2026年JMO予選は2025年11月16日実施で、前半6問の核心は条件を解きやすい形へ変換することです。
公式解答は順に、(1,36,3)、91、11√6/24、729、(4,12,5)・(17,12,5)、√41-3です。数学オリンピック財団
この記事では、公益財団法人 数学オリンピック財団の公式問題・解答を一次資料として確認し、公式資料に載っている「答え」と、筆者が検算して再構成した「途中の考え方」を区別しながら、第1問から第6問までを解説します。
2026年JMO予選とは?前半6問の答えと解法の入口
「2026年 第36回日本数学オリンピック(JMO)」の予選は、2025年11月16日に実施されました。
公式問題冊子によると、問題は12問、試験時間は3時間、各問1点の12点満点で、解答用紙には答のみを記入する形式です。分度器、電卓、パソコン、携帯電話、ノート、参考書なども使用できません。数学オリンピック財団+1
大会名に「2026年」とあるのに予選日が2025年なのは誤記ではありません。数学オリンピック財団の過去問題一覧でも、第36回は「2026年」の大会として整理されています。数学オリンピック財団
検索するときは、「2026年JMO予選=2025年11月16日に行われた第36回JMO予選」と覚えておくと迷いにくいでしょう。
まず、前半6問を一覧にします。
問題 主な題材 答え 最初に見るポイント
第1問 整数・べき乗 (1,36,3) 20乗の大きさで候補を切る
第2問 床関数・平方根 91 √2026-45を正確に挟む
第3問 円・面積比 11√6/24 面積比から辺の比を出す
第4問 長方形・最大値 729 図形を二つの整数集合へ変える
第5問 整数・合同式 (4,12,5)、(17,12,5) 共通の約数からmodへ移す
第6問 平行四辺形 √41-3 中点から点対称な点を作る
公式PDFの解答用紙で確認できる前半6問の答えは、この表のとおりです。数学オリンピック財団
一方、公式PDFには詳しい途中解説までは掲載されていません。そのため、以下では公式の問題条件と公式解答を基準に、途中の論理を一段ずつ検算して再構成しています。
公式問題冊子には、問題の著作権が数学オリンピック財団に帰属することも明記されています。本記事では問題文を全文転載せず、解説に必要な条件だけを要約して扱います。数学オリンピック財団
予選結果から分かる「全部解かなければならない試験ではない」という事実
第36回JMO予選の得点分布では、得点が集計された参加者は3992人でした。
Aランクとなった7点以上は170人で、本選受験資格者は予選免除者を含め173人です。12点満点は0人、11点と10点はそれぞれ1人でした。数学オリンピック財団
この結果を見ると、少なくとも第36回では「12問を全部解かなければ本選へ進めない」という試験ではなかったことが分かります。
もちろん、通過点は年度によって変わります。しかし、3時間12問という形式では、難問一つに固執するよりも、解ける問題を見抜いて確実に点へ変える判断も重要になります。
私は、この点を過去問学習でも意識したほうがよいと考えています。
数学オリンピック予選問題を解説|第1問から第3問
第1問|答えは(1,36,3)。20乗を見たら範囲から切る
答え:(a,b,c)=(1,36,3)。最初の一手は、a²⁰の大きさを調べることです。
第1問では、正の整数a、b、cが
a²⁰+b²+c⁶=2026
を満たす場合を考えます。問題条件と公式解答は数学オリンピック財団の公式資料で確認できます。数学オリンピック財団+1
未知数が三つあるので、すぐに場合分けを始めたくなります。
しかし、この問題で最も目立つのは20乗です。
aが2以上なら、
2²⁰=1,048,576
となり、すでに2026を大きく超えます。
すべて正の整数なので、ほかの項を負にして帳尻を合わせることもできません。したがって、
a=1
しかありません。
すると、
b²+c⁶=2025
となります。
次にcを見ます。
cが4以上なら4⁶=4096ですから、これも2025を超えます。よって、
c=1、2、3
だけを確認すれば十分です。
c=1なら、
b²=2024。
c=2なら、
b²=1961。
ここで、
