数学オリンピック2024予選は、3時間で12問に挑み、Aランク6点以上が本選進出となった、後半ほど得点を伸ばしにくい大会でした。
2024年1月8日(月・祝)に行われた第34回日本数学オリンピック(JMO2024)予選では、4611人が受験し、137人が本選受験資格を獲得しました。ここでは全12問の答えだけでなく、「何を見抜けば解法につながったのか」を初心者にも追いやすい形で整理します。
数学オリンピック2024予選問題はどんな試験だった?
第34回日本数学オリンピック(JMO)予選は、2024年1月8日(月・祝)に実施された、3時間・全12問の試験です。
予選は本選のように証明過程を詳しく記述する形式ではなく、各問題の答えを解答用紙へ記入します。各問1点の12点満点で、2024年はAランクが6点以上となり、このAランクが本選受験資格に対応しました。
基本情報をまとめると、次の通りです。
項目 第34回JMO予選
実施日 2024年1月8日(月・祝)
試験時間 3時間
問題数 12問
配点 各1点・12点満点
解答形式 答えのみを記入
受験者数 4611人
Aランク 6点以上
本選受験資格者 137人
最高得点 10点・2人
3時間を12問で単純に割れば、1問あたり15分です。
しかしJMO予選では、すべての問題へ15分ずつ使う方法が最善とは限りません。特に2024年は、前半で確実に得点し、難しい問題に時間を奪われすぎないことが重要な構成でした。
本選通過ラインに相当するAランクは6点です。
つまり、「第12問まで進んだか」よりも、「取れる6問をどう作ったか」が結果を左右しやすい大会だったと考えられます。
数学オリンピック2024予選の全12問|答えと出題テーマ
JMO2024予選では、階乗、桁、円、組合せ、床関数、整数、関数方程式など、幅広い題材が出題されました。
ただし、12問に共通しているのは公式を大量に知っているかどうかではありません。問題文を、自分が扱える数学の形へ言い換える力が何度も問われています。
問題 主なテーマ 答え
第1問 階乗を含む式 122/11
第2問 各桁が素数となる整数 309、311
第3問 正三角形・円・方べき 5+√10
第4問 黒石・白石・多数決操作 2883
第5問 床関数・合同式・最小公倍数 2519
第6問 二等辺三角形・接円・相似 14√65/13
第7問 素数・平方数・合同式 16個
第8問 非負整数上の関数方程式 2^990+1個
第9問 円に内接する四角形・相似 17/3
第10問 100×100マス・配置 3・2^100・C(198,100)通り
第11問 関数・三角形成立条件 102050
第12問 合同式・mod 2100・整数列 2100^210/(2^164・3^30)個
特に注意したいのが第12問です。
答えは2100^210/(2^164・3^30)個であり、指数を2100や330と取り違えないようにする必要があります。全12問の答えを復習するときは、まずこの一覧を正確な基準としておくとよいでしょう。
前半6問はどう解く?答えから逆算して「一手」を理解する
第1問の答えは122/11|階乗を計算しない
第1問は、
√{(123!-122!)/(122!-121!)}
を計算する問題です。
大きな階乗を見ると身構えてしまいますが、123!そのものを求める必要はありません。
分子は、
123!-122!
=122!×(123-1)
=122!×122
です。
分母も同じように、
122!-121!
