数学オリンピック2023予選は全12問・3時間で実施され、公式の予選合格ラインは8点、Aランクは147人でした。数学オリンピック財団+1
2023年1月9日に行われた第33回日本数学オリンピック(JMO)予選では、整数・幾何・組合せ・関数など幅広い問題が出題されました。特に第9問、第11問、第12問は、計算量よりも「問題を別の形に読み替える力」が問われる印象的な問題です。
数学オリンピック2023予選問題では何があった?
2023年のJMO予選は、第33回日本数学オリンピック予選として2023年1月9日に実施されました。
数学オリンピック財団の公式問題によると、試験時間は3時間、問題数は12問です。各問1点の12点満点で、予選では証明を書くのではなく、答えだけを解答用紙に記入する方式でした。数学オリンピック財団
そして2023年1月17日、数学オリンピック財団が本選受験有資格者を発表しています。数学オリンピック財団
ここで、現在の記事にあった重要な情報を一つ訂正しておかなければなりません。
元になった2023年1月18日の塾長日記では「通過ラインは7問正解だったようです」と振り返られていました。ホームページ作成サービス「グーペ」
しかし、数学オリンピック財団の公式得点分布を見ると、Aランク、つまり予選合格者は8点以上です。7点はBランクでした。
公式結果は次のようになっています。
区分 得点 人数
Aランク 12〜8点 147人
Bランク 7〜4点 1,863人
Cランク 3〜0点 2,479人
参加者 ― 4,489人
応募者 ― 4,980人
本選受験有資格者は予選免除者を含め149人でした。したがって、2023年JMO予選について検索する際は、「7点が通過点」ではなく「8点以上がAランクの予選合格」と理解するのが正確です。数学オリンピック財団+1
数学の記事では、数字が一つ違うだけで結論が変わります。
個人の振り返り記事には、その人が問題と格闘した臨場感があります。一方、通過点や公式解答については、やはり数学オリンピック財団の資料を基準に確認することが大切です。
数学オリンピック2023予選問題の全12問の答えと出題分野は?
2023年JMO予選を全体として振り返るなら、第11問と第12問だけではなく、12問を一度横に並べてみることが役立ちます。
公式解答用紙と問題文をもとに、主な分野と着眼点を私なりに整理しました。分野と「一手」の欄は公式分類ではなく、学習するときに何を意識すればよいかという筆者の整理です。
問題 公式の答え 主な分野 学習時に注目したい一手
第1問 90 整数・代数 平方数になる2条件を式に直す
第2問 22 組合せ・数え上げ 数字2と3の対称性を見る
第3問 7/9 幾何 60度から相似関係を探す
第4問 100/495001 代数 特殊な演算を通常の式へ変換する
第5問 360 整数・数列 等差数列と合同条件を結びつける
第6問 222 幾何 正六角形と周囲の面積関係を整理する
第7問 82、167、1034 数論 約数・互いに素という形へ条件を翻訳する
第8問 1920通り 組合せ・グラフ 最大値Mを先に決めてから数える
第9問 2021×2^2021個 組合せ 式を数直線上の移動距離に読み替える
第10問 78° 幾何 複数の角条件から補助図形を作る
第11問 2^15−1通り ゲーム・数論 素数と倍数の関係に注目する
第12問 2022C1011通り 関数・組合せ 関数の構造を最後に数え上げへ変える
※答えは数学オリンピック財団の公式解答用紙に基づいています。数学オリンピック財団
こうして一覧にすると、2023年予選が単一分野の知識だけでは突破しにくいことがよく分かります。
数学オリンピック財団はJMOの主な出題分野として、代数・組合せ論・幾何・数論を挙げています。2023年予選も、まさにそれらを横断する構成でした。数学オリンピック財団
たとえば第1問は「10を足しても10を掛けても平方数」という整数条件、第3問は正三角形の幾何、第5問は等差数列と整数条件、第8問は図をグラフとして見る組合せ問題です。
後半になると分野の境目がさらに曖昧になります。
第11問は整数の素数・倍数関係を利用するゲーム、第12問は関数の問題として始まりながら、最後には組合せとして関数の個数を数えます。
私は、この「何の分野の問題か」が途中で変わって見えるところに、2023年予選の面白さがあると感じます。
第9問と第11問はなぜ発想力が必要だった?
