弓道着の洗濯は、汗を残さず清潔に保つことが基本です。帯や袴、足袋、弽も素材に合った方法で手入れすれば、傷みを抑えながら気持ちよく使い続けられます。
弓道の稽古を続けていると、「弓道着は毎回洗ったほうがよいのか」「弓道の帯はどう洗えばよいのか」「弽(かけ)の黒ずみは取れるのか」といった疑問が出てきます。
この記事では、私が普段の稽古で行ってきた手入れをもとに、弓道着、袴、帯、足袋、内弽、弓、矢、弽の手入れを順番に説明します。道具の性能を変える調整ではなく、清潔に、そして大切に使うための日常的なお手入れの話です。
弓道着の洗濯はどうする?汗を残さず清潔に保つのが基本
弓道着の洗濯は、汗をかいたら早めに行い、洗濯表示を確認したうえで素材に合った方法で洗うのが基本です。特に夏場は汗を含みやすいため、何日もそのままにしないほうが気持ちよく着られます。
弓道の衣装の手入れで何より大切なのは清潔さです。射法や的中ばかりに目が向きますが、道場で身につける衣服も弓道の姿の一部だと私は考えています。
きれいな弓道着や足袋を身につけると、それだけで稽古へ向かう気持ちが整います。反対に、汗や汚れを長く残してしまうと、においや黄ばみだけでなく、生地の傷みにつながることもあります。
弓道着はどのくらいの頻度で洗濯する?
私の場合、弓道着は冬であれば1週間ほどを目安にすることもありますが、夏は事情が違います。夏は最大でも2日ほど、汗を多くかいた日は毎回洗うくらいのつもりでいたほうがよいでしょう。
もっとも、これは一律の決まりではありません。
稽古時間、発汗量、季節、道場の気温、弓道着の素材によって違います。汗を多く含んだと感じたなら、「まだ2日だから」と待つ必要はありません。
特に襟元、背中、脇などは汗が残りやすいところです。稽古の後、弓道着をバッグの中に長時間入れたままにせず、帰宅したら早めに取り出してください。
洗うまで時間がある場合でも、まず広げて湿気を逃がすことが大切です。
弓道着を洗濯機で洗うときの注意点
家庭で洗える弓道着であれば、まず衣類についている洗濯表示を確認します。素材によって適した水温や乾燥方法が異なるためです。
一般的には、次のような流れで考えると分かりやすいでしょう。
- 襟や袖に目立つ汚れがないか確認する
- 洗濯表示を確かめる
- 必要に応じて洗濯ネットを使う
- 洗濯後は長時間放置せず、形を整えて干す
- 綿などシワが残りやすい素材はアイロンをかける
綿を多く含む弓道着の場合、洗うとどうしても皺が出やすくなります。皺が目立つ場合には、やはりアイロンをかけたほうが姿が整います。
一方、ポリエステルが入っている弓道着は比較的皺になりにくく、洗濯後にきちんと形を整えて干すだけでも見た目を整えやすいものです。
私は夏用、冬用としてさまざまな素材を試すより、普通の素材の弓道着を使うことが多くありました。夏用の生地は見た目には涼しそうですが、体感については人によってかなり違うでしょう。
大切なのは、「夏用だから涼しい」「この素材なら何日も洗わなくてよい」と決めつけず、実際の汗の量と衣服の状態を見て手入れすることだと思います。
白い弓道着の黄ばみや襟汚れを防ぐには?
