「弓道を始めたばかりで、どう狙えばいいのか分からない…」
「両目で見るって言われたけど、片目の方が的が見えやすい…」
そんな初心者が抱えやすい“狙い方の悩み”に、今回は焦点を当てて解説していきます。
この記事では、狙いをつけるときの目の使い方から、実際に放っても中らない理由、さらには矢飛びの誤差を補うための考え方まで、初心者が知っておくべき基礎知識をわかりやすくまとめました。迷いを抱えずに、的中への第一歩を踏み出しましょう。
弓道の狙い方はなぜ“特殊”なのか?
弓道の狙いの付け方は、考え方によってはとても特殊です。たとえば銃であれば、片目で照準器越しに狙いを定めますが、弓道では両目を開けて的を見ることが求められます。
右目と左目での見え方の差、いわゆる利き目の違いにより、弓や矢の位置が視界に入ってくることで的の見え方が人によって異なります。この差異に戸惑う初心者は多く、筆者自身も20年以上不思議な見え方に悩まされた経験があります。
右目主体?左目主体?利き目によって見える的が違う
実は最初の前提として目には利き目があるということを知ってほしいのです。これの見分け方は簡単です。両目を開いて遠くのほうの物体を指で差ししめます。指をそのままにして、その後、片方ずつ目を閉じます。左目を閉じて右眼だけで見たのとあっていれば、利き目は右になります。大多数の人は右目利きのようです。
原則として、弓道では右目主体で的を見るように指導されます。利き目が左であっても、右目で見る練習を積むのが基本です。これは、右目を通して矢の延長線上に的を捉えるための方法で、いわば狙いの基礎とも言える考え方です。
右目で見ると、弓が視界に入るため的の一部が遮られます。この状態で、的の半分が隠れている見え方を「半月の狙い」と呼びます。一方で、的がすべて見える「満月」、弓に隠れてほとんど見えない「新月」という見え方もあり、人それぞれです。
新月の場合、「弓に隠れて見えないじゃないか。」という方もいるかもしれませんが、両目でじっくり見ていると弓の中にうっすらと的が浮き出てくるはずです。これは左目が的を見ているので、その効果として薄い像でも見えてくるのです。
また、的の大きさは大体小指の先程度の大きさです。弓の幅の中に3個の的が入るくらいの大きさがあります。詳細に的につけていくためにはこの違いを意識することが大事です。何となく弓の中に入っているではアバウトすぎるのです。
筆者はの場合も年「新月」の見え方で的の左端が弓の左端に来るぐらいの位置で的付けを行っています。また、弓によって違ってくることも事実です。別の弓では的が弓のど真ん中にセットしています。
一方、初心者の中には左目主体で的を見てしまう方もいます。これは左右の視力の違いや癖が影響している場合が多く、そのままにしておくと弓との位置関係が掴みにくくなるため、矯正が必要になることもあります。
狙いの形には3タイプある|半月・満月・新月の違いとは
弓と的の重なり具合によって、見え方には大きく分けて以下の3タイプがあります。
- 半月の狙い:的の半分が弓に隠れて見える。最も標準的とされる見え方。
- 満月の狙い:的全体がはっきり見える。左目の影響が強いか、弓の位置が外れている可能性。
- 新月の狙い:的が弓に完全に隠れてしまっているが、両目を開けていることで的がうっすら浮き上がって見える。
どのタイプが正解ということはなく、自分の射に合ったものを見つけて、そこから微調整していくことが大切です。
正しい的の位置をどう確認するか|位置決めのコツ
的の位置は弓のどの部分に重なるのかを事前に明確にしておくことが必要です。矢の延長線上が的の中心に向かっていることが理想です。
左右の確認には、後ろから上級者や先生に立ってもらい、矢の通るラインが的の中心にあるかどうかを見てもらう方法が最も確実です。満月でも半月でも新月でも、必ず位置を覚えておくことが求められます。
高さの基準は、矢の飛び方で最終的に調整します。弓の籐巻きの模様や巻数で高さを決める人もいますが、弓に印をつけるのはルール違反なので注意が必要です。
狙い通りに放っても当たらない理由とは
「狙った通りに離したのに、なぜか当たらない」。これは初心者に限らず多くの射手が直面する問題です。その原因は、日本の弓の構造にあります。
和弓は左右非対称で、矢は弦の右側に番えられています。離れの瞬間、弦が弓の中心方向に戻ろうとする反動で、矢が弓の右側をこすりながら飛び出してしまいます。これによって、理想の狙い位置よりも右側に外れてしまうのです。
この誤差を修正するために必要なのが弓手の押しと角見の働きです。弓を正しい方向に押し出し、矢がまっすぐ飛ぶように導く役割があります。
狙いそのものを変えて補正するのではなく、正しい狙いを維持したまま、矢が理想の軌道を描くように技術を鍛えることが重要なのです。
というのが正論なのですが、初めて1、2年では矢の狙いに合わせて飛んでいく技術が取得できることは稀だと思います。本当は違うということを認識して、ある程度的付けを変更することも方便としてはあるかと思います。いくつかの高校生の的付けを見ているとある程度はやむを得ないかなと思います。いくら修養道とは言っても、当たらない的付けではモチベーションが下がるのではないでしょうか。
弓道の狙い方まとめ|“狙っても当たらない”から学ぶこと
この記事では、弓道における狙い方の基本から、見え方の違い、そして矢が的に中らない理由までを解説しました。
- 両目で狙うことにより、的の見え方が人によって異なる
- 右目中心で的を見ることで安定した狙いをつけやすい
- 見え方には半月・満月・新月の3種類がある
- 的の位置は後ろから確認してもらい、左右・高さを正確に決める
- 狙い通りに放っても中らないのは、弓の構造による右ずれが原因
- その誤差を修正するのが弓手と角見の技術
弓道では、一つ一つの要素を丁寧に積み重ねていくことで、自分に合った狙い方を身につけることができます。特に狙いについては、視覚・体感・技術のバランスが問われるため、時間をかけて取り組む価値のある部分です。
焦らず、じっくりと自分の狙いを育てていきましょう。
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