弓道に限らず日本の武道は段級制を取っています。レベル設定をして審査という試験を受けて認定するものです。この段位の種類、どのくらいの難しさなのか、何年かかるのかなどは人それぞれですが、ある程度のイメージをお知らせしたいと思います。
段位などは無駄と考える人もいるかもしれませんし、その弊害なども指摘されていますが、それでもやはり修練の一過程としてわかりやすく励みになる手法かとも思います。本稿では五段まで解説していきます。
弓道初級者の合格率:級位、初段、二段の実績
個々での解説は社会人を前提として説明します。高校生と大学生の場合昇段試験のレベルが違い、厳しいような気がします。
受審者が週にどのくらい練習しているかでも変わってきますが、このレベルでは週1回ぐらいでしょう。
初段取得のポイントと合格率
社会人の場合は体育館などの初心者教室から始められる方が多いでしょう。その場合、査定という区分で審査を受けることになります。この査定はその人のレベルに合わせて段位、級位を与える仕組みとなっています。
審査のポイントは入場から退場まで決められた手順で運行ができるか。また、射においては審査方式によって射法八節に則り運行ができるかがポイントになります。
審査規定では「射形体配型に適って、矢所の乱れぬ程度に達した者」とされています。これらのポイントができていると認められれば、初段を与えられることになります。
そこまでいかない、例えば甲矢、乙矢とも失をしてしまった場合、入場から退場までの座射の方法が分からなくなってしまった場合などは、級位の判定になります。
弓道教室などで始められて、週1回の練習で1年間も行えば、大抵の方が初段をいただくことになります。地方によっては厳しいところがありますが、それでも70%ぐらいでしょう。
よほどの失敗をするか、上がってわからなくならない限り、ほぼ合格するのが普通です。
弓道の初段取得は、継続的な練習と基本的な技術の習得が鍵となります。
皆さんも一歩一歩、確実にスキルアップを目指して頑張りましょう!初段受審の具体的なガイドは次の記事をご覧ください。
弓道初段を目指す中年のためのステップバイステップガイド | 天水仙のあそび (tensuisen.com)
二段への道:合格率と審査のポイント
審査規定では「射形体配共に整い射術の運用に気力充実し、矢所の乱れぬ程度に達した者」となっています。これも入場から退場までの運行、射の運行がスムーズに行われていることが大切です。
初段の頃はなんとなくおぼつかない状態でも間違えない限りはまだ許されますが、弐段の審査になると次の動作の入り方がスムーズに行われていないと、練習していないなと思われるでしょう。的中はまだ問われませんので、的周辺まで届けばよいのです。
初段審査はほぼ全員合格しますが、弐段審査になるとかなり地方によってばらつきが出ます。ほぼ100%というところもありますし、50%というところもあります。恥ずかしながら私は弐段審査で落ちたことがあります。
30年以上前の頃は査定審査でいきなり弐段になる人もいましたが、今では弐段は出さないようですから、変な色気は出さないようにしてください。
弐段審査も順調に練習を重ねていれば初段合格後1年ぐらいで合格するでしょう。
弓道中級者の合格率:三段から五段までの実績
いよいよ、ここからが本格的な審査になってきます。ここからは必ず一本は的中する必要がありますので、グッとプレッシャーが上がってきます。また、練習もそろそろ週1回では辛くなるでしょう。時間が取れないなら道場以外の自宅での練習も必要になります。
三段取得のポイントと合格率
審査規定では「射型定まり、体配落着き、気息整って、射術の運用に従い、矢飛び直く、的中稍稍確実な者」とされています。入場から退場までの動作はスムーズによどみがないことが必要です。合わせて、このクラスから気息(呼吸)に合わせて動作をすることが求められてきます。
参段が一つの関門と思われるのは、やはり的中です。何とか中てなければということに気持ちが移って、それまでの動作がおろそかになります。よく中ったけれど落ちたという人がいますが、射に入る前に、何回か見過ごせないミスをしている例が多いのです。
また、この頃になると「弓返り」の問題が生じます。人によっては弓返りが必須だという人もいますし、そうでない人もいます。この段階の「弓返り」は自然な感じがしない人が多いのであまりこだわらないほうが良いのではないでしょうか。
合格率はグッと落ちて高いところで30%、中には10%ぐらいという場合もありますので、合格した時はそれなりに喜べます。普段中っていても本番ではという方もいますので、なかなか難しいものがあります。
早ければ弐段授与から1年ぐらいで合格しますが、ここからは何年もかかることがあります。それでも毎週2回ぐらい練習して、審査を年間3、4回受ければ、弐段授与後2、3年ぐらいでこの段階も通過できるでしょう。私も参段に合格した時が一番うれしかった印象があります。
参段受審の具体的なガイドは次をご覧ください。
弓道参段(三段)の審査を受ける心構えと意義は | 天水仙のあそび (tensuisen.com)
四段への挑戦:合格率と審査のポイント
審査規定では、「参段の要素に加うるに気息正しく、離れ鋭く、的中確実の域に達した者」となっています。通常は四段審査から弓道着から和服着用に替わりますので、肌脱ぎの動作が加わります。
ここの部分は審査の対象外とされていますが、それでもそれなりにプレッシャーが加わることになり、射への集中がそがれることになります。
ここでも的中が問題となります。一般的には二本中てなければだめと考えられていますし、そのように説明する方もいるようですが、意外と一本で合格している人もかなりいます。束中にこだわるよりも、要は正確な射を行うことが重要なのだと思います。
やはり参段の頃から重視される息合いに合わせた動作が射全体にできているかどうかが重要だと思います。
合格率は大体10%ぐらいまたはそれ以下ではないでしょうか。実際本当に難しいと思います。
従って、この段階になると、何年で合格というのは練習量と、個人差がでますので一概に言えないかなと思います。
五段取得の難易度と合格率
審査規定では「射形、射術、体配法に適って射品現れ、精錬の功特に認められたる者」となっています。この段階から、連合審査と言ってその地区外からの審査員も加わってきますので、審査の雰囲気が地方審査とはまた異なった一段緊張感が高まる審査になります。
しかも、受審者も地区審査と違い、他県の方も混じることになるので、普段から見かけない人の中で合わせて行くことが求められます。
審査の内容は、これまでの総決算と考えてください。強いて言えば離れの鋭さ、バランスが求められるような気がします。
的中についても束中ではなくても一本で合格した人もいらっしゃいますので、四段と同じ考え方で良いのではないでしょうか。
合格率は数%と言ったところでしょう。何年で合格とは言えないのは四段と同じです。
五段取得は、弓道の深い理解と高い技術が求められる難関です。
しかし、挑戦することで得られる達成感は、他のものとは比べ物にならないほどのものですよ!
弓道段位取得の総まとめ
弓道の段位について五段までおよその道筋を解説してきました。その人の練習量、取り組み姿勢、資質によって五段まで到達するまでの年数は様々です。本当に早ければ5年ぐらいの人もいますが、一般的には10年以上はかかるような気がします。
それでも不可能なものではない世界ですし、それほど特殊な世界ではないと思います。相当高年齢もから始めた方でも、体力、腕力がなくても到達可能な世界です。
また、結果がダメな場合にはそれなりの原因があるはずです。単に当たらなかったというのではなく、射技のどの部分に問題があったのか、精神的にどこが足りないのか、しっかり見つめ直す機会になります。また、様々な解説書もあります。あきらめずに取り組んでいただくことを期待しています。
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