要な問題解決能力だからです。
よくある質問
数学オリンピック2025の予選問題は何問ですか?
第35回日本数学オリンピック(JMO)予選は全12問です。
2025年1月13日に3時間で実施され、各問1点、合計12点です。予選では解答過程ではなく、最終的な答えのみを記入します。
数学オリンピック2025の予選通過ラインは何点ですか?
第35回JMO予選では、6点以上がAランクでした。
Aランク者は207人です。本選受験有資格者は209人ですが、この人数には予選免除者2人が含まれています。
2025年11月16日のJMOは第35回ですか?
いいえ。2025年11月16日に行われたのは2026年第36回JMO予選です。
2025年第35回JMO予選は2025年1月13日実施です。暦年だけで探すと混同しやすいため、「第35回」「第36回」という回次も確認すると分かりやすくなります。
まとめ|数学オリンピック2025は「見方を変える力」が問われた
数学オリンピック2025、第35回JMO予選は、2025年1月13日に3時間・全12問で実施されました。
公式解答は、第1問から順に72、44、512、49、15/11、1064、(20!)³、2057、2√61、858、2⁶⁸(2¹⁰²−1)/3、√37/10です。
参加者4921人のうち、6点以上のAランクは207人でした。
0~2点は2983人で、参加者の約60.6%を占めています。本選受験有資格者209人とAランク207人との差は、予選免除者2人によるものです。
第35回JMOの12問を振り返ると、単に高度な公式を知っているだけでは足りないことがよく分かります。
平方数を素因数指数へ、余りを合同式へ、整数を2進指数へ、盤面を順序へ、関数をmod 9へ、星と直行便をグラフへ読み替える必要があります。
私は、この「翻訳する力」こそ2025年問題を過去問として学ぶ最大の価値だと考えます。
解けなかった問題があっても、答えを写して終わりにする必要はありません。
「私はどの条件を、何に言い換えればよかったのか」を一問ずつ確かめてみてください。
その小さな振り返りを重ねることが、次の問題で入口を見つける力につながります。
焦らず、一問からで十分です。第35回JMO予選は、計算の速さだけではない数学の奥深さをじっくり味わえる12問だと私は感じています。
執筆:天水健太郎


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