弓道着の白さを保つには、ひどく汚れてから落とそうとするより、汚れを残さないことのほうが大切です。
特に襟、袖口、脇などは皮脂や汗が残りやすいため、気になる場合には洗濯前に部分洗いをします。ただし、漂白剤などを使う場合は、生地や洗濯表示によって使用できないものもあります。
強い薬剤をいきなり使うのではなく、まず通常の洗濯と部分洗いから始めるほうが無難です。
弓道では真っ白な道着そのものが的中を左右するわけではありません。それでも、稽古着をきちんと手入れしている姿には、その人の日頃の取り組み方が自然に表れるように私は感じます。
弓道の帯の洗い方は?素材を確認して無理に洗わない
弓道の帯の洗い方は、まず素材と洗濯表示を確認することが第一です。家庭で水洗いできる帯なら表示に従って洗い、正絹など水洗いに不向きなものは自己判断で洗濯機に入れないほうが安全です。
弓道着と比べると、帯は直接汗を大量に吸う部分ではありません。そのため、毎回洗う必要は通常ありませんが、汗や湿気を含んだ状態で長くしまい込まないことが大切です。
稽古を終えたら帯を解き、湿っているようなら少し広げて湿気を逃がしてから収納します。
洗える帯なら形を崩さないように扱う
家庭で洗える素材の帯であれば、洗濯表示の範囲で手入れできます。
ただし帯は、弓道着とは違って締めたときの形や張りも大切です。強く揉んだり、無理に絞ったりすると皺や型崩れにつながります。
洗える帯であっても、やさしく扱い、乾かす際には形を整えることを心がけます。
反対に、正絹など素材の判断が難しい帯、高価な帯、和服と合わせる帯については、家庭での水洗いを安易に勧めることはできません。
分からなければ購入した弓具店や呉服店、クリーニング店へ相談するほうが安心です。
帯は「洗う」より「湿気を残さない」ことが大切
帯の手入れというと、どうしても洗濯方法ばかり考えがちです。しかし日常の手入れでは、汗や湿気を残したまま畳んでしまわないことも同じくらい重要です。
弓道着、帯、袴を一式まとめてバッグに入れたまま翌日まで放置すると、衣類全体に湿気がこもります。
稽古から帰ったら、ほんの数分でもよいので衣服を取り出す。この小さな習慣のほうが、特別な洗剤を使うことより役に立つことがあります。
弓道具の手入れは、何か大がかりなことをするというより、こうした「使ったら戻す前に状態を見る」という習慣の積み重ねなのだと思います。
袴と足袋はどう洗う?折り目と白さを意識して手入れする
袴は折り目を崩さないこと、足袋は足裏の汚れを洗濯前に落とすことが手入れのポイントです。
弓道着だけをきれいにしていても、袴が皺だらけだったり、座射で見える足袋の裏が黒ずんでいたりすると、全体として惜しい印象になります。
袴の手入れは毎回きちんと畳むことから
袴は、弓道着ほど頻繁に洗うものではありません。
私は、一回使うごとにきちんと畳んでおくことをまず大切にしています。折り目を合わせて収納しておけば、必要以上に型崩れすることもありません。
特に注意したいのが、ギリ粉が付着したときです。
袴にギリ粉がついて汚れてしまった場合は、放置せず、固く絞った湿ったタオルなどで汚れを拭き取っておきます。
そのついでに全体をざっと見て、泥、ほこり、床の汚れなどが付いていないか確認するとよいでしょう。
毎回こうして確認しておけば、わざわざ大がかりな洗濯をする回数を減らすことにもつながります。
弓道袴を洗濯するときは折り目を崩さない
私の場合、袴そのものを洗うのは年に2回ほどです。
弓道用として家庭洗濯できる袴であれば、私はきれいに畳んだ状態で洗濯ネットに入れて洗っています。折り目を乱したまま洗うよりも、形を意識して扱ったほうが後の手入れが楽です。
洗濯後は折り目を整え、必要であれば軽くアイロンをかけます。
ただし、これはあくまでも家庭で洗える弓道用の袴の場合です。素材によって手入れ方法は違いますので、必ず表示を確認してください。
一方、和服用の袴は事情が異なります。
和服用の袴を専門のクリーニングに出すと、思った以上に費用がかかる場合があります。そのため私は、日常的には濡らして固く絞ったタオルで汚れを拭き取る程度にしています。
シミがあれば染み抜きを考えますが、高価な袴や特殊な素材では生地を傷める可能性があります。家庭での処置は自己責任になりますので、判断が難しいときは専門店へ相談するのが安全でしょう。
足袋は洗濯機に入れる前のひと手間が大切
私が道場で意外によく気になるのが、足袋の汚れです。
「足の裏だから見えない」と考えている方もいるのかもしれませんが、座射では後ろから足袋の裏がかなりよく見えます。
白い足袋の底が黒ずんでいると、本人が思っている以上に目につきます。
原因の一つは、汚れた足袋をそのまま洗濯機へ入れていることだと思います。床を歩いて付いた汚れは、普通の洗濯だけではきれいに落ちないことがあります。
私は、襟や袖の部分洗いに使う液体洗剤や固形洗剤、なければ石鹸などを足裏の汚れた部分につけ、ブラシで軽くこすってから洗濯機へ入れるようにしています。
洗剤の使用については、足袋の洗濯表示に従ってください。また強くこすり過ぎれば生地を傷めますから、汚れの程度を見ながら加減します。
この下洗いをするだけでも、洗い上がりはかなり違ってきます。
足袋の親指に穴が開いたらどうする?