=121!×(122-1)
=121!×121
となります。
したがって根号の中は、
(122!×122)/(121!×121)
=122×122/121
=122²/11²
です。
よって答えは、
122/11
となります。
第1問で問われているのは計算速度よりも、大きな数字をそのまま扱わず、共通因数を見つけられるかです。
私はこの問題が、2024年予選全体の入口としてよくできていると感じます。難しそうな見た目を一度ほどき、簡単な構造へ戻す姿勢が、その後の問題でも繰り返し必要になるからです。
第2問の答えは309、311|nではなく2つの数の差を見る
第2問では、各桁がすべて素数である正の整数を「素敵な数」としています。
十進法の1桁の素数は、
2、3、5、7
の4種類です。
3桁の整数nについて、n+2024とn-34がともに素敵な数になるnを求めます。
ここで、
x=n-34
y=n+2024
と置いてみます。
すると、
y-x=2058
です。
問題は「nを探すこと」から、2、3、5、7だけを各桁に持つ2つの数で、差が2058になる組を探すことへ変わります。
桁ごとの差と繰り上がり、繰り下がりを確認していくと、
x=275、277
が残ります。
したがって、
n=275+34=309
または、
n=277+34=311
です。
答えは、
309、311
となります。
この問題で大切なのは総当たりではありません。
nを直接動かすより、条件に登場する2つの数の「差が一定」という形へ翻訳することで、候補を一気に狭められます。
第3問の答えは5+√10|BX>CXが最後の決め手になる
第3問は、一辺10の正三角形ABCと円を扱う幾何問題です。
円は頂点Aを通り、辺BC上の点XでBCに接します。さらにAB、ACとの交点をD、Eとし、
AD+AE=13
という条件があります。
そして問題文には、
BX>CX
という重要な条件があります。
BX=xとすれば、
CX=10-x
です。
円がBCにXで接しているため、点Bや点Cから見た方べきを利用すると、BX、CXとAB、AC上の長さを積の関係で結ぶことができます。
つまり入口は、
接線がある→方べきを使う
です。
条件を整理するとBXについて2つの候補が現れますが、正三角形の一辺が10なので、
BX+CX=10
です。
ここでBX>CXを使うとBX>5となるため、小さい方の候補は除外されます。
したがって、
BX=5+√10
です。
BX>CXは単なる飾りではありません。2つの解のうち、どちらを採用するかを一意に決める条件です。
第4問の答えは2883|「必ず黒」を逆側から考える
第4問では、黒石n個と白石5^5-n個を並べ、5個ずつのまとまりを多数派の色1個へ置き換える操作を繰り返します。
最後に、最初の並べ方によらず必ず黒石になる最小のnを求めます。
答えは、
2883
です。
黒石がどれだけあれば必ず勝てるかを直接追うと、並べ方による場合分けが膨らみます。
そこで逆に、
最後に白石を1個残すためには、最初に最低何個の白石が必要か
を考えます。
5個から白石1個を作るには、白が多数派になる必要があるため最低3個の白石が必要です。
その3個の白石を一段前で作るには、
3×3=9個
が必要です。
同じ考え方で5段さかのぼると、必要な白石は、
3^5=243個
となります。
つまり白石が242個以下なら、どのように配置しても最後に白石を残せません。
全体の石は、
5^5=3125個
です。
したがって必要な黒石の最小数は、
3125-242=2883
となります。
「必ず○○になる」という保証問題では、反対側が成立する最小条件を求めると見通しがよくなることがあります。
これはJMOだけでなく、組合せ問題全般で覚えておきたい考え方です。
第5問の答えは2519|床関数の等号条件から合同式を得る
第5問は、床関数、いわゆるガウス記号を含む式と二項係数の等式からnを求める問題です。
答えは、
2519
です。
この問題では「なぜn≡-1 mod kになるのか」を丁寧に見ることが大切です。
nを、
n=kq+r
0≦r<k
と書けば、
floor(n/k)=q=(n-r)/k
です。
rは最大でもk-1なので、