44²=1936、45²=2025
なので、1961も2024も44²と45²の間にあり、平方数ではありません。
c=3なら、
b²=2025-729=1296=36²
となります。
よって、
(a,b,c)=(1,36,3)
だけが条件を満たします。
この問題で覚えておきたいのは36という数字ではありません。
大きな指数がある整数問題では、計算を始める前に「どこまで値を取れるか」を調べる。
これが第一の「変換」です。
三つの未知数を持つ方程式が、a=1と確定した瞬間に、急に小さな場合分けへ変わりました。
本番で私なら、この第1問には早めに着手します。20乗という目立つ条件があり、数分考えても入口が見えない問題とは性質が違うからです。
第2問|答えは91。「非常に小さい」ではなく不等式で決める
答え:91。ポイントは√2026-45を有理化し、90と91の境界を厳密に確定することです。
第2問では、正の整数nについて、
⌊√2026・n⌋
がnで割り切れなくなる最小のnを求めます。公式解答は91です。数学オリンピック財団+1
2026という数字を見ると、
2025=45²
が近くにあります。
そこで、
√2026=45+ε
と置きます。
ε=√2026-45は正の小さな数です。
ここで小数近似へ進まず、有理化します。
ε=√2026-45
=1/(√2026+45)
です。
45<√2026<46なので、
90<√2026+45<91。
正の数の逆数を取ると不等号の向きが逆になり、
1/91<ε<1/90
を得ます。
ここからn≦90を考えます。
0<nε<1
ですから、
⌊nε⌋=0。
したがって、
⌊√2026・n⌋
=⌊(45+ε)n⌋
=45n
となります。
これは当然nで割り切れます。
ではn=91ではどうでしょうか。
1/91<ε<1/90
の両辺を91倍すれば、
1<91ε<91/90<2
です。
したがって、
⌊91ε⌋=1。
よって、
⌊91√2026⌋
=45×91+1。
右辺を91で割ると余り1ですから、91では割り切れません。
n=90まではすべて割り切れ、n=91で初めて割り切れなくなるので、
最小値は91
です。
ここは数学的な文章を書くときに、とても大切な箇所です。
「εは非常に小さいから整数部分は1」と言うだけでは、厳密な証明にはなりません。
必要なのは、
1<91ε<2
を示すことです。
数学オリンピックでは、計算量の多さよりも、このように「どの不等式まで示せば結論が確定するか」を見抜く場面がしばしばあります。
第3問|答えは11√6/24。面積比の尺度をそろえて解く
答え:11√6/24。最初に面積比からAP:PCとAQ:QDを求め、その後で円の性質を使います。
第3問では、円周上にA、B、C、D、Eがこの順にあり、BEとACの交点をP、BEとADの交点をQとします。
さらにBP=PQ=QEで、三角形BCP、APQ、DEQの面積がそれぞれ2、9、3と与えられています。求めるのはAC/ADです。数学オリンピック財団
図形問題では、最初から円周角や方べきの定理を探したくなるかもしれません。
しかし、この問題ではまず面積2、9、3を使うほうが自然です。
三角形APQと三角形BCPを比べます。
Pでできる角は対頂角なので等しく、さらにPQ=PBです。
したがって面積比は、
9:2=AP:PC
となります。
ここで尺度を曖昧にしないため、
AP=9u、PC=2u
と置きます。
すると、
AC=11u。
同様に、三角形APQと三角形DEQを比べます。
Qでできる対頂角が等しく、PQ=QEなので、
9:3=AQ:QD=3:1。
そこで、
AQ=9v、QD=3v
と置きます。
よって、
AD=12v
です。
次に、円の中心をOとします。
ACの中点をS、ADの中点をTとしましょう。
円の中心から弦に下ろした垂線は弦を二等分するので、
AS=SC=11u/2。
PはAから9uの位置にありますから、
SP=9u-11u/2=7u/2
です。
したがって、
OA²-OP²
=AS²-SP²
=(11u/2)²-(7u/2)²
=18u²。
AD側では、
AT=TD=6v
で、AQ=9vですから、
TQ=3v。
よって、
OA²-OQ²
=AT²-TQ²
=36v²-9v²