元になった振り返り記事では、特に苦戦した問題として第9問と第12問が挙げられていました。一方、第11問については、着眼点をつかむと「案外すんなり」進んだとされています。ホームページ作成サービス「グーペ」
まず第9問を見てみましょう。
第9問では、1から2023までを一度ずつ並べた数列について、
p1+|p2−p1|+…+|p2023−p2022|+p2023=4048
となる並べ方の個数を求めます。数学オリンピック財団
式だけを見ると、2023個もの数字を扱う巨大な場合分けに見えます。
ところが、p1を「0からp1まで進む距離」、最後のp2023を「p2023から0へ戻る距離」と考えると、式全体を数直線上を0から出発し、1〜2023を訪れて再び0へ戻る総移動距離と読むことができます。
2023まで行って戻るだけでも、最短距離は
2023×2=4046
です。
条件は4048ですから、最短よりわずか2だけ長い道順を数える問題へ姿を変えます。
この読み替えを利用した解説例では、最終的に
2×2021×2^2020
と数えており、これは公式解答の
2021×2^2021
と同じ値です。Mathlog+1
ここで重要なのは4046という数字そのものではありません。
2023個の並べ替えを直接調べるのではなく、絶対値の和を「移動距離」と翻訳した瞬間に問題の規模が縮むことです。
これこそ競技数学で覚えておきたい発想です。
一方、第11問はAさんとBさんが2から50までの整数を黒板から消していくゲームです。
直前の相手が消した数と互いに素になる数は消せない、という条件があり、Bさんがどのように動いてもAさんが勝てる集合Sの個数を求めます。公式解答は2^15−1通りです。数学オリンピック財団+1
元記事では、この問題について「何手も先まで考える必要はなく、最初のBの回で決着がつく」「素数とその倍数を消す戦略」に気づくことが鍵だったと振り返られています。ホームページ作成サービス「グーペ」
2から50までには15個の素数があります。
そのため公式解答の2^15−1は、15個から作る空でない部分集合の個数と同じ形です。
私はここに、第11問を読む大きな手掛かりがあると考えます。
ゲーム問題を見ると、つい「BがこうしたらAはこうする、その次は……」と手順を延々追いたくなります。
しかし実際には、すべての手を追うより、どの数同士が互いに素でなく、どの素数がその関係を支配しているかを見るほうが本質に近づけます。
第9問では「並べ替え」を「移動距離」へ、第11問では「ゲームの手順」を「素数と倍数の構造」へ変換する。
表面上は全く違う2問ですが、解くときに行っていることはよく似ています。
第12問の答えは2022C1011|2022H1011ではない
2023年JMO予選で、accuracyの面から特に注意したいのが第12問です。
この問題では、1以上2023以下の整数上で定義される、値も1以上2023以下の整数となる関数からなる集合Aを考えます。
各関数はx<yならf(x)≧f(y)となる非増加関数で、さらにAに属する任意のf、gについて所定の合成関係を満たします。その条件下で、集合Aの要素数の最大値を求める問題です。数学オリンピック財団
公式解答は明確です。
2022C1011通り
となっています。数学オリンピック財団
元になった振り返り記事では、不動点の存在や、関数間で共通する構造を見いだし、集合Aの要素数を最大化するときに1012という数が現れ、そこから重複組合せへ進むまでに時間がかかったと説明されています。ホームページ作成サービス「グーペ」
この「関数を調べていたはずなのに、最後には組合せを数えている」という転換が第12問の大きな特徴です。
ただし、元記事には記号について修正すべき点があります。
そこでは「2022C1011」と「2022H1011」が同じ値だとされていますが、通常使われる重複組合せの記法では
nHr=(n+r−1)Cr
です。
したがって、
2022H1011=3032C1011
となり、2022C1011とは一致しません。
2022C1011を重複組合せHで書き換えるのであれば、
1012H1011=2022C1011
です。
ここは単なる表記の細かな違いではありません。
組合せでは、CとHを取り違えると数そのものが大きく変わります。数学の記事として公開するなら、公式解答の2022C1011を基準にし、Hで書く場合は1012H1011とするのが正確です。
第12問から学びたいのは、単に公式を覚えることではありません。
まず関数の条件を調べ、共通する構造を見つけ、それを「何通り作れるか」という数え上げへ翻訳する。
つまり、
関数の構造理解 → 自由に選べる部分の特定 → 組合せによる数え上げ
という三段階です。
私は、ここが2023年予選の中でも特に学習価値の高い部分だと考えています。
数学オリンピック2023予選の難易度はどう評価できる?