floor(n/k)≧(n-k+1)/k
が成り立ちます。
二項係数側に現れる、
n、n-1、……、n-9
と、床関数を使った積を比較すると、全体として等号が成立するためには、それぞれのkについて上の不等式でも等号になる必要があります。
等号になるのは、
r=k-1
のときです。
つまり、
n≡-1 mod k
が必要となります。
これがk=1、2、……、10について同時に成立するので、
n+1
は1から10までのすべての整数で割り切れなければなりません。
最小公倍数は、
LCM(1,2,…,10)=2520
です。
したがって最小のnは、
n+1=2520
より、
n=2519
となります。
表面上は床関数の問題ですが、実際には、
床関数の不等式→等号条件→余り→合同式→最小公倍数
と段階的に翻訳しています。
この流れを自分の言葉で説明できるようになると、答えの2519だけを覚えるよりずっと応用が利きます。
第6問の答えは14√65/13|接円、角、相似を順につなぐ
第6問では、AB=AC=5の二等辺三角形ABCを考えます。
AB上にAD=3となる点D、BC上に点Eを取り、Eを通ってABにBで接する円ωが、三角形ADEの外接円にも接します。
さらにωとAEとのもう一つの交点をFとし、CF=10という条件からBCを求めます。
答えは、
14√65/13
です。
この問題は第3問のように一つの定理だけでは進みにくく、いくつかの事実を順番につなぐ必要があります。
- 円ωがABにBで接することから、接弦定理で角の関係を作る
- 2つの円が接していることから、対応する角を見つける
- 等しい角を使って相似な三角形を作る
- 相似比からAE、BE、EFなどの長さの関係を整理する
- 最後に三角形ABC全体へ戻し、BCを求める
という流れです。
JMOの幾何では、最初から求める辺だけを追いかけると行き詰まることがあります。
「どの角が等しいか」「どの三角形が相似になるか」を一つずつ確定し、そこから長さを運ぶ方が安全です。
第6問は前半の中でも重い問題で、ここまでを全部正解することが2024年予選ではすでに本選ラインに相当しました。
後半6問はなぜ難しい?第7~12問の中間結論まで追う
第7問以降は、使う公式を思い出すだけでは方針が立ちにくくなります。
ただし難しい問題ほど、最初から最後まで一気に見通す必要はありません。最初の条件変換で何が固定されるかを確認すると、解答の骨格が見えやすくなります。
第7問の答えは16個|平方数条件をmod p²へ落とす
第7問では、3以上の素数pと1以上2024以下の整数aについて、
a<p^4
かつ、
ap^4+2p^3+2p^2+1
が平方数となる組(p,a)を数えます。
答えは、
16個
です。
平方数をx²とすると、
x²=ap^4+2p^3+2p^2+1
です。
この式をp²を法として見ると、p²を含む項は消えるので、
x²≡1 mod p²
となります。
pは3以上の奇素数ですから、
(x-1)(x+1)≡0 mod p²
を考えることで、
x≡1 mod p²
または、
x≡-1 mod p²
へ候補を絞れます。
そこで、
x=kp²+1
または、
x=kp²-1
と置いて元の式へ戻します。
平方を展開してp²で割れる部分を比較すると、aとkの間に整数条件が生まれます。
最後に、
1≦a≦2024
a<p^4
という範囲条件を重ねることで、許される(p,a)だけを数えます。
その結果が、
16個
です。
この問題では「平方数を探す」のではなく、平方数であることからxの合同類を先に固定するのが決定的な一手です。
第8問の答えは2^990+1個|0を代入して自由度を削る
第8問では、非負整数上で定義された関数fが、
f((m+n)^2)=f(mf(n))+f(n^2)
を満たすとき、
(f(0),f(1),…,f(2024))
としてあり得るものの個数を求めます。
答えは、
2^990+1個
です。
まずm=0を代入します。
すると、
f(n²)=f(0)+f(n²)
ですから、
f(0)=0
と分かります。
次にn=0を代入すると、
f(m²)=f(mf(0))+f(0)
です。
f(0)=0なので、
f(m²)=f(0)=0
となり、
