先日オークションで格安の古い竹弓を落札しました。どうやら柴田勘十郎のようです。握りのところの台紙の新聞をみたら半世紀前のものでしたので、古さは想像できるような気がします。
全体にくすんでいるところは仕方がないでしょう。とりあえず全体を掃除して、弦を張ろうとしたら、パーンという音と同時に、外竹、芯、内竹、下関板が剥がれてしまいました。
ある程度、こうなることは想定していましたが、いざとなるとショックです。これからが本番です。
そのまま修理に出せばよいのですが、せっかくの機会です。自分の力で修理できるかどうかを試してみました。
古い竹弓が剥がれたときの状態は
弓の上側約半分はまだくっついていますが、下側の約半分が3つに分解しています。上の部分をほうきの柄と考えて下側が3つに分かれているといえば理解しやすいかと思います。
古い竹弓修理の方針はどのようにするか
バラバラになった部材を木工ボンドを水で薄めて、隙間なく接着することとします。そのため、接着した後は、力任せにひもでぐいぐい結わえて圧着させます。
この様子は、弓を制作している場面の動画を見たことがある方は想像できると思います。最初に麻ひもでぐるぐる巻いて行って、そのあとくさびを200本ぐらい打ち込んでいます。
今回の場合はひもで圧着させるだけです。くさびを打つ目的が今一つ不明確ですし、その技量もありません。弓の成りはほぼできていると考えてお任せしました。
後で気が付いた方法は、単にひもでぐいぐい結わえただけでは、裏反りが十分でなくなる可能性があるので、弓の真ん中だけ腰掛に載せて、両側に重りをのせる方法を発見しました。
気が付いた段階でやってみました。それなりの裏反りが出せることがわかりました。
これも後で気が付いたのですが、結束バンドで締めていくという方法もあったようです。
古い竹弓の修理を実際にやってみると
木工ボンドを水で少し薄めて、それでもそんなに薄めないほうが良いかと思います。隙間にきれいに入っていく程度ですから、せいぜい1.2倍位にする程度です。
ひもで締めあげていく作業はとても力が要って大変でした。それでも出来上がるとそれなりの様になっていて、この状態で念のため1週間ほど置いておくことにしました。
古い竹弓の修理 とりあえず一週間後
一週間後ひもを外して、しっかりくっついていることを確認します。そして、恐る恐る弦を張ります。
張れた。
でも、ちょっと変な成りになっていました。全体が完全に船底になっており、下成りの部分がかなり膨らんで、上成が立っている状態になります。
一か八か、上成の立っている部分を押して、下成りの膨らんだ部分を逆に引っ込めるようにして、形を整えます。
意外と素直に形は変わるものです。
後は、船底です。柴田勘十郎はうわさでは船底気味と言われているので、これでも良いのですが、もう少し胴を入れることとしました。
弦を張ったまま、弓巻を丸めた状態で握りの下に敷きます。上成と下成りの上に両足を載せて、弦を両手でつかんで、背筋運動のように10回ほど上に引きます。
こうすると少し胴が入ってきます。これは私の先生に教えてもらった方法です。
こうして、何とか形は整いました。
古い竹弓の修理 本当に使えるかどうかの点検
とりあえず、肩入れを何回かしてみます。大丈夫。
1週間後、素引きに移ります。大丈夫。
いよいよ、次の段階です。巻藁で、肩入れ程度まで引いて巻藁矢を放します。
一回、二回、三回、四回、パーン
今度は、今回くっつけた部分とは違う部分が全体に剥がれてしまいました。やはり、接着剤が劣化しているので、本当は全面的に張り替える必要があったようです。
修理屋さんならそんなことは分かっていらっしゃるから、多分、全部剥がして、三つの部分に完全に分けてから接着するのでしょう。
でも、こちらは初めてですから、それにくっついているものを剥がすのは意外と大変なんで。
今回も、こちらでくっつけた部分は無事についていたので、素人工作でもそれなりにしっかりしていることがわかります。
古い竹弓の修理 二週間後の作業
ほぼ同じ作業なので改めて解説する必要もないでしょう。更に二週間の期間、作業時間が加わったことになります。
古い竹弓の修理 一か月後の作業
最初のころと同じように、点検をしていたら、上の関板が外れてしまいました。もう解説不要ですよね。同じ作業で更に一週間余計にかかりました。
古い竹弓の修理 五週間後の作業
これで新しい接着剤でつけるところは総てつけたことになります。形もいよいよ整いました。
素引きをしてみます。最初は肩入れで何日間か、次には普通のフルの素引きです。これでも壊れません。どうやらうまくいったようです。
でも安心してはいけません。最初は巻藁の段階で壊れましたので。
そして待つこと一週間。いよいよ巻藁です。肩入れ程度から放して様子を見てみます。そしてこれを何日かした後、ついに巻藁行射ができるようになりました。やっと完成です。
少々くすんでいますし、接着剤の跡が残っていますので、全体にサンドペーパーをかけます。その後ニスを塗ってお化粧してみます。新品とは言わないまでも、とてもきれいに仕上がりました。
これで安心して籐を巻くことができます。弓摺籐、上の飾り籐、下の飾り籐を作って完成です。ご苦労様でした。これにて、古い弓に生命を吹きこむことができました。
弓道の古い竹弓が剥がれたときの修理方法は?のまとめ
1か月半で無事に修理が完成しました。
出来上がった弓の状態は、とても強い弓になっています。握り下の厚さを図っても17㎜ぐらいなので、18㎏そこそこかなと思いました。
完成してみれば、20㎏ぐらいある感じです。しばらく張っていれば少し下がるかもしれません。
それと入木が少しきつく入っています。ひっくり返ると嫌なので矯正器をつけていますが、引いていくうちに治るかもしれません。
ということで、素人でも地道にやればなんとかここまではできるということがわかりました。それでもいざかかるまでは本当にできるのかと心配し通しでした。また剥がれるかもしれませんが。
本来は弓師に出すところですが、この程度まではできるかなという感じです。それでも型直しとなるとお手上げですが。
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