『ツルネ』第2期第3話レビュー:弓道の斜面と正面引き方の美学と技術

弓道

アニメのツルネを通して、弓道のいろいろなトピックを解説していきます。今回は弓道の正面、斜面などの引き方について簡単に解説します。

主人公湊の風舞高校は、中学校時代の先輩二階堂永亮が率いる辻峰高校と対戦します。ともに、県大会を制したので全国大会への出場権は得ているのですが、辻峰高校の斜面打ち起こしの引き方に翻弄されたまま試合を終えてしまいます。

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ツルネ アニメ第2期第3話から弓道の弓の引き方の始まり

弓道には大きくいって礼射系と武射系の二種類に分かれます。前者は鎌倉時代から続く小笠原流から始まったものです。主に騎射と言って馬の上から引くことを想定しています。その他、儀礼の場での射法も行っていました。

一方武射系は室町時代の名人日置弾正正次から始まった系統です。これはより実践的な射法として開始されたものです。主に戦国時代を通じて江戸時代まで主流となった射法です。

これら二系統にそれぞれ正面で打ち起こすのか、斜面で打ち起こすかのバリエーションが出てくるのです。

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ツルネ アニメ第2期第3話から現代弓道ので使われている弓の引き方

このように二系統あってそれぞれ正面と斜面の打ち起こしの方法があるとすれば、全部で4種類になるはずですが、日本の伝統のせいか、その中でも様々な流派に分かれてきました。しかし、現在では見かけるのは大きく4つぐらいです。それらを簡単に説明します。

主流となっているいわゆる全日本弓道連盟流

礼射系正面打ち起こしです。風舞高校の皆さんが行っているやり方ですし、ほとんどの人がこの引き方になっているでしょう。多分占有率から言えば8割ぐらいになるのではないでしょうか。敢えて流派の名前はないのですが、仮に全日本弓道連盟流としておきましょう。

これは、足踏みの仕方も礼射系ですし、正面打ち起こしなのです。それでは小笠原流じゃないかと言うことになるのですが、少し違うのです。

この方式は射を行う手順は小笠原流なのですが、射技の方はもっぱら後で説明する本多流から取り入れているのです。主に戦後に出来上がった折衷案と考えられる引き方になります。

本多流

武射系の正面打ち起こしです。明治時代に本多利實氏が考案した引き方です。本多氏は元は尾張藩の家系の生まれで、日置流尾州竹林派で射を行っていましたが、明治になってこれを体育的見地から正面打ち起こしに改めて射法を提唱しました。

これが、明治期に大いに流行り、しかも、弟子たちにも恵まれ隆盛を誇ったのです。この世界で弓聖と言われている阿波研造範士もこの系統になるのです。

この引き方の理念がいわゆる現代の大勢の引き方に取り入れられているため、違いが判らないのですが、武射系ですから足踏みの形などが違ってきています。首都圏を中心に活躍しております。

日置流印西派

武射系斜面打ち起こしです。日置流は先にご説明したとおり、室町時代に起こりましたが、その中でいろいろな派に分かれてきております。ツルネに出てくる辻峰高校はこの引き方でしょう。

有名な先生では浦上栄範士がいらっしゃいます。首都圏を中心に活躍している流派です。海外でもドイツにかなりの数の方がこの引き方で練習しています。

斜面打ち起こしの方と一緒に立を組むと確かにタイミングは合いにくいでしょう。何といっても正面に比べて、打ち起こしから大三に移る時間がありませんから、正面打ち起こしにとってはずいぶん早い感じになってしまいます。斜面の人が前にいると「もう離しちゃったのか。」という感覚に襲われることもあるでしょう。

日置流尾州竹林派

武射系斜面打ち起こしです。日置流印西派と変わらないように思うのでしょうが、打ち起こしの手前の形が少し違います。

印西派のほうは取懸けを行った後、弓手を正面打ち起こしの大三の形のように入れ込みますが、竹林派の方はこの動きは少ないところが違いとなります。愛知県を中心に活躍されている方がいます。

この流派は江戸時代の通し矢で有名を馳せた流派で、通し矢8千本の尾張藩の星野勘左衛門が有名です。

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ツルネ アニメ第2期第3話から弓道の正面、斜面の引き方のまとめ

現代で見かける弓道の引き方の種類をご紹介しました。試合などで見かける機会があれば、この程度のことを知っていれば参考になると思います。

千年以上も続く弓の歴史ですが、小笠原流は続いていたのですが、江戸時代までは大部分が日置流の斜面打ち起こしだったのです。

それが、明治時代になって、本多流が登場し、やっと正面打ち起こしが広く認知されるのはつい最近のことなのです。そんな歴史を見ていくと、今の弓道の引き方もどのように変わっていくのか、それとも変わらないのか、想像していくのも楽しいものです。

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