足袋を長く使っていると、親指が当たる部分が薄くなり、穴が開いてくることがあります。
小さな傷みであれば、私は内側から布を当てて補修することがあります。最近では布用の接着剤などもあり、縫わなくても補修できる場合があります。
ただし、審査や大会など改まった場では、傷みの目立つ足袋を無理に使い続けるより、状態の良いものを用意したほうが安心でしょう。
弓道では足元まで含めて一つの姿になります。足袋は消耗品でもありますから、「穴が開くまで使えればよい」というより、清潔感も含めて状態を見ておきたいところです。
内弽は使ったらこまめに洗う
内弽は手軽に洗えるものですから、私は一回使ったら洗うくらいでよいと考えています。
特に手に汗をかきやすい方は、何枚か用意してこまめに交換すると便利です。
そして、皺が気になる場合にはアイロンをかけると見た目も整います。
内弽を清潔に保つことには、もう一つ意味があります。内弽の汚れや汗が弽の内側へ移るのを少しでも抑えられるからです。
弽そのものは弓道着のように簡単に洗濯できません。だからこそ、直接手に触れる内弽を清潔に保つことが、弽を大切に使うことにもつながります。
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弓道の弽(かけ)の黒ずみの取り方は?強く濡らさず少しずつ落とす
弓道の弽の黒ずみは、表面に付いたギリ粉や汚れであれば、砂消しゴムや古い歯ブラシなどで少しずつ落とす方法があります。弽は革製品なので、水洗いや強い薬剤の使用は避けたほうが安心です。
弽の手入れは、この記事の中でも特に慎重に考えたい部分です。
昔から「ボロ弽」という言葉があるように、長年使い込み、手になじんだ弽を大切にする考え方があります。それ自体には私も大いに共感します。
しかし、「使い込んでいること」と「汚れをそのままにすること」は、少し分けて考えたほうがよいのではないかと思っています。
私は、ギリ粉や手垢によって表面が黒くなり、油を含んだようにテカテカしている弽は、できる範囲で手入れしたほうが気持ちよく使えると考えています。
弽の黒ずみには砂消しゴムや古い歯ブラシを使う
ギリ粉が付着して黒くなっているところは、砂消しタイプの消しゴムや古い歯ブラシを使って、表面を少しずつ掃除する方法があります。
ここで大切なのは、力任せにこすらないことです。
弽の革は使い込むほど手になじむ一方、摩擦を加えれば当然表面も傷みます。「黒いところを一度ですべて白く戻そう」と考えず、表面の余分な汚れを軽く落とす程度に考えるほうがよいでしょう。
また、弽によって革の種類や加工も異なります。高価な弽、状態の悪い弽、扱いに自信がない弽については、自分で大胆な処置をせず、弓具店に相談することをおすすめします。
捻り皮の白い部分が汚れた場合
矢そのものが汚れていると、弽の捻り皮の白い部分が少しずつ薄汚れてくることがあります。
このような場合、私はスウェード用のクリーナーを利用して掃除することがあります。
ただし、クリーナーなら何でもよいという意味ではありません。革製品は素材によって変色や硬化を起こす可能性があるため、使用する場合は製品の注意書きを確認し、目立たない部分で慎重に試すほうがよいでしょう。
指が繰り返し当たって革そのものが白く削れた部分は、汚れではありません。そこまで無理に元に戻そうとする必要はありません。
私が避けたいと感じるのは、自然な摩耗ではなく、ギリ粉や汚れが長期間蓄積して黒く光ってしまっている状態です。
もっとも、このあたりは弽に対する考え方によっても違います。使い込んだ風合いを大切にする方もいますので、ここは私個人の考えとして受け取っていただければと思います。
弽の黒ずみを取るときに避けたいこと
弽は弓道具の中でも、射手の手に直接なじませて使う大切な道具です。
そのため、家庭の衣類と同じ感覚で洗うのは避けたほうがよいでしょう。
特に私は、次のような処置には慎重であるべきだと考えています。
- 弽全体を水につけて洗う
- 強い洗剤で一気に黒ずみを落とそうとする