すべての平方数xについてf(x)=0
が得られます。
ここで元の式へ戻ります。
左辺の(m+n)²も平方数なので0、右辺のf(n²)も0です。
したがって、
f(mf(n))=0
がすべての非負整数m,nについて成立します。
ここから、あるnについてf(n)が正なら、そのf(n)の倍数では関数値がすべて0になる、という強い制約が得られます。
つまり値を好き勝手に決められるわけではなく、
1. 平方数では必ず0
2. 正の値を取った場所から、その値の倍数へ0の条件が広がる
3. 0~2024の範囲で互いに矛盾しない選択だけが残る
という順に自由度が削られます。
公式解答の数え上げでは、この条件整理を最後まで行うことで、独立に選べる部分が990個に整理されます。
それぞれの選択から2^990通りが生じ、さらに別の1通りを加えて、
2^990+1個
となります。
ここで学びたいのは、990という指数を暗記することではありません。
関数方程式で複数の変数があるとき、まず0や1などの特殊値を代入し、関数の一部を固定してから一般の場合へ戻るという順番です。
第9問の答えは17/3|既知の長さから相似を探す
第9問では、円に内接する四角形ABCDについて、
AB=7、BC=18、BE=5、EF=3
などが与えられています。
求める長さの答えは、
17/3
です。
まず、
BC=18
BE=5
なので、
CE=13
と分かります。
次にDEが∠CDAの二等分線であること、ABCDが同一円周上にあること、さらに与えられた角の等式を使います。
円周角と角の二等分線を組み合わせると、対応する角が等しい三角形を見つけることができます。
そこから相似比を作り、長さの条件を代入すると、
DE=26/3
が得られます。
FはDE上にあり、
EF=3
なので、
DF=DE-EF
=26/3-3
=17/3
です。
この問題では、計算の難しさよりも、複数の角条件から相似を見つけるまでが勝負です。
幾何問題で線が多くなったときほど、「分かっている長さ」と「等しい角」を別々に整理してから、それらが同時に登場する三角形を探すと見通しがよくなります。
第10問の答えは3・2^100・C(198,100)通り|1万マスを少数の選択へ圧縮する
第10問は、100×100の各マスへJ、M、Oのいずれかを書き込む配置問題です。
すべての2×2部分が定められた「良いブロック」となり、辺を共有する隣接マスで文字が異なる組がちょうど10000組になる配置を数えます。
答えは、
3・2^100・C(198,100)通り
です。
100×100ですからマスは1万個ありますが、1万個を独立に決める問題ではありません。
最初に見るべきなのは、すべての2×2ブロックへ共通して課された局所条件です。
ある2×2の文字が決まると、その右隣や下隣の2×2とマスを共有するため、次に置ける文字が制限されます。
この伝播を追うと、盤面全体は少数の「変化の仕方」で表せる構造へ縮みます。
数え上げは大きく、
- 基準となる文字を選ぶ3通り
- 100個の段階で残る二者択一による2^100通り
- 横方向・縦方向に現れる変化の順序を選ぶC(198,100)通り
という3種類の選択へ整理されます。
そのため全体は、
3×2^100×C(198,100)
通りです。
ここでC(198,100)が現れる点が興味深いところです。
盤面の1万マスを直接数えた結果ではなく、局所条件を最後まで押し広げた結果、問題全体が「198回のうち100回をどこで選ぶか」という組合せへ圧縮されています。
私は第4問と第10問には共通した美しさがあると感じます。
第4問では3125個の石が3^5という逆算へ、第10問では1万マスが二項係数と少数の選択へ縮まりました。大きな対象をそのまま数えず、自由に選べる部分だけを見抜くことが重要です。
第11問の答えは102050|三角形条件を3本の不等式へ直す
第11問では、正の整数に対して正の整数値を取る関数fについて、
f(34)=2024
が与えられています。
さらに任意の正の整数a,b,cに対して、
a+f(b)
b+f(c)
c+f(a)
を3辺とする三角形が存在することが条件です。
求めるのは、
f(100)+f(101)+……+f(199)
