皆さん、こんにちは!弓道の世界を描いた人気アニメ「ツルネ ―つながりの一射―」をご覧になっていますか?今回は、その中でも特に深いテーマが描かれた第9話「裏反る意志」にスポットを当てて、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
第9話では、風舞高校と辻峰高校の合同合宿が描かれましたね。その中で、辻峰高校を引っ張る二階堂永亮(にかいどう えいすけ)の、弓道に対する複雑な思いや過去が明らかになりました。彼の葛藤は、弓道を学ぶ私たちにとっても非常に示唆に富むものでした。
弓道は、ただ的に矢を当てるだけでなく、「射法八節(しゃほうはっせつ)」と呼ばれる一連の動作や、「心技体(しんぎたい)」のバランスが非常に重要視される武道です。特に、「指導者との関係」は、弓道を上達させる上で切っても切り離せない要素となります。この記事では、二階堂永亮のストーリーを通して、弓道における指導者との関係の奥深さや、現代の弓道を取り巻く環境について、初めて弓道に触れる方にも分かりやすく、丁寧にお話ししていきますね。
ツルネ第9話「裏反る意志」のキーパーソン:二階堂永亮の葛藤
「ツルネ ―つながりの一射―」第9話では、全国大会に向けて夏合宿を行うことになった風舞高校弓道部が、偶然にも辻峰高校と合同練習を行うことになります。この合宿を通して、辻峰高校のエースである二階堂永亮の内面に秘められた過去が語られました。
二階堂永亮の生い立ちと弓道への思い
二階堂永亮は、風舞高校の鳴宮湊(なるみや みなと)や藤原愁(ふじわら しゅう)と同じ、桐先中学の弓道部に所属していました。彼は鳴宮たちの一年上の先輩にあたります。彼が弓道を始めたのは、桐先中学に入るよりも前、伯父さんから教わっていたそうです。
ここで重要なのは、伯父さんから教わった射法が「斜面打起し(しゃめんうちおこし)」だったということです。弓道には大きく分けて「正面打起し」と「斜面打起し」の二つの射法(弓を構えるまでの動作)があり、流派によって採用している射法が異なります。
しかし、ある時、二階堂の伯父さんは射に行き詰まり、指導者を必要とする状況に陥ってしまいます。伯父さんは、近くに適切な指導者が見つからないため、西園寺(さいおんじ)先生という高名な弓道家を頼ろうとします。しかし、西園寺先生はご高齢のため、指導を断ってしまいます。
この出来事が、二階堂永亮の心に深い影を落とします。彼は、西園寺先生が伯父さんの指導を断ったにもかかわらず、鳴宮湊と藤原愁には弓道を教えていることに、「逆恨み」に近い感情を抱くようになります。そして、いつか鳴宮と藤原を打ち負かしてやろうと、心に誓うのです。
dアニメストア #ツルネ つながりの一射。第9話。
風舞と辻峰の合同合宿は偶然の産物。交友の輪に入れない二階堂永亮。鳴宮湊と藤原愁への彼の敵意には流派存続への思いも混じる。確かに、芸道や武道は多彩な流派が共存する虹色の世界であるべきだが、むしろ西園寺先生の真意もそこにありはしないか。 pic.twitter.com/AGk74lLjlx— 翔也 (@gracilistepuer) March 4, 2023
弓道における指導者との関係:なぜ難しいの?
二階堂永亮のエピソードから見えてくるのは、弓道という武道において指導者との関係が非常に複雑で、ときに困難を伴うという側面です。これは弓道に限らず、他の武道やスポーツ、あるいは学問の世界でも共通する課題かもしれません。では、具体的にどのような問題点があるのでしょうか?