=27v²。
ここでBP=PQ=QEという条件が効いてきます。
B、P、Q、Eは一直線上に等間隔で並ぶため、BEの中点はPQの中点でもあります。
円の中心Oから弦BEへ下ろした垂線はBEの中点を通ります。その点はPQの中点でもあるため、OはPQの垂直二等分線上にあります。
したがって、
OP=OQ
です。
よって、
18u²=27v²。
整理すると、
u²/v²=3/2。
求めたい比は、
AC/AD=11u/12v
なので、
AC/AD
=11/12×√(3/2)
=11√6/24
となります。
この問題で重要なのは、9:2や3:1をそのまま無名の長さとして扱わないことです。
AP=9u、PC=2u、AQ=9v、QD=3vと尺度を分けることで、「AC側の単位u」と「AD側の単位v」が違うことを明確にできます。
図形問題では、比を求めた直後に実際の長さと同一視してしまう誤りが起こりやすいものです。
私は、第1問・第2問より第3問のほうが一段難しいと考えます。
理由は計算が長いからではありません。面積比、弦の中点、PQの垂直二等分線という複数の構造を一つにつなぐ必要があるからです。
数学オリンピック予選問題を解説|第4問から第6問
第4問|答えは729。長方形を整数の集合へ翻訳する
答え:729。図形を描き続けるのではなく、縦幅と横幅を1~9の整数集合として考えます。
第4問では、整数の辺を持つ長方形を縦横の切れ目で分割します。
できる小長方形について、各辺が1以上9以下の整数であり、相異なる二つの小長方形が合同にならないという条件のもと、元の長方形の最大面積を求めます。公式解答は729です。数学オリンピック財団+1
縦方向の各区間の長さを、
x₁、x₂、……
横方向を、
y₁、y₂、……
とします。
すると、小長方形は辺の組
(xᵢ,yⱼ)
で表せます。
まず、x側には同じ数字を二度使えません。
もしx₁=x₂なら、同じyⱼと組み合わせた二つの小長方形が合同になるからです。
y側についても同じです。
したがって、x側もy側も、それぞれ1から9までの異なる整数からできた集合になります。
さらに、x側とy側で共通する数字が二種類以上あってはいけません。
たとえばaとbの二つが両方の集合に含まれていれば、
a×b
と
b×a
という二つの合同な小長方形ができるからです。
つまり、x側とy側の数字は、重複してよいとしても1種類までです。
1+2+……+9=45。
重複させるなら最大の9をもう一度使うのが全長を最も大きくできます。
したがって、
Σxᵢ+Σyⱼ≦45+9=54。
元の長方形の縦横を、
X=Σxᵢ、Y=Σyⱼ
とすると、
X+Y≦54
です。
積XYは、和が54のときX=Y=27で最大になるので、
XY≦27²=729。
ただし、最大値問題では「上限が729」と示すだけでは不十分です。
本当に729を作れる例が必要です。
たとえばx側を
{3,7,8,9}
とすると合計27。
y側を
{1,2,4,5,6,9}
とすると、こちらも合計27です。
両方に共通する数字は9だけなので、異なる二つの小長方形が縦横を入れ替えて合同になることもありません。
したがって27×27の長方形は実際に作れます。
よって最大面積は、
729
です。
この問題は「長方形の問題」として眺め続けるより、1から9までの数字を二つの箱へどう分けるかという問題へ翻訳した瞬間に見通しがよくなります。
数学オリンピックでは、出題分野の看板と実際の解法が一致するとは限りません。
図形問題の姿をしていても、解法の中心が組合せや不等式になることがあります。
第5問|答えは2組。共通の約数から13を強制する
答え:(4,12,5)と(17,12,5)。入口は「共通して割り切れる」を合同式へ置き換えることです。
第5問では1以上17以下の整数x、y、zについて、
xy+4、yz+5、zx+6、xyz+7
をすべて割り切る2以上の整数が存在する組を探します。数学オリンピック財団+1
共通の約数をdとします。
d≧2ですから、dには少なくとも一つ素因数pがあります。
pも四つの数をすべて割り切るので、
xy+4≡0
yz+5≡0
zx+6≡0
xyz+7≡0 (mod p)
です。
最初の式をz倍し、最後の式と比べます。
xyz+4z≡0