の最小値で、答えは、
102050
です。
まず「三角形が存在する」を数式へ翻訳します。
3辺をx、y、zとすれば、
x+y>z
y+z>x
z+x>y
です。
したがって、
a+f(b)+b+f(c)>c+f(a)
など、巡回させた3種類の不等式がすべてのa,b,cについて成立します。
ここでf(34)=2024を利用します。
a、b、cの一つを34に固定し、残りへ100~199の整数を入れることで、各f(n)に必要な下限を引き出せます。
重要なのは、f(100)からf(199)を一つずつ独立に小さくすることはできない点です。
三角形条件はすべてのa,b,cについて成立するので、あるf(n)を小さくすると、別の組で不等式が破れる可能性があります。
そこで、
1. 三角形成立条件を不等式化する
2. f(34)=2024を代入して各値を制限する
3. 100~199について得られる下限をまとめる
4. その下限を同時に達成できる場合を確認する
という順番で最小値を決めます。
その結果、
f(100)+f(101)+…+f(199)=102050
が最小となります。
この問題は見た目こそ幾何的ですが、図を描く問題ではありません。
「三角形」という言葉を見た瞬間に、3辺の成立条件という代数へ置き換えられるかどうかが入口です。
第12問の答えは2100^210/(2^164・3^30)個|指数を正確に読む
第12問は、2024年予選の最後に置かれた整数・合同式の問題です。
0以上2099以下の整数からなる組を考え、別の整数列との合同関係や、添字の差と2100が互いに素になる条件を使って、条件を満たす組の個数を数えます。
公式解答は、
2100^210/(2^164・3^30)個
です。
ここは数字を正確に押さえておきたいところです。
分子は2100^210であり、2100^2100ではありません。
また分母は、
2^164・3^30
であり、3^330ではありません。
問題を考える入口は、2100の素因数分解です。
2100=2²×3×5²×7
となります。
したがってmod 2100の合同条件を一つの塊として扱うのではなく、
- mod 4
- mod 3
- mod 25
- mod 7
の条件へ分けて調べることができます。
次に、各素因数側で条件を満たすために、元の変数の自由度がどれだけ失われるかを数えます。
2に関係する条件を整理した結果が分母の2^164に、3に関係する条件を整理した結果が3^30に対応します。
一方、5と7については同じ形の減少が残らないため、最終的な補正因子には2と3だけが現れます。
そして法4、3、25、7で得た条件を再び組み合わせる際には、中国剰余定理の考え方が使えます。
こうして全体の自由な選択を数え直すと、
2100^210/(2^164・3^30)
個になります。
第12問のポイントは、巨大な指数を力ずくで扱うことではありません。
2100を素因数分解し、法ごとに問題を分け、各部分で失われる自由度を数えてから戻すことです。
難しい問題ほど、一つの大きな対象を「小さな独立した問題」に分けられないか考える。その姿勢が、この最終問題では特にはっきり表れています。
数学オリンピック2024予選の難易度は?Aランク6点から分かること
2024年JMO予選の難易度を見るうえで、公式の得点分布は重要な手掛かりです。
上位得点は次のようになりました。
- 12点:0人
- 11点:0人
- 10点:2人
- 9点:8人
- 8点:14人
- 7点:37人
- 6点:76人
6点以上を合計すると、
2+8+14+37+76=137人
です。
この137人がAランクとなり、本選受験資格を獲得しました。
一方、5点は291人でした。
つまり2024年予選では、5点と6点のわずか1問が、本選進出という意味では非常に大きな差になったことが分かります。
前年の8点から2024年は6点へ下がった
第33回JMO予選では、Aランクが8点以上でした。
8点以上は147人です。
これに対し、第34回JMO予選ではAランクが6点以上で137人となりました。
数字だけなら、
8点→6点
と2点下がっています。