2023年予選を「難しかった」「易しかった」の一言で片づけるのは適切ではありません。
実際、公式のAランク基準を前後の年度と比べると興味深い違いがあります。
第32回の2022年はAランク相当の本選受験有資格ラインが6点、第33回の2023年は8点、第34回の2024年は6点でした。数学オリンピック財団
つまり、少なくとも合格点だけを見れば2023年は前後年度より高かったことになります。
これは、元記事にあった「第9問や第12問でかなり悩んだ」という感想と矛盾するわけではありません。
難しい後半問題が存在していても、前半から中盤で得点できる問題が多ければ、Aランクの境界は高くなり得るからです。
実際、別の2023年予選参加者による振り返りでは、個人的な難度感として「1〜5を簡単枠、6〜9を通るか落ちるかの境目、10〜12を難問枠」と評価していました。もちろんこれは公式評価ではなく、一受験者の感想です。Mathlog
この見方は、公式の8点という結果と合わせると興味深く感じます。
仮に前半5問を確実に取れたとしても、それだけではAランクに届きません。
さらに第6〜9問あたりから複数問を積み上げる必要があります。
その意味で2023年予選は、最後の超難問だけに固執するより、中盤の問題をどれだけ拾えるかが結果を左右しやすい構成だったと見ることができます。
もちろん、翌年以降も8点を目標にすればよいという意味ではありません。
JMOのAランク基準は年度によって変わります。
だから過去問演習では、「何点なら受かるか」だけでなく、3時間のうちに自分がどの8問、7問、6問を取りにいけるかという問題選択の練習が重要になります。
2023年予選から学べる攻略法とは?
私が2023年JMO予選を改めて見て感じるのは、単に「難問にはひらめきが必要」という話ではありません。
もう少し具体的には、問題文の表現を、そのまま扱わない技術が重要です。
第2問なら「良い数」と「悪い数」を一つずつ数えるのではなく、数字2と3を入れ替えたときの対称性を考えます。
第5問なら7個のaを個別に探すのではなく、等差数列という条件を合同式へ変換し、1から7までの最小公倍数420という共通構造へまとめます。
第8問なら15個の円への0、1、2の書き込みを単なる場合分けとして見るのではなく、円を頂点、線分を辺とみなすグラフの問題として読む視点があります。実際、解説例でも奇数長閉路などグラフ的な考察から最大値M=17へ進んでいます。Mathlog
第9問なら並べ替えを移動距離へ変えます。
第11問ならゲームの長い手順を素数と倍数へ変えます。
第12問なら関数を調べる問題を、最後には組合せを数える問題へ変えます。
つまり2023年予選には、繰り返し現れる共通した学習テーマがあります。
「大量に見えるものを、一つの構造にまとめられないか」と考えることです。
これは「ひらめきを待つ」という意味ではありません。
私自身、年齢を重ねてから学び直す中で感じるのですが、発想は何もないところから突然降ってくるものばかりではありません。
「対称性はないか」「最小値なら端から考えられないか」「絶対値は距離と見られないか」「整数なら約数や素数へ分解できないか」「図をグラフと見られないか」と問いを持って眺めることで、発想の入口は少しずつ増やせます。
過去問の復習でも、模範解答を写すだけでは惜しいところです。
自分が止まった地点と、解答の中で問題の見え方が変わった地点を分けて記録してみてください。
第9問なら「4046が最小だと分かるところ」、第11問なら「素数と倍数を見るところ」、第12問なら「関数の構造から数え上げへ移るところ」です。
こうした発想の転換点を言葉で残す復習は、完成した解答を丸暗記するよりも、別の問題へ持ち運びやすいと私は考えています。
数学オリンピック2023予選問題を今振り返る意味
2023年予選には、公式解答だけを眺めていると見落としやすい特徴があります。
たとえば第8問の答えは1920通り、第9問は2021×2^2021個、第11問は2^15−1通り、第12問は2022C1011通りです。数学オリンピック財団