問題点①:多様な「正しい射」と統一見解の難しさ
弓道には、流派によって異なる「射法(弓の引き方や作法)」が存在します。江戸時代まで、各流派はそれぞれの方法を守り、独自の発展を遂げてきました。そのため、日本全体で統一された「正しい引き方」や「作法」を確立するのは、非常に難しいことでした。
昭和に入ってから、ようやく統一的な見解が試みられ、「弓道教本」が作られました。しかし、この教本も射の概略を示すものであり、細部まで詳しく語られているわけではありません。一説によると、教本は「指導の手引き」として作られたものであり、全てを網羅した「統一見解」ではない、とも言われています。そのため、指導者によって解釈や指導方法が異なることがしばしばあります。
問題点②:指導者不足と経験値の偏り
学校の部活動などで弓道をする場合、指導者が決められているため、一見問題がないように思えます。しかし、実際に弓道の実技に習熟した指導者が配置されていないケースも少なくありません。その結果、生徒たちは指導者が不在のまま練習せざるを得ない、という状況も生まれてしまいます。
また、一般の弓道場でも、経験豊富な指導者が常にいるとは限りません。特に初心者の方の場合、様々な人からアドバイスを受けてしまい、「どの意見を聞けば良いのか分からなくなる」といった混乱が生じがちです。さらに、アドバイスをする側も、自身の経験に基づいて意見を伝えるため、それが必ずしも相手に合った指導であるとは限りません。その人の全体的な課題を見ているわけではないので、最後まで責任を持って指導することが難しい場合もあるのです。
問題点③:現代における師弟関係の変化
戦前までの武道の世界では、道場に入門すると、その指導方法に全面的に服従することが求められていました。指導者もまた、その門人の修練に全責任を負うという、非常に厳格な師弟関係が築かれていたのです。
例えば、転居などで道場を変わる場合でも、以前の指導者からの紹介状を持って、新しい道場に紹介されるという形式が一般的でした。他の道場の門人には安易に指導しない、という不文律もあったほどです。これは、その門人がどのような指導を受け、どのレベルにいるのかを把握しないまま、無責任な指導をするべきではない、という考えから来ていたのでしょう。
しかし、現代では人の流動性が高まり、個人の自由や権利が尊重されるようになりました。そのため、かつてのような厳しい師弟関係は薄れてきています。その一方で、誰でも気軽にアドバイスができるようになったことで、必ずしもその人に合った指導ではない意見が飛び交うことも増えました。この変化は、弓道を学ぶ上で新たな課題を生み出しているとも言えるでしょう。
現代における指導者との賢い関係の築き方
では、現代において、私たちは弓道の指導者とどのように向き合えば良いのでしょうか?様々なアドバイスが飛び交う中で、自分に合った指導を見つけるためのヒントを考えてみましょう。
アドバイスを「一時的に受け止める」姿勢
最も有効な方法の一つは、その場でアドバイスを聞き、一度は実践してみるものの、最終的に自分に取り入れるかどうかは後で判断するという姿勢を持つことです。弓道は非常に身体感覚に依存する武道であり、指導者の身体感覚がそのまま生徒に合うとは限りません。
「このアドバイスは自分に合うな」「これはちょっと違うかもしれない」といった、自分の感覚とのすり合わせが非常に重要になります。ある程度の経験を積み、自分の射の「得失(良い点と悪い点)」が分かるようになる参段以上の方であれば、このような応用が利きやすいかもしれません。
初心者は「信頼できる権威」を見つけることが重要
しかし、弓道を始めたばかりの初心者の方にとっては、このような判断は非常に難しいでしょう。様々なアドバイスに振り回されてしまい、かえって混乱してしまう可能性もあります。そんな時は、少しでも権威があり、信頼できる指導者の意見を優先的に聞くことが大切です。
例えば、長く弓道を教えている先生、段位の高い先生、あるいは道場で中心となって指導している方など、信頼に足る人物を見つけることを意識してみましょう。そして、その方の指導方針に沿って、まずは基本をしっかりと身につけることが上達への近道となります。
中には、指導者に合わせて器用に引き方を変えられる人もいるようですが、それは稀なケースです。まずは一貫性のある指導を受けることで、自分の射の土台を築きましょう。
弓道における「縁」の重要性
弓道の指導者を探すのは、他の競技と同じく、いやそれ以上に大変なことです。なぜなら、弓道は非常に奥深く、そして個人の身体感覚や精神性に深く関わるからです。「自分に合う、合わない」がはっきりと分かれることも少なくありません。
そんな中で、本当に良い指導者に巡り合えることは、まるで「縁」のようなものです。尊敬でき、信頼でき、そして自分の成長を心から願ってくれる指導者との出会いは、弓道人生においてかけがえのない財産となるでしょう。
まとめ:「ツルネ」が教えてくれる弓道指導の奥深さ
アニメ「ツルネ ―つながりの一射―」第9話で描かれた二階堂永亮の苦悩は、弓道における指導者との関係の複雑さと、それに伴う心の葛藤を私たちに教えてくれました。
弓道は、流派の多様性、指導者不足、そして現代における師弟関係の変化といった様々な課題を抱えています。しかし、それらを乗り越え、自分に合った指導者と出会うことができれば、弓道の道はより深く、より豊かなものとなるでしょう。
もしあなたが今、指導者との関係で悩んでいたり、これから弓道を始めてみたいと思っているなら、この記事が少しでもお役に立てたなら嬉しいです。ぜひ、あなたにとって最高の「一射」を放てるよう、良い指導者との出会いを大切にしてくださいね。
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