今回のテーマは、「的に向かって矢を放せば矢は的中するか?」です。当然後ろから見て、矢が的方向に付いている状態ですから、銃で言えば照準に合っていることになります。それなら百射百中というところだと思うのですが、実際はどうなのでしょうか。
的に向かって矢を放せば矢は的中するか
残念ながらそれだけでは中らないのです。従って答えはノーです。そんな馬鹿なと思うでしょう。
これには前提条件があります。思い切り弓を引き絞った状態からその状態を固定したと考えてください。これなら矢の発射器という状態ですから、当然に中ることが期待できるのです。
でも、これでは絶対という文字付で中らないのです。
的に向かって位置決めした矢が中らない理由
これには弓道の弓の構造が関係してきます。弓道の弓は約3㎝弱の幅があります。そしてこの弓の真ん中に弦がかかっています。また、わかり易くするために、矢もしならないものとして仮定します。
この状態で弓を引き絞って、矢を的の方向に付けるようにセットします。矢の後ろ(「筈」と言いますが。)のところと、矢の前の部分で弓の右側を結んだ線が的の方向にあっているはずです。
ここで、弦を外すと、弦が矢と同じ方向に進んでいけば、本当は良いのですが、弦は弓の中心に向かっていきますので、矢と弓が摺るところの約1.5㎝左側に進んでいきます。
矢の筈が本来の矢の方向より左側に進むと言うことは、弓の右側がテコとなって矢の先端は右側に押し出されてしまいます。
実際に注意深く弓手を一切動かすことなく矢を放つと、矢は狙った的ではなく、前の的の間ぐらいに着点するようになるのです。実際は矢がしなる状態になるので、この説明のように簡単ではありませんが、概念的にはこのようになるのです。
このように狙いだけでは決してあてることができないため、もう一つの隠れたテクニックと矢についての工夫が必要になってきます。
的に向かった矢がそのまま的に飛ぶためのテクニックとは
今回はこれを真っすぐ飛ばすためのテクニックについて解説していきます。
矢に番えた弦がまっすぐ的の方向に進むためには、原理的には進路を邪魔している弓の右側を少し左に移動させればよいと考えるでしょう。これを矢が弓の部分を通過するまでのほんのわずかの間に成し遂げなければなりません。
そこでいろいろな指導者の方から次のような教えをいただいているのです。例えばこんなような指導です。
①弓手の角見で弓の右角を押して弓が回りやすくする。
②離れで弓手の親指を的に突っ込むようにする。
③弓手を真っすぐに的方向に開く。
④左右の体を大きく開く。
などです、いずれも弓全体が右回りに回転する運動となり、弓自体も左方向に数センチ動いていく動作になります。
ただ、残念なのは、この動きが何のためにやっているのかがわからなかったことなのです。
ここらのメカニズムを詳細に教えていただく機会がないままに、親指を突っ込んだり、大きく開いたりすると、時々、狙った方向に飛んでいくということが起こり、なんとなく辞めずに済んだなという印象でした。
弓道はその人の体感に依るものですから、上記のいろいろな教えの中で自分にしっくりするものがあれば良いのですが、私的には、それよりも原理を知っていたほうが良いと思うのです。
私が、最近この件について思うようになったのは、会のときの矢筋に飛ばすという考え方です。この考え方を自分に納得できるようになってから、的中に対する考え方がずいぶん分かるようになったと思っています。
要は、会のときの矢が、矢筈が1.5㎝左側それる軌道をとっていたとして、そのままの方向に飛んでいくにはどうするかという意識を持つことです。それが、人によっては弓手の親指を突っ込んだり、両腕を大きく開いたりすることで表現することになるのです。
弓道初心者が知りたいこと、狙い通りに放った矢は的中するかのまとめ
最近、初心者の方の練習のお手伝いをする機会があり、会のときの狙いを指導したことがあったのですが、その時困ったのは、これでは中らないなと言うことです。
ここで、思いっきり体を開いて、とか、弓手を真っすぐにとか方法を語ることはできるのですが、それがどのような理屈なのかを説明するのは非常に難しいと思いました。
会までは慎重に位置決めをしながら、離すときになったら思い切りというのでは、説明としてはあまりにもおおざっぱではないでしょうか。
弓手の角見だけであればほんの1,2センチ、これが弓手を真っすぐとなれば数センチ、体を開くとなればもう少し動きが出てくるでしょう。ここら辺をどのように説明するのかが難しいところです。
その後、高校生が大勢出てくる大会を見学する機会がありました。よく見ると、ほとんどの高校生が的のかなり後ろを狙っていることに気が付きました。
社会人なら弓を始めてしばらくは大会にも出ないし、勝敗も関係ないのですが、高校生となるとそういうわけにもいかないのでしょう。
やはり当てようとすると、最初の段階では狙いを後ろに付けないと的の方に行かないのかと思いました。そんなところで的付けをしっかりと言ったらたちまち成績は落ちてしまうことでしょう。難しいものです。
ここでは、矢を真っすぐに飛ばすためのテクニックの概念だけを紹介しましたが、実際はこれに矢のしなりの問題が絡んでくるのです。これについては別の記事で解説します。
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