的に狙い通りにはなった矢は的中するか。というテーマで記事を書きました。
この中でそのままでは的中しない理由、的中するためのテクニックの考え方を解説しましたが、これらのテクニックを取得していなくても的中することがあります。それはどのようなものかを解説します。
基本的な考え方のおさらい
矢を的に向かって離すとどうして当たらないかを簡単に説明したのが次の記事になります。
この記事では矢筈が弦に押されるのですが、弓の中心に向かって弦が進むため、矢が弓体の左側を起点として右側を向くことにより、結果的に的の前側に着くような説明をしていきました。
確かに、弓力に対して非常に箆張り強い矢を番えたときにはこんな状況になるだろうと思います。例えば12㎏ぐらいの弓に対して、2117ぐらいのジュラ矢を使えばこんな感じかなと思うのです。
アーチャーズ・パラドックス 実際の矢の挙動は
適正な弓力に適正な矢を番えた場合、例えば14㎏の弓に1913のジュラ矢を使った場合、を考えてみたいと思います。
この時、矢を離すと、矢には慣性と言ってそのままの状態を保とうとする性質があります。このため、矢筈を弦が押していきますので、矢が体側にしなるような動きになるのです。
しばらく進むとその反動で矢が向こう側にしなります。大体この状態が矢が弓体を通過する頃になります。この状態ですから実際は矢は弓体に触れることがないのです。
そして、もう一回体側に矢がしなっていきます。これを何回か繰り返した後に、真っすぐ飛んでいくのです。弓道のスローモーションの動画を見るとこんな映像が紹介されるのではないでしょうか。
このように矢は縦ではなく横方向の振動を繰り返して進んでいきます。ジュラ矢だとこの減衰が小さいのでかなりの距離を振れたまま進みます。
カーボン矢は減衰が大きいので最初の数回で終わり後はまっすぐ飛んでいくのです。カーボン矢の方が飛びが良いと感じるのは軽さもそうですが、こんなところも影響しています。
なんとなく、最初の解説と違っているのですが、解説が複雑になるのでわけたのです。したがって、弓力にあった矢を使うと、うまく弓体に中らずに矢は飛んでいくのです。
ただし、弓体には当たらないものの矢は振動しながら進んでいきます。そして、矢が硬ければ硬いほど、しならないため、的の前に付くようになります。逆に矢が柔らかければだんだん的に向かって飛んでいくようになります。
この現象をアーチェリーの世界ではアーチャーズパラドックと呼んでいます。これはアーチェリーでは実際には弓の左側に矢を番えて、矢は的の左側に向いています。つまり狙ったところをわざと外さないと中らないことをパラドックスと呼んでいるようです。
また、広い意味では矢が振れることも含めているようで、実際に矢が振れることはどう見ても望ましくないのですが、この矢が振れなければ今度は中らないというのも変な現象なのです。
アーチャーズパラドックスの写真、凄い方を載せ忘れたので再度 pic.twitter.com/tIK1aLNCN2
— 彀-ヤゴロ- (@tsukune_sensei) November 22, 2022
的に向けた矢が的に中るための条件
ここまで解説すれば、どうすれば中るのかを推測することもできるかと思います。
そうです。
箆張りが強い矢で前に付いてしまいます。ちょうど良いと言われている箆張りでも、初心者の場合角見を利かすような動作が習得できないので、やはり程度は少ないかもしれないけど、前に付くようになるのです。
従って、そのような状態が続くようであれば、敢えて箆張りの弱い矢で試してみるのも一つの方法なのです。すなわち弓力13kgぐらいで1913のジュラ矢を使っていたら、1813で試してみるのも良いのかもしれないのです。
そして、段々慣れてきたら1913に戻すといった具合です。余った1813は遠的矢に作り直してしまえば無駄にはならないでしょう。
道場に練習用の矢が置いてあるところでは、適当に選んで試してみるのも一つの方法です。
的に狙い通りに放った矢は的中するかのまとめ
弓道で離れの直後の運動はとても複雑で解説しにくいのですが、やっと解説することができました。
大抵の解説はこの記事のおさらいぐらいで止まっていて、そのあとのアーチャーズパラドックスまでは触れていないのがほとんどだったので、どうしても説明しておきたかったのです。
そうしないと、初心者は狙いを変えないと永久に中らないことになってしまいますが、このように箆張りを調整することで、初心者でも的中のチャンスは出てくるのではないかと思います。
そうでないと早い段階から無理に角見を意識して変な離れになってしまう恐れがあるのです。本来は、的に付いた矢をのびのびと離したときに的中が得られる道具で練習したほうが良いのではないでしょうか。
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