ただし、これだけで「2024年は前年より2問分難しかった」と断定することはできません。
Aランクの基準には受験者全体の成績や選抜人数も関係するため、通過点だけを単純比較するのは慎重であるべきです。
それでも2024年は12点と11点が0人、10点もわずか2人でした。
したがって、少なくとも上位層であっても高得点を積み上げることが難しかった問題セットだったとは読み取れます。
私は2024年の難しさを、「最初から全部難しい」というより、前半の得点可能な問題から後半へ進むにつれて、次の1点を取るための要求が急に高くなる構成だったと見ています。
6点通過だからこそ「前半の1点」が重かった
本選ラインが6点ですから、第1~6問をすべて正解すれば計算上はAランクに届きます。
もちろん第6問までを全部取ること自体、決して簡単ではありません。
しかし本番戦略としては、第10~12問に長時間を費やすより、第1~5問の取りこぼしを確認する方が価値の高い場面もあったでしょう。
たとえば第1問を計算ミスで落とし、その後第12問へ30分使って正解できなかったなら、その30分の一部を第1問の見直しへ回した方が結果につながった可能性があります。
JMO予選では、
解ける力と、どの問題へ時間を使うか判断する力
の両方が必要です。
2024年の6点というAランク基準は、その重要性を非常に分かりやすく示しています。
JMO2024予選から何を学ぶ?12問を貫く3つの特徴
特徴1|難問ほど「別の言葉」に言い換えている
2024年の12問を並べると、分野はばらばらに見えます。
しかし解法の入口には共通した癖があります。
第1問では階乗を因数分解へ変えます。
第2問ではnの条件を、2つの数の差2058という桁問題へ変えます。
第3問では接する円を方べきによる積へ、第4問では「必ず黒」を「白を残す最低条件」へ変えました。
第5問は床関数を合同式へ、第7問は平方数をmod p²へ、第11問は三角形を不等式へ変えています。
第12問も同じです。
mod 2100という大きな条件を、mod 4、3、25、7へ分解します。
私は、この翻訳する力こそ2024年予選から最も学びたい部分だと考えます。
数学オリンピックでは、知識を持っていても、問題文と自分の知識がつながらなければ使えません。
「これは何の問題だろう」と考えるだけでなく、
「この条件を、もっと扱いやすい形で言い換えられないか」
と自分に問いかけることが大切です。
特徴2|2024という数字が複数の役割で使われている
JMO2024予選では、大会年の2024が何度も現れます。
第2問ではn+2024。
第7問ではa≦2024。
第8問ではf(0)からf(2024)まで。
第11問ではf(34)=2024です。
興味深いのは、同じ2024でも役割が異なることです。
第2問では2058という差を作り、桁問題の構造に直接関係します。
第7問では候補を有限個へ制限する上限となり、第8問では数える関数値の範囲、第11問では関数の基準値として働きます。
単に「2024年だから2024を入れた」というだけではなく、問題の仕組みに自然に組み込まれているところに作問の面白さがあります。
特徴3|過去問は番号順だけでなく「発想別」に復習できる
これからJMOを目指す方が2024年予選を使うなら、私は必ずしも第1問から第12問まで番号順に復習しなくてもよいと考えています。
初心者なら、まず前半から、
第1問「くくる」
第2問「置き換える」
第4問「逆算する」
第5問「合同式へ翻訳する」
という4種類の発想を比べてみるとよいでしょう。
次に第3問で方べき、第6問で相似を含む複数の幾何条件へ進みます。
その後、
第7問「平方数→合同式」
第8問「特殊値を代入」
第10問「局所条件→全体構造」
第11問「文章条件→不等式」
第12問「大きな法→素因数ごとに分解」
と進めれば、後半の難問も「何をすればよいか分からない問題」ではなく、発想の種類ごとに整理できます。
年齢を重ねてからの学び直しでも同じですが、難しいものを一度に覚える必要はありません。
一問につき「この問題では何を言い換えたのか」を一つだけ持ち帰る。それを積み重ねる方が、私は長く残る学びになると思います。
筆者の考察|2024年予選は「6問をどう作るか」で見ると価値が変わる
