弓道において、「離れ」はその射技全体の結果を左右する重要な要素です。しかし、多くの弓道家がこの技術に悩みを抱えています。本記事では、離れの成功に向けた具体的な改善方法と、効率的な練習法について詳しく解説します。初心者から上級者まで、すべての弓道家が離れを向上させるためのヒントを提供します。
この記事を読むとわかること
■内容■
- 弓道における「離れ」の失敗原因とその改善方法。
- 「離れ」の技術向上のための効果的な練習方法。
- 離れの瞬間における物理的なメカニズムの理解。
離れがうまくいかない原因とその改善方法
弓道において、「離れ」は射技全体の結果に直結する重要な動作です。
しかし、多くの弓道家がこの動作に課題を抱えており、結果として的中率が低下することも少なくありません。
ここでは、離れがうまくいかない原因とその具体的な改善方法について考察します。
原因1: 会の意識が強すぎること
「離れ」がうまくいかない原因の一つとして、会の意識が強すぎることが挙げられます。
会は射法八節の中で重要な段階ですが、ここで動作が止まってしまい、力の方向が変わってしまうことが多いです。
この問題を解決するには、会を単なる「静止状態」としてではなく、引き続ける動作の一環として捉え、離れへと自然に繋げることが重要です。
原因2: 早気に陥るリスク
もう一つの原因として、早気に陥るリスクがあります。
早気とは、引き分けから会に至るまでの動作が速すぎて、結果として力の方向や大きさが不均一になってしまう状態を指します。
これを防ぐためには、会の段階で動作を意識しすぎないようにし、自然な流れの中で離れを行うことが求められます。
正しい離れのやり方とコツ
「離れ」は弓道の技術の中で、特に重要でありながら難しいとされています。
この技術を正確に行うためには、いくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。
ここでは、正しい離れのやり方と、そのコツについて詳しく説明します。
体の十文字を維持する
離れを正しく行うためには、体の十文字を崩さないことが基本です。
足踏み、胴造りで整えた十文字が崩れてしまうと、上半身と下半身の動きがバラバラになり、安定した離れができなくなります。
特に、離れの瞬間に肩の位置が上がらないように注意し、詰まりのない動作を心がけることが大切です。
肩の位置と引分けの重要性
離れの成功には、肩の位置と引分けの大きさも大きく影響します。
肩が上がってしまうと、弓を引き分ける際に十分な伸びが得られず、結果として離れが弱くなってしまいます。
また、引分けが小さいと、会での詰め合いが不十分になり、無理に力を加えた離れを行うことになりがちです。
初心者の考え方
引き分け、引き分け、会、何秒か保って、離れ
この引き方になれば、完全に引き分けのときの力の方向と、離れが全く別物になるので、相当問題が生じてしまいます。
中には、離れのときが、引き分けよりも強い離れが生じてしまいます。こういう方が意外と多くいるのです。
10㎏程度の弓力なのに、思いっきりの大離れというなんだか変な感じがする射も出てきてしまいます。これは、実は初心者の人には、離れの動作を教えていないことが原因でもあるのです。
最初にゴム弓を持たせて、1,2,3、と数えて思いっきり放せという指導をすることになります。最初の頃は離せないのでこれでもよいのですが、的前に立つようになればこれでは引きちぎりになってしまいます。離れには後で示すような離れのテクニックがあるのです。
弓道での「会」からの新しい考え方
私はこのように考えたほうが良いと考えます。
引き分け、引き分け、伸び合い、伸び合い、伸び合い、離れ
これにより、会を意識することで、動作と力の方向が変わってしまうことを避けることができると考えます。
問題点や疑問に対する具体的なアドバイス
この考え方に変えた場合に次のような疑問を持つことになると思います。
早気になってしまうのではないか。何秒持てばよいのか。
これにも問題はあります。使い方によれば、早気に変わってしまいます。一つの伸び合いに2秒程度の認識でいけばよい射になると思います。
そして最後の離れは引き分けの力を変えずにできる(離れ)であるべきで、そのままの方向、力の流れを保ったまま離れることを理想とします。
会で何秒もてばよいのか
この考え方は、会という状態を意識しない方法です。従って、「会」1秒、2秒、3秒・・・と考えることを否定するのです。どうしても会という時点を意識することで動きが止まってしまうことの弊害が大きいのです。