かつ
xyz≡-7
なので、
4z≡7 (mod p)。
同様に、
5x≡7、6y≡7 (mod p)
を得ます。
ここで5x≡7と6y≡7を掛けると、
30xy≡49 (mod p)。
一方、
xy≡-4
なので、30倍して、
30xy≡-120 (mod p)。
したがって、
49≡-120 (mod p)。
つまり、
169≡0 (mod p)
です。
169=13²なので、素数pは、
p=13
に限られます。
これで、最初は正体の分からなかった「共通の約数」が、13を必ず含まなければならないと分かりました。
mod 13で、
5x≡7、6y≡7、4z≡7
を解きます。
5の逆元は8なので、
x≡56≡4 (mod 13)。
6の逆元は11なので、
y≡77≡12 (mod 13)。
4の逆元は10なので、
z≡70≡5 (mod 13)。
1以上17以下という範囲では、
x=4または17、y=12、z=5。
したがって候補は、
(4,12,5)、(17,12,5)
の2組です。
最後に、本当に条件を満たすか確認します。
(4,12,5)では、
xy+4=52、yz+5=65、zx+6=26、xyz+7=247
で、すべて13の倍数です。
(17,12,5)では、
xy+4=208、yz+5=65、zx+6=91、xyz+7=1027
となり、こちらもすべて13で割り切れます。
したがって二つの候補はどちらも実際に条件を満たし、
答えは(4,12,5)、(17,12,5)
と確定します。
この問題で面白いのは、式を増やす目的です。
通常、式を掛け合わせると計算が複雑になりそうに見えます。
しかし今回は、z、x、yを掛けることで、むしろ共通して現れるxyzを消しています。
数学では、式変形は「計算するため」だけにあるのではありません。
邪魔なものを消し、構造だけを残すために式を変形する。
第5問は、その典型的な例です。
第6問|答えは√41-3。中点から点対称なGを作る
答え:√41-3。MがAEの中点であることを利用し、BをMについて点対称に移した点Gを作ります。
第6問は平行四辺形ABCDで、CD上にEを取り、AEの中点をMとします。
直線BMとADの交点をFとし、
CE=DF=3、MB=5、MC=4
のときABを求める問題です。公式解答は√41-3です。数学オリンピック財団+1
ここで補助点Gを作ります。
Mを中心としてBと点対称になる点をGとします。
するとMはBGの中点です。
もともとMはAEの中点でもありますから、四角形ABEGでは二本の対角線AEとBGが互いに二等分し合います。
したがってABEGは平行四辺形です。
よって、
AB∥EG、AB=EG。
もとのABCDも平行四辺形なので、
AB∥CD、AB=CD
です。
したがってEGとCDは平行です。
しかもEはCD上にあるため、EとGを通る直線はCDと一致し、Gは直線CD上にあります。
ここで位置関係も確認します。
Eは辺CDの内部にあり、CE=3です。
CD=AB=EG。
辺CD上で、
ED=CD-CE=AB-3。
一方、
EG=AB
なので、EからDまでよりEGのほうが3だけ長くなります。
したがってGはDを越えた外側にあり、
DG=3
です。
問題条件ではDF=3でしたから、
DG=DF=3。
よって三角形DFGは二等辺三角形です。
さらに、
DFはAD上、CB∥AD
なので、
DF∥CB。
D、G、Cは一直線上にあり、F、G、Bも一直線上です。
したがって、
三角形DFG∽三角形CBG。
DFとDGが等しいため、相似によって対応する辺も等しくなり、
CB=CG。
つまり三角形CBGも二等辺三角形です。
MはBGの中点でした。
二等辺三角形CBGで、頂点Cから底辺BGの中点Mへ引いた線は底辺に垂直です。
したがって、
CM⊥BG。
CM=4、MG=MB=5
なので、直角三角形CMGに三平方の定理を使えば、
CG²=4²+5²=41。
よって、
CG=√41。
C、D、Gはこの順に一直線上にあり、DG=3ですから、
CD=CG-DG
=√41-3。
平行四辺形よりAB=CDなので、
AB=√41-3
です。
第6問では、最後の計算は4²+5²だけです。
難しいのは計算ではなく、点Gをどのような理由で作るかにあります。
