弓道で矢番えをする位置について様々なやり方、考え方があります。慣れた方なら自分のやり方をしていればよいのですが、初心者が先輩とか先生から違い方法を言われた時に、どちらが正しいのかわからなくなります。そんな悩みについてもこの問題に絞って解説していきます。
弓道の矢番え位置決めの悩みと解決方法
矢番えで筈を弦にかませる位置については私が今まで聞いた中では次の3つの方法による説明がありました。初心者が良く使っている的中定規についてはその指示通りなのでここでは解説しません。
弦に対して直角に位置決めする方法
一番多い方法はこの方法です。弓を張った状態で籐頭(とがしら:握り皮と矢摺籐の境目)を通り弦に直角になる位置を決めます。簡単に言えば籐頭から弦に対して垂線を下ろすことになります。
その位置に印をして、印をつけたところが矢の箆(シャフトのことです)の下側になります。
ただし、ここに矢筈をつがえると弓手の親指の根本に箆が振れる可能性があるので、普通はここには番えません。
通常はそれよりも箆一本分(通常8㎜ぐらい)上の位置、更にはそれでも矢が振れる場合は箆2本分上に番えることとなります。矢飛びが安定する状況を見極めて自分の位置を決定するのです。
ここらは自分の射の感覚で決めることで、それでも不満があれば更に上でも構いません。
弓の本弭からの距離で決める方法
弓を張った状態で本弭(もとはず:弓の一番下のところです)から籐頭までの距離を測ります。その計った距離と同じ距離を本弭から弦に沿って位置決めします。その位置に矢筈を番えます。
細かいことを言えば、矢の箆の下側の位置になるのです。
通常は巻藁矢の棒矢を使って棒矢の矢の根を元筈の位置の床に置いて、籐頭の位置になるところを指で押さえて、今度は弦の方に傾けてその位置に印をすればよいのです。
概念的には、本弭を頂点として二等辺三角形を作ればよいことになります。
弓に対して直角に位置決めする方法
最後にこれは例が少ないのですが、中にはこれでないとという方もいらっしゃるので説明します。弓を張った状態で籐頭の位置から弓に直角に線を引いて弦に当たったところに印をつけます。
そして、その位置に矢筈を番えるものです。細かいことを言えばこれもその印の位置は矢の下側になります。
この由来はどうやら、五重十文字の弓と矢が直角ということから出てきたと言われています。
モー娘。の涙が止まらない放課後のpvに弓道シーンがあったことも驚きですが、何より矢番え動作とかをしっかりしていたところに驚きました。 pic.twitter.com/GMag1G4qmr
— りょーつ (@oryo_14) May 21, 2015
矢番え位置の違いについて考察
実のところは、結果としてその位置はほとんど違わないことになりますが、考え方なのでここら辺を粗末に扱うと人によっては怒る方もあるのでお気をつけてください。
弦に対して直角に位置決めする方法
私はこの方法で位置決めをしているのでこのほうが自然と思いますが、これと出回っている的中定規との違いを説明します。
的中定規は弓を張った状態で弦に定規のTの字の上をひっかけてTの字の縦棒を籐頭に合わせるものです。するとTの字の根元に筈を番える部分が示されるものです。
的中定規はT型と言っても厳密には直角にはなっておらず、下側が90°より狭くなっているので、籐頭から直角に引いた線よりも上側が示されることになります。
これが先ほど説明した箆1つ分とか2つ分上になるのです。この角度は的中定規の製作者の考えによって決められているので、理論的な数字があるわけではないのです。
このような具合ですから、的中定規で位置が示されていても、その位置で矢が不安定に飛ぶなら、箆1つ分8㎜程度上に付けて引いてみればよいのです。その分若干的の下に着くようにはなりますが。
ということで、弦に対して直角に位置決めをする方法については理解ができたかと思います。
弓の本弭からの距離で決める方法
この方法も良く考えればわかるはずです。本弭から籐頭の距離を2辺とする二等辺三角形ですので、籐頭からもう一辺の方に垂線を下ろせば、そこが弦に直角に定めた位置になります。
そこから若干上の位置を示しているのですから、最終的には弦に直角に定めた位置の少し上を示すことになります。
この位置決めの発想は、会から離れの位置まで一貫して、矢は地面に対して水平で、本弭の位置は弓手の握りと矢筈の中間の真下にあるという考え方から出てきたものと推測されます。
弓に対して直角に位置決めする方法
これも同じようなものです。弓は弦に対して上側の開きの度合い下側の開きより大きいので、弓と弦との間に角度が付きます。
すると大体の弓では上に開いた形になりますので、弓の籐頭から弦に線を引けば、弦から直角に籐頭に線を引いた位置よりも上に付けることになります。
しかし個人的にはこの方法は弓の成りによって位置が変わる恐れがあるため、位置決めが不安定な気がします。
ましてや、成りの変な弓に出会ったときには、例えば籐頭の部分が弦に平行になっていたら、矢筈は低くついてしまうので、離れの時に矢が弓手を擦っていく可能性もあります。
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2019年9月の弓道教室から弓道始めました🥰
毎週家に帰ってからメモとっとったよ坐射で矢番えのあと右手を腰にとった静寂のときの図がコレね
左手がこう、指が曲がってて
まっすぐにしなさいって教えてもろたよホント細かいところまで教えてくれるすごい弓道教室やと思わん? pic.twitter.com/ifVFKwH4aM
— 孤独な胴造り (@6shika_odori) February 1, 2021
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弓道の矢番え位置の決め方のまとめ
矢番えで矢筈の位置の決め方の代表的なものを解説しました。私は最初に紹介した弦に直角に合わせる方法で箆一つか二つ分上に付けて調整しています。
大事なことは、的中定規にしろ、これらの方法にしろ、方法だけを鵜のみにしないで、最後は矢飛びなどを考慮して決めることです。このようなことを一つ一つ決めていくことで考え方が磨かれると思います。
また蛇足ですが、直角を出すときも何も直角定規を買う必要もありません。道場の床の板目を使えば簡単に直角は見つけられますので、ご参考までに。
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