それでもというのであれば、通常の「会」を一つの通過点と考えその先にも引き分けがあるとお考えいただく方法もあります。私はそんな感じだと思っています。
そもそも何秒持ったかを競うようになっておかしくなったのです。本来であれば4秒もあれば十分で、6秒までぐらいが限度と言われています。それを8秒だの10秒だのと誇るようになってからおかしくなったのです。
詰め合いの確認はとれるのか
詰め合いが確認できないのではと思われるかもしれませんが、本当は会に入ってから詰め合いを確認してしまうと、その動作で、引いていく力が戻ってしまいます。
本来は、詰め合いは引き分けの時点でも出来ている必要があるでしょう。
会の構成条件ではあるものの、その時点で確認して詰め合うというのでは、射形が変わってしまう恐れがあります。
詰め合いは其れまでに出来上がっているように練習すべきです。
伸び合いができないのではないか
伸び合いについては問題ないでしょう。この中で伸び合い、伸び合い、伸び合いの動作をどのくらい細かくしていけるかが問題でしょう。
引き分けと同じ速度で伸び合ったら台無しになります。
つまり引き分けの最終段階から引き合う速度がだんだん少なくなって、一秒1㎜、2㎜ぐらいの単位で伸びていくことの繊細さが必要です。
離れを上達させるための練習方法
離れの技術を向上させるためには、正しい方法で練習を重ねることが不可欠です。
ここでは、個人で行う練習方法と、ペアで行う練習方法の両方について解説します。
これらの練習を取り入れることで、確実に離れの技術を向上させることができます。
個人で行う練習: 残身の確認
個人で行う練習としては、残身を意識し確認する方法が有効です。
残身は射技の集大成であり、その姿勢が正しければ、離れが成功した証となります。
右手の位置が口割りより下がっていないか、右ひじが引分け位置よりも落ちていないかなど、細かい点を確認しながら練習を重ねることが重要です。
ペアで行う練習: ゴムを使用した補助訓練
ペアでの練習方法として、ゴムを使用した補助訓練があります。
この練習では、ゴムの抵抗を利用して、離れの感覚を体に覚えさせることができます。
引く人は右手の二の腕あたりにゴムをかけ、補助する人が軽くゴムを引っ張ることで、正しい離れの軌道とキレを実感することができます。
ただし、この練習を頻繁に行いすぎると、ゴムに頼ってしまう恐れがあるため、適度に行うようにしましょう。
弓道での離れを向上させるための技術:離れの成功に向けた意識と無意識の調和
最期に、これで本当に離れるのかが、大問題になるでしょう。これは意識の問題というよりは、馬手の手の内がしっかりできていて、馬手の手首、指の力が抜けて肘で引けているかにかかっています。
意識も大切ですが、技術の問題も入ってきます。
細かく説明すれば、馬手の親指に掛かった弦の力が親指を押して三つがけなら中指を押していきます。
そして親指の伸びによって、馬手に外側に回転する力が働きます。
これにより弦道の深いところから浅いところに引っ掛かりが移って、離れることになるのです。ここを意識して感じ取れるかどうかです。感じ取れなければ、それを想像して外側に回転させる動作をしてみることも必要です。指導者によっては指パッチンをさせている方もあります。
指導書の中には、馬手を張って、肘で引いて、離れの際に馬手を外側に回転させることを推奨しているものもあります。
結論:離れを克服し、弓道の技術を向上させよう
弓道において離れはとても難しい問題です。ほんの一瞬の動作ですし、この動作に意識、無意識の問題が混在しています。
更には、意識、無意識に織り込む技術の問題も絡んできます。そして、結果は絶対です。
実際に審査会場で見ていれば、この離れについて驚くほどの問題点が見えてきます。
すべては、数年間も練習すれば身に付くようなシンプルな動作ですが、いざとなるとできていないのは皆さんもご承知の通りです。私もその一人ですが。
この原因についていろいろ考えていくとどうしても「会」という一点に問題があると考えました。
この「会」という静止の状態があると考えること、また、そのように教えることからすべてが狂ってくるのではないかという気がしております。
皆様の練習に少しでも考え方の変化を取り入れることができれば幸いです。
この記事のまとめ
◆内容◆
- 弓道の「離れ」の失敗原因とその改善方法を解説。
- 正しい「離れ」の技術を習得するための練習法を紹介。
- 「離れ」の瞬間を物理的に考察し、その重要性を強調。
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