「補助線を引けば解ける」とだけ覚えても、初見の問題には使いにくいものです。
今回は、
MがAEの中点
→ BをMについて点対称にする
→ 二本の対角線が互いに二等分される平行四辺形を作る
という明確な理由があります。
私は、第6問のような図形問題では、補助点そのものを暗記するより、中点を見たら点対称を疑うという形で記憶したほうが応用しやすいと考えています。
2026年JMO前半6問はどの順に解く?過去問学習の使い方
数学オリンピックの過去問を学ぶとき、私は「解答を最後まで覚える」より、最初の一手を言葉にして残す方法をおすすめします。
第36回前半6問なら、第1問は「巨大なべきで範囲を切る」、第2問は「整数に近い平方根との差を挟む」、第3問は「面積比を辺の比へ」、第4問は「図形を集合へ」、第5問は「共通約数をmodへ」、第6問は「中点から点対称へ」と整理できます。
この六つは、いわば「解法の札」です。
答えの91や729だけを覚えても、次の問題で数字が変われば使えません。
しかし、
「整数のすぐ上にある平方根なら差を有理化する」
「合同な図形を禁止する条件なら、数の重複として表せないか考える」
という札は、別の問題にも持っていけます。
本番ならどの問題から見るか
ここからは公式見解ではなく、筆者としての時間管理上の私見です。
私なら前半6問では、まず第1問と第2問を確認します。
どちらも問題文に強い手掛かりがあり、第1問は20乗、第2問は2025=45²という近い平方数に気づけば、比較的早く入口を作れるからです。
次に第4問を見ます。
長方形の図を描き続けるのではなく、1~9という数字の制限に目を移せれば、問題の骨格が見えます。
第5問は合同式に慣れていれば早く進む一方、慣れていなければ時間を使いやすい問題です。
第3問と第6問は、図から補助構造を発見する必要があるため、私は一度考えて入口が見えなければ保留し、ほかの問題を確認してから戻るでしょう。
3時間で12問ですから、前半一問に長時間固執するのは得策ではありません。
私自身なら、8~10分ほど考えても「何を変換すればよいか」が全く見えない場合はいったん印を付けて離れる、という使い方をします。
これは大会が示している標準時間ではなく、答えのみを記入する12問3時間形式を踏まえた、あくまで学習上・実戦上の一つの目安です。
本番は答えだけでも、練習では理由を書く
公式問題冊子では、予選は「答のみを解答用紙に記入する」形式です。数学オリンピック財団
しかし、練習まで答えだけで終えるのは惜しいと思います。
第2問なら、
「なぜ91で初めて整数部分が一つ増えるのか」。
第4問なら、
「なぜ54より大きくできないのか」と「なぜ729が実現できるのか」。
第5問なら、
「なぜ13以外の素数を考えなくてよいのか」。
第6問なら、
「なぜGがDの外側に来るのか」。
ここまで自分の言葉で説明できるか確かめます。
解答を見た直後には理解したように感じても、白紙のノートでもう一度説明しようとすると、論理の抜けが見つかることがあります。
数学の学び直しでは、この「説明できるか」の確認がとても役に立ちます。
考察|前半6問に共通するのは計算力より「変換力」
第36回JMO前半6問を並べてみると、私は一つの共通点がはっきり見えると感じます。
それは、与えられた姿のまま問題を解いていないことです。
第1問では三変数の方程式を、巨大な20乗によってa=1の問題へ変えました。
第2問では床関数を、√2026-45という小さな差の評価へ変えました。
第3問では円の問題を、まず二つの面積比の問題へ変えています。
第4問では長方形を、1~9の整数をどう二つの集合へ振り分けるかという問題へ変えました。
第5問では「共通して割り切れる」という文章を、合同式へ変えています。
第6問では平行四辺形の中点条件を、点対称による新しい平行四辺形へ変えました。
つまり、前半6問は「知っている公式を当てはめる競争」というより、問題を自分が扱える言葉へ翻訳する競争として見ることができます。
ここに、学校の定期試験とは少し違う数学オリンピックの魅力があります。
第3問と第6問が前4問と少し違って見える理由
私見では、第3問と第6問は、ともに「構造の発見」が解答時間を大きく左右する問題です。