答えだけを見ると、かなり大きな数字が並びます。
しかし、問題を解く途中で本当に重いのは大きな数字の計算ではありません。
「なぜその数え方でよいのか」を見つける部分です。
元記事の執筆者も、第12問について途中の構造までは見えていたものの、重複組合せによる数え上げへつながるまでに長く時間がかかったと振り返っています。ホームページ作成サービス「グーペ」
ここには、競技数学を学ぶ人にとって大切な教訓があります。
途中まで分かっているのに答えへ届かないと、「何もできなかった」と思いがちです。
けれども実際には、「不動点までは見えた」「最小値4046までは分かった」「M=17までは出せた」といった途中経過そのものに価値があります。
次に同じ種類の問題へ出会ったとき、ゼロから始める必要がなくなるからです。
一方、本番は3時間です。
学習中には一問を長く考える時間も大切ですが、本番では解けない問題から離れる判断も必要になります。
私はこの二つを混ぜないことが大切だと考えています。
普段の学習では粘る。
模擬的に3時間で解くときには、数分から十数分考えて道筋が立たなければ別の問題へ移る。
そして終了後に、飛ばした問題を時間無制限で考え直します。
2023年の公式結果では8点以上がAランクでした。
全12問を完答することだけが目標ではなく、自分が取れる8点をどう組み立てるかという視点も予選では欠かせません。
まとめ|数学オリンピック2023予選は8点が合格ライン
2023年1月9日に実施された第33回日本数学オリンピック予選は、3時間・全12問・各1点で行われました。応募者4,980人、参加者4,489人で、公式結果では8点以上の147人がAランクとなりました。数学オリンピック財団+1
したがって、元の振り返り記事にあった「7問正解が通過ライン」という記述は、公式結果に照らすと訂正が必要です。7点はBランク、予選合格ラインは8点です。
全12問の公式解答は、第1問から順に90、22、7/9、100/495001、360、222、82・167・1034、1920通り、2021×2^2021個、78度、2^15−1通り、2022C1011通りでした。数学オリンピック財団
また第12問について、標準的な重複組合せの記号を使うなら、2022C1011と等しいのは1012H1011であり、2022H1011ではありません。
2023年予選を振り返って私が最も重要だと感じるのは、単に難しい公式をたくさん知ることではありません。
絶対値を距離へ、ゲームを素数へ、関数を組合せへと読み替えるように、目の前の複雑な条件を別の分かりやすい構造へ翻訳する力です。
過去問を解くときは、正解できたかだけで終わらせず、「どの一手で問題の見え方が変わったのか」を一つずつ残してみてください。
その小さな発見の蓄積が、次の一問を前にしたときの確かな足場になります。
よくある質問
数学オリンピック2023予選の通過ラインは7点ですか、8点ですか?
公式には8点です。
数学オリンピック財団の得点分布では、12〜8点の147人がAランク、7〜4点がBランクとなっています。本選受験有資格者は予選免除者を含め149人です。数学オリンピック財団+1
数学オリンピック2023予選で特に難しかったのは何問ですか?
公式には問題別正答率が示されていないため、「最難関は第何問」と断定することはできません。
元記事の執筆者は第9問と第12問に特に苦戦したと振り返り、別の参加者は第10〜12問を個人的な「難問枠」と評価しています。ホームページ作成サービス「グーペ」+1
第12問の2022C1011は重複組合せでどう書きますか?
標準的な記法nHr=(n+r−1)Crを使えば、
2022C1011=1012H1011
です。
元記事にあった2022H1011ではありません。公式解答そのものは2022C1011通りです。数学オリンピック財団
天水健太郎(あまみずけんたろう)
元行政職員・生涯学習コラムニスト


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