- 革を傷めるほど強くこする
- 乾燥を急いで強い熱を加える
- 素材を確認せず革用クリーナーを広範囲に使う
弽の黒ずみは、「新品の色へ完全に戻す」ことを目的にするより、余分な汚れをため込まず、革の状態を悪化させないという考え方で手入れするほうがよいと思います。
そして、弽を汚さないためには、前述した内弽を清潔にすること、矢の汚れを拭いておくことも大切です。
黒ずんでから大掃除するより、汚れの原因を少しずつ減らしておく。これは弓道具全般に共通する手入れの考え方です。
弓や弦はどう手入れする?乾拭きだけでなく状態を確認する
弓具も性能面の調整とは別に、普段からそれなりに大切に扱っておきたいものです。
弓は基本的に乾拭きし、汚れが気になるときは素材や仕上げを傷めないよう慎重に拭きます。弦は毛羽立ちを放置せず、状態をこまめに確認します。
弓の汚れはまず乾拭きから
弓の手入れは、乾拭きだけで十分だと考えることが多いでしょう。私も以前はそう思っていました。
ところが、長く使用した弓を固く絞ったタオルで軽く拭いてみると、思いのほか汚れが付いていることがあります。
握りの周辺だけでなく、普段触っていないように見える部分にも、長年のほこりや手垢が少しずつ付着しています。
私は以前、汚れが気になった弓をセスキを付けた雑巾で拭いて汚れを落としたこともあります。
ただし、ここは注意が必要です。弓は竹弓、グラス弓、カーボン弓など材質や表面仕上げが異なり、洗剤や薬剤の影響も一律ではありません。
現在なら私は、まず乾拭き、次に固く絞った布という順番で試し、それでも落ちない汚れについては製造元や弓具店に確認するのが安全だと考えます。
インターネットではクレンザーを使って汚れを落とす方法を見かけることもありますが、私は表面を傷つけるのが怖いため行っていません。
表面を手入れした後、弓の仕様に問題がなければ蜜蝋や適したワックスを考えることもあります。私自身、「半年に1回ぐらいは全体の状態をじっくり見なければ」と反省することがあります。
ただし、これも弓の素材と仕上げによります。自己判断で塗布するより、弓師やメーカー、弓具店の指示がある場合にはそれを優先してください。
関板と弦の毛羽立ちは見逃さない
関板などが使用によって少しずつ削れていくことはあります。
練習時にはテープを貼り、本番のときには外すという方もいます。この部分は道具の状態や考え方によって対応が違います。
私がむしろ普段からよく見るのは、弦の毛羽立ちです。
弦が毛羽立ったままになっていると、見た目にもあまり整っていません。マグスネを使ってこするなど、普段から状態を整えておくとよいでしょう。
また、関板に当たる部分の弦が大きく毛羽立つこともあります。
そのようなときには、中仕掛けに使う仕掛け糸を用い、中仕掛けを作る要領で軽く巻いて落ち着かせる方法もあります。
もっとも、弦は安全に直接かかわる消耗品です。傷みが大きい、切れそうで不安があるという場合には、見た目だけを整えて使い続けず、交換を考えることが大切です。
日常の手入れには「きれいにする」だけでなく、「異常を早く見つける」という意味もあります。
矢の手入れはどうする?シャフト・塗装・羽根を点検する
矢は使用後に汚れを取り、シャフト、矢尻、筈、羽根の状態を確認するのが基本です。私は特に、長期間使った矢の塗装と頬摺羽の摩耗を気にしています。
ジュラ矢とカーボン矢の先端部分の塗装の剥がれ
ジュラ矢もカーボン矢も長く使用していると、先端部分の塗装が剥がれてきます。
ジュラ矢では銀色の地肌が見え、カーボン矢では黒い部分が見えることがあります。
もともとのシャフトの色と近ければそれほど目立ちませんが、外側が別の色に塗装されている矢では、先端だけ色が剥がれると少々気になります。
「これだけ練習した証拠」と考えることもできますが、私はできれば半年に一度くらいは矢全体を点検する機会を持つとよいと思っています。