筆者として2024年予選で特に注目したいのは、12問完答ではなく、Aランクに必要だった6点を自分ならどう組み立てるかという視点です。
本番では、第1~6問を順番にすべて取らなければならないわけではありません。
第6問の幾何が苦手でも、第7問の整数問題で合同式の入口が見えれば、そこで1点を補える可能性があります。
反対に第8問以降の高度な問題を考えられても、第1問や第2問のような比較的方針を立てやすい問題を計算ミスで落とせば、本選ラインから遠ざかります。
そのため過去問演習では、単に正解・不正解を記録するだけでは少し惜しいと思います。
私は、次の3種類へ分けて記録する方法をすすめたいところです。
- 15分以内に方針まで立った問題
- 方針は合っていたが、計算や条件確認で落とした問題
- 時間をかけても入口が見えなかった問題
この分類をすると、「数学力が足りない」という曖昧な反省から抜け出せます。
計算ミスなら確認方法を変える。
方針が遅いなら典型的な変換を復習する。
入口が見えないなら、その問題だけ解答を読んで「最初の一手」を覚える。
改善点が具体的になります。
2024年予選で特に印象的なのは、難問ほど必ずしも長大な計算を要求していないことです。
第8問なら最初にm=0、n=0。
第11問なら「三角形が存在する」を三角不等式へ。
第12問なら2100=2²×3×5²×7。
入口そのものは短いのです。
ただし、その短い入口を自力で選べるかどうかが難しい。
私はここに、数学オリンピックの学びの面白さがあると感じます。
単なる計算競争ではなく、問題を見たときに「違う角度から見れば簡単になるのではないか」と考える練習になるからです。
2024年予選はその意味で、12種類の計算問題というより、12種類の見方を問うセットとして復習すると価値が高まります。
まとめ|数学オリンピック2024予選はAランク6点、鍵は問題の翻訳
数学オリンピック2024予選は、2024年1月8日に実施された第34回JMO予選で、3時間・全12問・各1点・答えのみを記入する形式でした。
受験者4611人のうち、Aランクとなる6点以上を獲得した137人が本選受験資格を得ています。12点と11点は0人で、最高得点は10点、2人でした。
全12問の答えを見ると、第1問の122/11から、第8問の2^990+1個、第10問の3・2^100・C(198,100)通り、第11問の102050、第12問の2100^210/(2^164・3^30)個まで、扱う分野も規模も大きく異なります。
それでも解法の入口には共通点があります。
階乗を因数分解へ、桁条件を差へ、円を方べきへ、「必ず」を逆算へ、床関数を合同式へ、平方数をmod p²へ、三角形を不等式へ、mod 2100を素因数ごとの法へ変えることです。
過去問として取り組むときは、答えだけを覚えるのではなく、「この問題は何を何へ言い換えたのか」を一問ずつ言葉にしてみてください。
Aランクが6点だった2024年予選だからこそ、難しい1問へ挑戦する力と同じくらい、取れる問題を確実に得点へ変える力の大切さも見えてきます。
よくある質問
数学オリンピック2024予選は何問ありましたか?
12問です。
試験時間は3時間、各問1点の12点満点で、詳しい証明を書くのではなく答えを記入する予選形式でした。
2024年JMO予選は何点で本選へ進めましたか?
Aランクの6点以上が本選受験資格に対応しました。
受験者4611人のうち、6点以上は137人です。一方で5点は291人だったため、わずか1問の差が大きな境目となりました。
数学オリンピック2024予選で最も難しい問題は何番でしたか?
問題別の公式正答率が示されていないため、特定の1問を「最難関」と断定することはできません。
ただし第10~12問は、局所条件から巨大な盤面全体を数える発想、三角形条件の不等式化、mod 2100を素因数ごとに分解する数論的整理が必要です。12点と11点が0人、10点も2人だった得点分布からも、後半まで正解を積み増すことが難しい予選だったことは読み取れます。
執筆:天水健太郎


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