第1問は20乗、第2問は45²、第4問は1~9という有限集合、第5問は「共通の約数」という、比較的目に見えやすい入口があります。
一方、第3問では「円だからこの定理」と一つ決めれば済むわけではありません。
面積比から辺の比を出し、円の中心から弦の中点へ進み、最後にOP=OQをつなぐ必要があります。
第6問も、CE=DF=3、MB=5、MC=4という数字だけを眺めていても進みません。
中点MからBの点対称Gを作り、二等辺三角形と相似、直角三角形を同じ図の中に呼び込んでいます。
この違いを意識しておくと、「図形問題だけ解けない」と落ち込む必要はなくなります。
計算技術とは別に、補助構造を発見する訓練が必要な問題だからです。
大人の学び直しでは「速さ」より再現性を見る
年齢を重ねて数学へ戻ると、昔より計算が遅くなった、公式がすぐ出てこないと感じることもあります。
しかし、第36回JMO前半6問を眺める限り、速い計算だけでは解決できない問題が少なくありません。
むしろ、
「なぜ20乗なのか」
「なぜ2026は2025の一つ上なのか」
「なぜBP、PQ、QEがすべて同じなのか」
「なぜCEとDFが同じ3なのか」
と、問題文の数字に理由を尋ねることが大切です。
出題者がわざわざ置いた条件には、多くの場合役割があります。
解けないときは、新しい公式を探す前に、
まだ使っていない条件はないか
と確認してみるとよいでしょう。
第6問のCE=DF=3などは、その好例です。
最初は離れた場所にある二つの長さですが、Gを作るとDG=CE=DFとなり、一つの二等辺三角形の中へ集まります。
私はここに、今回の前半6問から得られる大きな学びがあると考えています。
散らばった条件を、同じ式や同じ図形の中へ集め直す。
この視点は、整数でも図形でも使えます。
まとめ
2026年 第36回日本数学オリンピック予選は、2025年11月16日に行われ、3時間12問、各問1点、答のみを記入する形式でした。数学オリンピック財団
前半6問の公式解答は、
(1,36,3)、91、11√6/24、729、(4,12,5)と(17,12,5)、√41-3
です。数学オリンピック財団
しかし、過去問学習で残したいのは答えだけではありません。
第1問なら大小評価、第2問なら境界を挟む不等式、第3問なら面積比と尺度、第4問なら集合へのモデル化、第5問なら合同式、第6問なら中点から点対称という、答えに至る最初の変換です。
数学オリンピック予選問題に向き合うとき、「どの公式を使うか」だけでなく、
「この条件を、もっと扱いやすい数学の言葉へ変えられないか」
と考えてみてください。
一問ごとにその入口を言葉で残していけば、初めて見る問題に出会ったときにも、以前より落ち着いて手掛かりを探せるようになります。
よくある質問
2026年JMO予選はいつ行われましたか?
「2026年 第36回日本数学オリンピック」の予選は、2025年11月16日に実施されました。
問題冊子にも同日の日付が記されており、数学オリンピック財団の過去問題一覧では第36回を2026年大会として整理しています。数学オリンピック財団+1
2026年JMO予選は何問で、途中式を書く必要がありますか?
第36回JMO予選は12問、試験時間3時間、各問1点の12点満点です。
解答用紙には答のみを記入する形式で、途中式や証明を答案として提出する方式ではありません。数学オリンピック財団
ただし、学習時には途中の理由まで書いて確認したほうが、別の問題で解法を再現しやすくなります。
数学オリンピック予選の過去問はどこから始めるとよいですか?
初心者なら、まず1年分の前半問題から取り組み、正解したかどうかだけでなく「最初に何へ気づけばよかったか」を一言で記録する方法が取り組みやすいでしょう。
数学オリンピック財団では、JMOの予選・本選問題を年度別に公開しています。数学オリンピック財団
第36回なら、「大きな指数」「平方数との差」「面積比」「集合化」「合同式」「中点と点対称」という六つの入口を整理するだけでも、次の過去問を見る目が変わってきます。
執筆:天水健太郎(68歳・元行政職員・生涯学習コラムニスト)


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