以前から私が行ってきた方法の一つは、市販のアクリル塗料を使い、先端から射付節にかけて色を整えることです。一度塗ったあと乾かし、その上からクリアのアクリル塗料を重ねると表面を保護しやすくなります。
ただし、矢の材質や表面加工によって塗料との相性は異なります。
また、塗装そのものより大切なのは、シャフトに曲がりや亀裂、異常がないことです。特にカーボン矢などで損傷が疑われる場合には、自分で表面だけ補修して済ませず、使用を中止して弓具店などに確認するほうが安全です。
本当は塗装が大きく剥がれる前に手入れしたほうが楽です。汚れも同じで、ひどくなってから大掃除するより、稽古後に軽く確認する習慣をつけるほうが道具をきれいに保てます。
頬摺羽の削れも定期的に確認する
矢を長く使っていると、頬摺羽が削れて羽幅が小さくなってくることがあります。
私はこれも、半年に一度くらいは状態を見て、必要に応じて筈を120度回し、同じ羽根だけに摩耗が集中しないようにする方法を取ることがあります。
三枚の羽根を均等に使うという考え方です。
ただし、筈の向きや羽根の配置を変える作業は、矢の構造を理解してから行う必要があります。初めての方は自己流で無理に動かさず、指導者や弓具店に確認してください。
ジュラ矢は消耗品だから細かいことは気にしない、という考え方もあるでしょう。
それでも私は、消耗品であっても状態を見ながら丁寧に使うほうが好きです。半年に一度の点検は、見た目を整えるだけでなく、筈の傷みや羽根の剥がれなどに気付く機会にもなります。
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弓道着・袴・帯・弽の手入れを習慣にする意味
ここまで、弓道着の洗濯、弓道の帯の洗い方、袴や足袋、弓、矢、そして弽の黒ずみの取り方まで見てきました。
こうして並べると、手入れにはずいぶん多くの作業があるように感じるかもしれません。
しかし、すべてを毎回する必要はありません。
私が長く弓道を続ける中で大切だと感じるのは、「稽古の後に一度見る」習慣です。
弓道着は汗を含んでいないか。
帯や袴は湿っていないか。
足袋の裏は黒くなっていないか。
弦は毛羽立っていないか。
矢の羽根は傷んでいないか。
弽にはギリ粉が固まっていないか。
このように一つずつ確認しておけば、ほとんどの手入れは大仕事になりません。
清潔にすることと「新品同様にすること」は違う
ここは私が特にお伝えしておきたい点です。
弓道具の手入れでは、何でも新品のように戻せばよいわけではありません。
弽が手になじんで色合いが変わることもあります。弓や矢にも、長年使った痕跡は残ります。袴にも、その人なりの使い方が表れてくるでしょう。
自然な経年変化と、放置した汚れは別のものです。
この二つを分けて考えると、道具の手入れがずっと分かりやすくなります。
私は、使い込んだ弽や弓に年月が感じられること自体は悪いことだと思いません。むしろ、共に稽古してきた時間が残っているようで愛着を感じます。
一方、汗を含んだ弓道着をバッグに入れっぱなしにすることや、ギリ粉が厚く付着した弽を何年もそのままにすることは、「味」とは少し違うでしょう。
手入れとは、道具を新品に戻すための作業ではなく、本来の状態をできるだけ損なわず、次の稽古へ気持ちよくつなぐための作業だと私は考えています。
手入れは道具の異常を見つける時間でもある
もう一つ、見た目以上に大切なことがあります。
衣服や道具を手入れしていると、普段なら気付かない小さな変化に気付くことがあります。
弦の毛羽立ち、筈の傷み、羽根の剥がれ、シャフトの異常、足袋の穴、袴のほつれなどです。
つまり、手入れは単なる美観の問題だけではありません。
弓や矢のように安全にも関係する道具では、掃除することが点検することにもつながるのです。
これは長く続けるほど実感するところです。
弓道では華やかな技術に目が行きます。「どうすれば中るか」「離れをどう直すか」「肩をどう使うか」といった問題には誰でも熱心になります。
しかし、その練習を支えているのは毎日使う道具です。
そこへ少し目を向けることで、稽古全体に対する姿勢も自然に丁寧になっていくのではないかと私は感じています。
