弓道の弓についてオークションに数多く出品されています。私も興味があっていくつか拝見するのですが、残念なことに情報が足りなかったり、不適切な取り扱いがされていて、エントリーするのを控えたくなるような出品があるのです。出品者の方は、「弓道に不案内なので。」と言い訳をしていますが、ほんの少し工夫すれば、お互いに情報のやり取りがスムースになり、ひいては落札率も上がるのにと残念におもいます。本記事では弓道の経験者から見て出品者ができる対処方法をまとめてみました。
入札者から見たときに必要な情報
オークションに出品された弓は弓道を行う人間からは絶対に必要な情報があるのです。実際に現物しかなくても、触らなくてもなんとか情報を推測する方法があると思います。
弓の長さ(並寸、伸寸、四寸伸)
主な弓の長さは、並寸、伸寸、四寸伸でしょう。これは、弦を張っていない状態で、弓の全長を弓体に沿って長さを計るだけですから。メジャーだけあれば誰でも測ることができるのですが、なぜか情報提供されていないのです。
この長さが221㎝のものを並寸、227㎝のものを伸寸、233㎝のものを四寸伸としています。
実際は弓の個体差もありますので、このサイズぴったりとはいきませんが、自分で判定する自信がなければ、実際に計った長さを提示しておくだけで、入札者には良い参考となるのです。
弓の素材及び銘柄
弓が竹弓かグラス、カーボン弓かは弓を見れば一目瞭然です。グラスとカーボンの違いはそれなりに銘柄がわかっていないと難しいですが、竹弓との区別はつくはずですから必ず提示してほしいのです。
どうしても自信がなければ、弓体を大きく写した写真を提示すればわかってもらえるはずです。
また、ほとんどの弓には銘が記載されています。場所は弓の内竹の本弭の上あたりになります。左の写真のようです。これを示すことでどんな弓なのかがかなりわかりますから、必ず写真を撮ってほしいのです。弓の上下もこれによってわかりますからご注意ください。この銘があるほうが下ですから、くれぐれも反対に置かないでください。
弓力の目安を知らせる方法
前の所有者からおよその弓力を教えてもらっておくのがベストなのでしょうが、いつもそういうわけにもいかないようです。実際に弓力計で計っている方もいるようですが、その数字が我々から見ておやっと思うような数字であることが多いのです。本来は慣れた方に図ってもらうのが良いのですが、ないものねだりですから、次のような方法があるのです。
弓の握り下の厚みと幅を計る
あくまでも竹弓を前提としていますが、弓の握りの下の部分の厚みが弓力の目安となります。
これは戦前の時代の発想ですが、この握り下の厚さが一分=18㎜を基準にしていたようです。これですと20㎏を超える程度の弓力となります。現代ではそんなに強い弓を引く人はほとんどいないのですが、厚さが15㎜程度で大体15㎏ぐらいと考えられます。あとは適当に想像するしかないのです。
自信がなければこの数字を提供すればよいのです。気を付けなければいけないのは、上のほうの握り革のある部分の寸法とか、その少し下の籐が巻いてある部分の寸法を手時してある例もありますが、それでは全く参考にならないのです。
上の写真の部分の厚みと、幅を測っていただくととても参考になるのです。
弓体の重量を計る
最期の手段としては、弓の重量を計る方法です。これも弓をキッチンばかりで測れば済むことなのに、意外と誰も情報提供してくれていないのです。
これも竹弓を前提とすると、500gで14~15キロぐらい、550gぐらいで16㎏程度、600gで18㎏以上といった目安になります。これもこれまでの自分の感覚ですから、必ずしも正確にその通りになるとは限りません。
出品する場合に気を付けていただきたいこと
オークションには弓の画像も貼られていますが、経験者から見てびっくりするような取り扱いがされていて、このような扱いでは危なくてエントリーできないなと思うことがあります。そんな内容を紹介します。
弓の裏ぞり方向に弦を張ること
弓には弦を張ってない状態で裏ぞりと言って湾曲しています。左の写真では少ないのですが右方向に湾曲していますよね。
何も知らない方から見ると、その裏ぞり方向に弦をかければ弓の格好になるので良いと考えてしまいます。これをやると正直弓を破損することになります。こんなふうに張ってある写真を見ると、怖くてエントリーする気になりません。
これは悪い例ですから、決してこの方向に弦を張らないでください。私も怖くて弦をかけてはいません。
弓に対して写真でいえば左側に弦を張るのが正しい方向になります。実際に弓を扱ったことのない人ではこちらに張るのは怖くてできないでしょう。これは弓の弓力を上げるため、あらかじめ逆方向に沿って作ってあることに原因があります。ぜひこれだけは間違えないでいただけたらと思います。
前にご紹介した銘もこの弓体の左側にあります。それを内竹と言っているのです。
弓の上下を間違えていること
一番上の写真にもご紹介しておきましたが、弓には上下があります。先ほどご紹介したように銘がある位置の先が弓の下側になります。これを本弭(もとはず)といいます。上下を間違えないようにお願いしたいのです。また、弓の握りの位置も下から3分の1近辺にありますから、銘がなくても上下は間違えないはずです。
弦を張っていただければ幸いなのですが
弓に弦を張るのは未経験者では逆にしたりして、大変なことになってしまう恐れがるのですが、出品されるなら、経験者に頼んで最低限弦を張っていただきたいのです。
こうすることによって少なくとも古い弓であっても弦を張ることができることを証明できるからです。また、弓の貼り顔を見せることで、変な変形をしていないことも証明することができます。
古いものでは、弦を張ろうとしたとたんに破損することもあります。いくらノークレーム、ノーリターンと言ってもしこりが残ることは確かでしょうから。
弓道の弓をオークションに出品するときの注意点のまとめ
楽しみで弓道の道具をオークションでよく見かけますが、いくつか見ていて残念な点をまとめてみました。中でも残念なのは基本的な状況がかけている出品です。これではどうやって入札するのだろうと疑問に思いつつ見過ごしています。中には業者さんで大量に集めて整理をすればよいと考えているのかもしれません。
その他、常識的なことなのですが、掃除が行き届いていることとか、剥がれた籐なども補修されているとか、握り皮も替えられていれば気持ちよく入札できると思います。
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