弓道着、袴、足袋、帯、弓、矢、弽の普段の手入れまとめ
弓道の普段使いの衣装と道具の手入れについて解説しました。
この記事で扱っているのは、道具の性能を変える改良や専門的な修理ではありません。あくまでも、清潔に保ち、状態を確認し、気持ちよく使い続けるための日常の手入れです。
弓道着は汗を残さず、季節や発汗量に応じて洗濯します。帯は素材を確かめ、家庭洗濯できるものだけを無理なく洗い、普段は湿気を残さないことを意識します。
袴は毎回きちんと畳み、ギリ粉などの汚れを見つけたら早めに拭き取ります。足袋は洗濯機に入れるだけでなく、足裏の黒ずみをあらかじめ部分洗いすると清潔さを保ちやすくなります。
内弽はこまめに洗い、弽へ汗や汚れが移るのを抑えます。
弽の黒ずみについては、ギリ粉や表面の汚れであれば砂消しゴムや古い歯ブラシなどを利用し、革を傷めないよう少しずつ手入れします。無理な水洗いや強い薬剤の使用は避けたほうが安心です。
弓は乾拭きを基本にしながら汚れを確認し、弦の毛羽立ちにも目を向けます。矢は汚れだけでなく、塗装、羽根、筈、シャフトなどの状態を定期的に確認します。
私は、服装や道具を丁寧に扱うことは、単に「きれい好きになる」という話ではないと思っています。
弓道着を畳み、足袋を洗い、弽の汚れを落とし、弓と矢を確認する。その一つひとつが、次の稽古への準備になります。
中身さえよければよい、腕さえ上達すればよい、と考えることもできます。
しかし弓道では、射だけではなく、道具を扱う所作にもその人の姿勢が静かに表れるものです。
きれいに使えば自然と道具に愛着が生まれ、大切に扱うようになります。そして、その小さな積み重ねは、ひいては弓道そのものへの取り組み方にも良い影響を与えるのではないかと私は考えています。
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よくある質問
弓道着は毎回洗濯したほうがよいですか?
汗を多くかいた日は毎回洗うほうが清潔に保ちやすいでしょう。私の場合、冬は1週間ほどでも対応できることがありますが、夏は最大2日ほど、汗を多くかいた日は毎回洗うようにしています。
ただし、日数だけで決める必要はありません。発汗量や稽古時間、素材によって違うため、汗を含んでいると感じたら早めに洗濯してください。
弓道の帯は洗濯機で洗えますか?
帯の素材と洗濯表示によります。
家庭洗濯可能と表示されている帯であれば、表示に従って洗える場合があります。一方、正絹など水洗いに向かない素材や高価な帯は、自己判断で洗濯機に入れないほうが安全です。
普段は稽古後に湿気を飛ばし、汚れをためないことから始めるとよいでしょう。
弓道の弽の黒ずみはどうやって取りますか?
ギリ粉や表面の汚れによる黒ずみであれば、砂消しゴムや古い歯ブラシなどで少しずつ落とす方法があります。
ただし、弽は革製品です。強くこすったり、全体を水洗いしたり、強い洗剤を使ったりすると革を傷める可能性があります。
自分で処置してよいか迷う弽については、弓具店へ相談するのが安心です。
袴はどのくらいの頻度で洗えばよいですか?
私は弓道用の袴を年に2回ほど洗っていますが、これは絶対的な基準ではありません。
普段は一回ごとにきちんと畳み、ギリ粉や汚れが付いた部分を湿ったタオルで拭く程度でも状態を保ちやすくなります。
洗濯する場合は、家庭洗濯できる素材かどうかを必ず確認してください。
足袋の裏の黒ずみが落ちないときはどうしますか?
洗濯機へ入れる前に、足裏の汚れへ部分洗い用の洗剤や石鹸を付け、ブラシで軽くこすってから洗うと落としやすくなります。
強くこすりすぎると生地を傷めるので、足袋の素材や洗濯表示を確認しながら行ってください。
弓道では座射の際に足袋の裏が後ろから見えます。足元まで整えておくと、射場へ入るときの気持ちも自然に引き締まります。
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